【道路整備の不備】「穴ぼこ」「段差」などが原因で交通事故が起きた場合はどうする?国家や公共団体への請求を解説

【道路整備の不備】「穴ぼこ」「段差」などが原因で交通事故が起きた場合はどうする?国家や公共団体への請求を解説

この記事では、道路整備の不備によって起こる事故に関して解説しています。
道路整備の不備による事故の種類と事例、国家賠償法2条、事故発生時の対応方法などが内容です。
自動車または自転車を運転する際、安全運転を心がけていても、道路の穴ぼこ、マンホール、段差など、道路整備の不行き届きが原因で、事故を起こしてしまうかもしれません。
このように、事故を起こしてしまった際、どのような対応をとればいいのか、また知っておくと得する知識を紹介しています。ぜひ、把握しておいてください!

道路整備の不備に関する事故とは?

道路整備の不備に関する事故とは、舗装の陥没や剥離、マンホールの突出などにより、車が損傷したり、二輪車や自転車が転倒したりして起きる事故のことです。段差などで歩行者が転倒する事故も含まれます。

道路整備の不備に関する事故を、種類別に見ていきましょう。

舗装の劣化・剥離で生じた穴ぼこでの事故

雪解けの時期に、舗装で生じた穴ぼこによる事故、穴ぼこが多い悪路での事故が多いです。応急補修が壊れた場所、わだち掘れが大きい場所にて、車両の下部を損傷する事故もあります。

穴ぼこに関連した事故の裁判例の約3割は、
通常程度の凸凹である、通常の技術で通行できる、事故と穴ぼこに因果関係がないなどの理由で、管理瑕疵(かし)がないとされています。管理瑕疵があるとされた場合には、過失相殺が行われています。

車両に生じた段差による事故

マンホールの突出による段差、横断構造物部の隆起、舗装と側溝・集水桝との段差、舗装部と非舗装部の段差などでの事故の約6割では、段差と事故に因果関係がないという理由で、管理瑕疵がないとされています。
管理瑕疵があるとされた案件では、全案件で過失相殺がされています。

道路工事関連の事故

工事中の段差の擦り付け部や仮復旧部、仮道部での事故、工事後の陥没による事故の事故の約3割では管理瑕疵がないとされています。
自動車の通行に支障がない、通常程度の凸凹であるなどが理由とされています。
管理瑕疵があるとされた案件では、
工事中の仮復旧部や仮道部での標識や照明、保安措置などの注意喚起が不充分であったことなどが理由とされています。
これらの案件では、4〜6割程度の過失相殺をされている案件が多いです。

融雪穴による事故

圧雪の剥離によって生じた段差での事故です。2件中2件が、無責とされています。これは、回避可能性の観点から無責とされています。

歩行者関連の事故

歩行者が歩道の段差や穴ぼこで転び、怪我をしたなどの裁判例があります、14件あるうちの約8割において、管理瑕疵がないとされています。
注意していれば気づくような、通常程度のくぼみであるなどが理由です。

国や公共団体に請求できる可能性

通常の交通事故とは違い、道路整備の不備によって起こった事故では、「国家賠償法」という法律が関係してきます。
県道などの道路に関しては、国や公共団体が管理しています。
道路を管理する国や公共団体には、道路を安全に使用できるように、常に管理する義務があります。

国家賠償法2条

ここでは、穴ぼこや段差が原因で事故が起こったと考えられる際に、国や公共機関に請求するために重要になってくる「国家賠償法第2条」を詳しく解説していきます。

【国家賠償法第2条】
道路、河川その他の公の営造物の設置または管理に瑕疵があったために他人に損害が生じたときは、国または公共団体は、これを賠償するせきに任ずる。
2前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。

「公の営造物」とは?

「公の営造物」とは、公の目的に作られた有体物のことです。「有体物」とは、モノや設備のことです。
また、「公の営造物」は、「自然公物」と「人工公物」に分けることができます。
「自然公物」は、河川、湖、沼、海、砂浜など。
「人工公物」は、道路、上下水道、庁舎、庁舎内の机・椅子、校舎、公用車、けん銃などです。

公の営造物かどうかの判断基準は、国民の方々が使うかどうかです。
例えば、道路が私道であっても、公のために造られているのであれば、「公の営造物」とみなされます。このような、私人が所有している公の営造物を「私有公物」といいます。
一方、公のために造られていないモノ、国公有地などは、公の営造物に含まれません。

過去の裁判では、
「公の営造物の設置または管理は、必ずしも国または公共団体が法律上の権限に基づいて行うことを要せず、事実上これを管理することになったときは管理責任を負う。」とされています。
例えば、前述した私道もこれに当たる場合があります。私道のため、法律上は、国や地方公共団体の管理義務がありません。しかし私道を管理する場合は、国や地方公共団体が管理責任を負うことになります。

「設置または管理の瑕疵」とは?

「設置または管理の瑕疵」とは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることです。
具体的には、以下のような場合を指します。

◯ 道路に穴ぼこがある場合
◯ 大きな段差がある場合
◯ 道路の一部が崩壊している場合
◯ 路上に何らかのものが放置されている場合
◯ その他何らかの整備不備や管理不行き届き

客観的な瑕疵が存在すれば足り、損害の発生に関して、設置者や管理者の過失の有無は問いません。無過失責任となります。
つまり、客観的な瑕疵が原因で事故が起こった場合は、管理者である国や公共団体に対して、危ない状態を放置し、また修復を怠ったとして国家賠償請求が可能になります。

ただし、地震や大洪水といった自然災害のような不可抗力で起こった損害に関しては、国家賠償法の対象にはなりません。

過去の裁判では、
◯ 工事標識板が道路上に倒れたまま放置され、道路の安全性を著しく欠如する場合であったとしても、時間的に道路を安全な状態に復旧させるのが不可能な場合、管理に瑕疵があったとしても認められない。

◯ 道路の瑕疵の判断に関して、国や公共団体が予算不足だからといって、免責にはならない。

◯ 改修済み河川は改修がなされた段階で想定されていた洪水に対応できる安全性を抱えていたかどうかを基準とする。

◯ 営造物自体に危険性がなくても、一定の限度を超える営造物の利用によって、利用者や第三者が損害を受ける危険性がある場合には、その営造物には設置または管理の瑕疵があると認められる。

道路整備の不備の因果関係

事故において、道路に管理瑕疵があったとしても、事故と道路不備の間に因果関係がなければ、補償の対象にはなりません。
例えば、穴ぼこに落輪したために車がコントロールを失っていたとしても、その後の衝突事故の原因が無謀運転や運転技術の未熟である場合は、事故と道路不備の因果関係は認められません。

道路整備の不備の事故への対応方法

事故発生時の対応

1. 怪我の有無を確認・救護

まずは、怪我人がいないかを確認しましょう。怪我人がいる場合は、救急車を呼ぶ、自分で近くの病院に運ぶなど、状況に応じて適切な手段をとりましょう。軽い怪我でも可能な限り病院へ行き、診察を受けるようにしましょう。

2. 事故車を安全な場所へ運ぶ

事故車をそのままの状態にしておくと、交通渋滞や二重事故の原因になる可能性が出てきます。事故を最小限に抑えるために、安全な場所へ移動させましょう。

3. 警察へ連絡する

「交通事故証明書」を取り付けるために、たとえ軽微な事故であったとしても、必ず警察に連絡しましょう。警察が到着したら、事故の状況などを伝えます。ヒアリングの内容に関しては、後述します。

4. お相手を確認する

自分以外の方も事故に関わっている場合は、お相手の方に関して確認します。加害事故、被害事故にかかわらず、免許証などでお相手の氏名、住所、連絡先などを確認しましょう。お相手が自動車保険に加入している場合は、その保険会社、証券番号、契約者氏名、連絡先を確認してください。

5. 事故状況と目撃者を確認する

事故の状況は、賠償額、管理瑕疵の有無を決定する上で重要になります。事故車のスピード、停車位置、信号の状態などをメモしておきましょう。目撃者がいる場合には、住所、氏名なども聞いておきましょう。

事故発生後の対応

ほとんどの場合、管理瑕疵が疑われる事故は、事故を起こした人からの連絡で判明します。連絡を受けた後、担当者が事故者からのヒアリング、事故現場の確認、安全措置を行います。

 

事故者からのヒアリング

事故者へのヒアリングは、可能な限り現地で立ち会って行います。より明確な記録を残すためです。
管理瑕疵の判断や過失の割合の算定が必要なこと、
裁判になった際の、瑕疵がないことや過失があることの立証は道路管理者側が行わなければならないことを踏まえて、ヒアリングを行います。具体的には、以下のようなことを聞き取ります。

・事故の発生時刻
・事故の発生場所
・事故者の氏名、住所、電話、職業
・発生した損害の状況
・事故に至るまでの状況
・事故の状況
・同乗者、同行者、目撃者などの有無
・警察へ事故の届け出がなされているかの確認

事故が起こった際、お金を請求すれば、お金がもらえると思っている方がいらっしゃいます。ですが、管理瑕疵がなければ支払いができないこと、過失相殺などがあること、これを決定するために相当な時間がかかることなどのことを考慮すると、すぐにお金がもらえることは少ないと考えられます。

示談交渉

管理瑕疵があると判断され、過失が決まった場合、事故者との示談交渉が行われます。自治体が道路賠償責任保険などに加入している場合は、示談交渉の前に保険会社へ連絡が行き、保証する損害額の範囲、過失割合などについてのサポートが受けられます。

法律上の助言が必要な場合は、弁護士への相談。自動車の損害が大きく車両の時価を損害額とする場合は、日本自動車査定協会に登録している技術アジャスターに委託して車両鑑定を行うなど、他の機関も間に挟んで、示談を進める場合もあります。

穴ぼこ・段差による事故の事例

穴ぼこによる事故の管理瑕疵の有無

道路を管理する立場目線で考えると、管理瑕疵を問われないためには、「何センチ以上に穴ぼこや段差を無くさなければならないのか」に着目することになります。

しかし実際、『神戸市道防護柵不全児童転落事件(最高裁判昭和53年7月4日)』において、管理瑕疵有無の判断は、「その事故が発生した時点での当該営造物の構造、用法、場所的環境、利用状況など、諸般の事情を総合考慮し、具体的・個別的に判断する」物とされています。

つまり、着目点の明確な答えは見当たらない場合もあります。

また、山間部の交通量の少ない中央部のみが簡易舗装された府道で、道路の端の舗装が剥離してできた、10センチほどの穴ぼこで自転車が転倒した事故(『京都府道穴ぼこ自転車転倒事件』)では、道路の整備に関して、「当該道路の位置、環境、交通状況などに応じ、一般の通行に支障を及ぼさない程度で足りる」とし、「通行者の方で通常の注意をすれば、容易に危険の発生を回避し得る程度の軽微な欠陥は道路の管理の瑕疵に該当しない」とされました。

他には、「くぼみの形状から見れば、交通に支障をきたすほどのものとは考えられない」「交通事故の原因に直結するほどに危険な状態が生じていたとまではいえない」などの理由が挙げられた事例があります。

要するに、たとえ道路に深い穴ぼこがあったとしても、通行者が注意すれば回避できるレベルのものなら、管理者側の責任は問われないということです。

歩行者の段差による事故

歩行者が歩道や穴ぼこで転び、怪我をしたなどの事例があります。このような事故に関して、道路の状況によって「通常程度の凸凹、くぼみ、段差である」「通常の注意を払っていれば危険はない」などの理由で管理瑕疵がないとした判例が、裁判例の約8割を占めています。現地の状況によっては、管理瑕疵を認めている判例もあります。
割合や理由から考えると、管理瑕疵と認めてもらえる可能性は低いと考えられます。

まとめ

今回は、道路整備の不備による事故に関することを紹介しました。
事故の事例を見てみると、管理瑕疵が認められていないケースが多いです。
多少の段差、穴ぼこがあっても、安全に運転できるようにしておくことが最善の策なのかもしれません。

もし、事故を起こしてしまった場合には、正当な判断を受けるため、状況や目撃情報などをしっかりと押さえておきましょう。

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