「危険運転致死傷罪」適用ケースとその刑罰の重さを解説

「危険運転致死傷罪」適用ケースとその刑罰の重さを解説

「自分は大丈夫」「まさか事故なんて起こさない」。

運転免許を取得したばかりの時、あるいは久しぶりにハンドルを握る時、多くの人がそう思っているかもしれません。しかし、テレビやインターネットで連日のように報道される悲惨な交通事故のニュースを目にするたび、一瞬の油断や判断ミスが取り返しのつかない事態を招くことを、私たちは知っています。

特に近年、「あおり運転」をはじめとする悪質で危険な運転行為が社会問題となり、厳罰化が進んでいます。その中心にあるのが「危険運転致死傷罪」という法律です。

「危険運転」と聞くと、まるで映画やドラマの中の話のように、自分とはかけ離れた特別なものだと感じるかもしれません。しかし、この法律が対象とする行為は、実は私たちの日常に潜む危険と隣り合わせなのです。カッとなって前の車を追い詰めてしまったり、少しだけならと飲酒運転をしてしまったり…。そんな「少しの気の緩み」が、この重い罪に問われる入り口になる可能性は、誰にでもあるのです。

この記事では、運転初心者の方や、久しぶりに運転するペーパードライバーの方にも分かりやすいように、「危険運転致死傷罪」とは一体どのような罪なのか、具体的にどんな運転が対象となるのか、そして、その刑罰がいかに重いものであるかを、一つひとつ丁寧に解説していきます。

この記事を読み終える頃には、「知らなかった」では済まされない交通社会の厳しい現実と、自分自身や大切な人の未来を守るために、ドライバー一人ひとりが持つべき責任の重さを、きっと理解していただけるはずです。さあ、一緒に安全運転への第一歩を踏み出しましょう。


目次

第1章:「危険運転致死傷罪」とは? – ただの交通事故ではない、重大な犯罪

まずはじめに、「危険運転致死傷罪」がどのような法律なのか、その基本的な考え方を理解しておきましょう。この法律を正しく知ることが、危険な運転から自分を遠ざけるための第一歩となります。

1-1. 「過失」ではなく「故意」に近い、極めて悪質な運転への重罰

通常の交通事故は、「過失運転致死傷罪」という罪に問われることが一般的です。ここでの「過失」とは、平たく言えば「うっかりミス」のこと。「脇見をしていて追突してしまった」「安全確認が不十分で、交差点で出会い頭の事故を起こしてしまった」といったケースがこれにあたります。

もちろん、過失であっても人の命を奪ったり、怪我をさせたりすれば、決して軽い罪ではありません。しかし、「危険運転致死傷罪」は、これとは全く次元の異なるものです。

この法律が対象とするのは、「うっかり」や「不注意」といったレベルを遥かに超えた、極めて悪質で危険な運転行為です。それは、もはや「事故」と呼ぶことさえためらわれるような、「事件」と呼ぶべきもの。法律は、こうした運転を「事故を引き起こす危険性が極めて高い、故意(わざと)にも近い危険な行為」と位置づけ、非常に重い刑罰を科しているのです。

簡単に言えば、「普通の運転をしていたら、まず起こさないような、わざと危険な運転をして、結果的に人を死なせたり、怪我をさせたりした場合」に適用される、特別な法律だと考えてください。

1-2. 法律が生まれた背景にある、悲しい事故の教訓

この「危険運転致死傷罪」は、2001年に新しく作られた法律です。なぜ、このような重い罰則が必要になったのでしょうか。その背景には、社会に大きな衝撃を与えた、いくつかの悲しい事故がありました。

特に大きなきっかけとなったのは、1999年に東京で起きた「東名高速飲酒運転トラック事故」や、2000年に神奈川で起きた「小田急線高架下の飲酒運転事故」です。これらの事故では、飲酒運転という悪質な行為によって、幼い子供を含む多くのかけがえのない命が奪われました。

しかし、当時の法律では、飲酒運転による事故も「過失」として扱われ、加害者に科される刑罰が、遺族の感情や社会の常識から見てあまりにも軽すぎることが問題視されました。

「こんなに悪質な運転が『うっかり』で済まされていいのか」「被害者の無念を晴らすためには、もっと厳しい罰則が必要だ」。

こうした国民の声が大きなうねりとなり、悪質・危険な運転行為を厳しく罰するための新しい法律、「危険運転致死傷罪」が誕生したのです。この法律は、悲しい事故の教訓の上に成り立っていることを、私たちは決して忘れてはなりません。


第2章:具体的にどんな運転が「危険運転」になるのか? – 知っておくべき10の類型

では、具体的にどのような運転が「危険運転致死傷罪」の対象となるのでしょうか。法律では、危険な行為をいくつかのパターン(類型)に分けて定めています。ここでは、2020年の法改正で追加された内容も含め、現在定められている10の類型を、初心者の方にもイメージしやすいように具体的な例を挙げながら解説します。

2-1. アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態での走行

これは最もイメージしやすい類型かもしれません。お酒や薬物の影響で、まっすぐ歩けない、呂律が回らない、意識が朦朧としている…そんな状態で車を運転することが、いかに危険かは誰にでも分かりますよね。

ポイントは、「正常な運転が困難な状態」であったかどうかです。

単に「お酒を飲んだ」というだけではなく、その影響でハンドル操作やブレーキ操作が正しくできない、信号や標識を認識できないといった状態に陥っていることが必要です。

具体例

  • 深酒をして千鳥足の状態になりながら車に乗り込み、蛇行運転を繰り返した。
  • 医師から処方された眠気の強い薬を飲んだ後、意識が遠のくのを感じながら運転を続け、センターラインをはみ出してしまった。

「少ししか飲んでいないから大丈夫」「このくらいの薬なら平気」といった安易な考えが、最も取り返しのつかない事態を招きます。運転するなら一滴も飲まない、薬を飲んだら運転しない。これはドライバーとしての鉄則です。

2-2. 進行を制御することが困難な高速度での走行

車の性能は年々向上し、少しアクセルを踏むだけで、あっという間に法定速度を超えてしまいます。しかし、スピードが出れば出るほど、車はドライバーのコントロールを離れていきます。

この類型で重要なのは、「進行を制御することが困難な」という部分です。

ただのスピード違反ではなく、その道路の状況(カーブのきつさ、道幅、交通量など)から見て、常識では考えられないような高スピードで走行し、案の定カーブを曲がりきれずに壁に激突したり、前方の危険に気づいても全く間に合わずに追突したりするようなケースが想定されています。

具体例

  • 見通しの悪い峠道を、対向車が来たら絶対に避けられないような猛スピードで走り抜け、カーブを曲がりきれずに崖から転落した。
  • 雨で路面が濡れている高速道路を時速180キロで暴走し、スリップして他の車を巻き込む大事故を起こした。

自分の運転技術を過信し、「このくらいならコントロールできる」と思うのは非常に危険です。速度が2倍になれば、ブレーキをかけてから止まるまでの距離(制動距離)は、およそ4倍に伸びると言われています。スピードの出し過ぎは、文字通り「走る凶器」を自ら作り出す行為なのです。

2-3. 進行を制御する技能を有しないで走行

これは、いわゆる「運転が著しく未熟」な状態での運転を指します。運転免許を持っている以上、最低限の技能はあると見なされますが、この類型が適用されるのは、そのレベルを遥かに下回るような、極めて特殊なケースです。

具体例

  • 無免許運転で、アクセルとブレーキの踏み間違いを繰り返し、歩道に乗り上げて人をはねてしまった。
  • マニュアル車の操作に全く慣れていないのに、急な坂道で運転し、エンストとパニックを繰り返した末に車を暴走させてしまった。

運転免許を取得したばかりの初心者の方が、通常の運転でこの類型に問われることはまず考えられません。しかし、無免許運転がいかに危険で無謀な行為であるかを物語っています。

2-4. 人や車の通行を妨害する目的で、走行中の車の前方で停止し、その他これに著しく接近すること

ここからが、いわゆる「あおり運転」に関連する類型です。この類型は、テレビなどでよく報道される、非常に悪質な妨害運転を罰するためのものです。

ポイントは、「妨害する目的」があったかどうかです。

相手を怖がらせたり、道を譲らせたり、腹いせをしたりする目的で、わざと危険な行為をすることが罪の成立に必要となります。

具体例

  • 高速道路で追い越し車線を走り続けていたところ、後方から来た車にパッシングされたことに腹を立て、その車の前に割り込んで急ブレーキを踏んだ。
  • 車線変更をめぐってトラブルになった相手の車を執拗に追いかけ、幅寄せを繰り返して停車させようとした。

カッとなって感情的な運転をしてしまうと、この罪に問われる可能性があります。イラっとすることがあっても、決して相手にせず、冷静さを保つことが重要です。

2-5. 車の通行を妨害する目的で、走行中の車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転

これも「あおり運転」の一つで、いわゆる「車間距離不保持」の悪質なケースです。後ろからピタッとくっついて、相手にプレッシャーを与える行為がこれにあたります。

この類型が成立するためには、単に車間距離が近いだけでなく、

  1. 妨害する目的があること
  2. 重大な交通の危険を生じさせる速度であることという2つの条件が必要です。例えば、高速道路で時速100キロ以上出ている状況で、前の車との距離を数メートルまで詰めるような行為は、前の車が少しブレーキを踏んだだけで大事故につながる、まさに「重大な交通の危険を生じさせる」行為と言えます。

具体例

  • 高速道路で、前を走る車が遅いことに腹を立て、数メートルまで車間距離を詰めて執拗にパッシングやクラクションを繰り返した。

このような運転は、相手を威圧するだけでなく、自分自身の安全をも著しく脅かす愚かな行為です.

2-6. 赤色信号等を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転

信号無視も、よくある交通違反の一つですが、この類型は単なる信号無視とは一線を画します。

ポイントは、「殊更に(ことさらに)無視し」という部分と、「重大な交通の危険を生じさせる速度」という部分です。

「殊更に」とは、「わざと」「意図的に」という意味です。信号が赤だと分かっていながら、あえて無視して交差点に進入するような行為を指します。「うっかり信号を見落とした」というケースは含まれません。

さらに、交差する道路の状況などから見て、衝突すれば大事故になることが明らかな危険な速度で走行している必要があります。

具体例

  • 交通量の多い大きな交差点で、赤信号に変わったのを認識しながら、「まだ行ける」とアクセルを踏み込み、猛スピードで進入し、青信号で横断してきた歩行者をはねた。
  • 警察の追跡から逃れるため、赤信号をことごとく無視して市街地を暴走した。

信号は、交通の安全と円滑を守るための最も基本的なルールです。それを意図的に破る行為は、周囲の全ての人の命を危険に晒す、極めて悪質な行為なのです。

2-7. 通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転

この類型は、2020年の法改正で新たに追加されました。歩行者専用道路や、一方通行の道路を逆走するなど、本来車が通ってはいけない場所を、危険な速度で走行する行為を罰するものです。

具体例

  • カーナビの古い情報や標識の見落としで一方通行の道路に誤って進入してしまった、というケースではなく、近道をしようとして、意図的に商店街の歩行者天国を猛スピードで走り抜けた。
  • 高速道路のインターチェンジを間違えたことに気づき、本線上でUターンして逆走を始めた。

特に高速道路での逆走は、正面衝突を誘発する自殺行為にも等しい、最も危険な行為の一つです。もし間違えてしまった場合は、パニックにならず、安全な場所に停車してロードサービスや警察に助けを求めましょう。

2-8. 妨害目的で、割り込みや幅寄せをする行為(準危険運転致死傷罪)

ここからは、2020年の法改正で追加された、妨害運転(あおり運転)に対する新しい規定です。厳密には、これまでの類型とは少し位置づけが異なりますが、危険な運転を罰するという点では同じです。

これは、妨害する目的で、他の車の通行を妨げるような「割り込み」や「幅寄せ」を行う行為を指します。

具体例

  • 追い越しをさせまいとして、相手の車の前に何度も割り込んだり、幅寄せをして進路を妨害したりした。

2-9. 妨害目的で、高速道路等で他の車を停車させたり、著しく接近させたりする行為

これも新たに追加された規定で、特に高速道路上での危険行為を対象としています。高速道路は、一般道と比べて車が高速で走行しているため、些細なトラブルが重大事故に直結します。

高速道路や自動車専用道路で、相手の車を妨害する目的で、その車の前で停止したり、著しく速度を落としたり(徐行)して、後ろの車を止めさせたり、急ブレーキをかけさせたりする行為がこれにあたります。

具体例

  • 追い越し車線でトラブルになった相手の車の前に出て停車させ、車から降りてきて威嚇した。(東名高速あおり運転事故が、この規定が作られる大きなきっかけとなりました)

高速道路上で車を停めることが、どれほど危険な行為か、想像に難くないでしょう。後続車が次々と追突する多重事故を引き起こす、極めて悪質な行為です。

2-10. 妨害目的で、不必要な急ブレーキをかける行為

一般道においても、妨害目的で不必要な急ブレーキをかける行為が、罰則の対象として明確化されました。

具体例

  • 後続車を威嚇したり、困らせたりする目的で、前方に何もないのに何度も急ブレーキを踏んだ。

このような行為は、後続車に追突を誘発させ、自分自身も危険に晒すことになります。


第3章:刑罰はどれくらい重いのか? – 失われるのは自由だけではない

「危険運転致死傷罪」が、いかに悪質な運転を対象としているか、お分かりいただけたかと思います。では、もしこの罪で有罪となった場合、どのような罰が待っているのでしょうか。その重さを知れば、決して軽い気持ちで危険な運転などできなくなるはずです。

3-1. 人を死なせた場合(危険運転致死罪)

危険な運転によって、相手を死亡させてしまった場合、「危険運転致死罪」が適用されます。

その刑罰は、「1年以上20年以下の懲役」です。

「懲役」とは、刑務所に収容され、労働を義務付けられる刑罰のことです。最長で20年間、社会から隔離される可能性があるということです。これは、殺人罪(死刑または無期もしくは5年以上の懲役)に次ぐほどの、極めて重い刑罰です。

人生の最も輝かしい時間の大半を、刑務所の壁の中で過ごすことになるかもしれない。その事実の重みを、私たちは真剣に受け止めなければなりません。

3-2. 人を負傷させた場合(危険運転致傷罪)

危険な運転によって、相手に怪我をさせてしまった場合は、「危険運転致傷罪」が適用されます。

その刑罰は、「15年以下の懲役」です。

怪我をさせただけでも、最大で15年間も自由を奪われる可能性があるのです。相手の怪我の程度によっては、非常に長期の懲役刑が科されることも少なくありません。

3-3. 刑事罰以外のペナルティ – 失うものの大きさ

刑務所に行くだけが罰ではありません。危険運転致死傷罪で有罪判決を受けると、人生を根底から揺るがす、さまざまなペナルティが待ち受けています。

  • 運転免許の取消し:危険運転致死傷罪は、極めて悪質な違反行為として、運転免許の基礎点数が非常に高く設定されています。有罪が確定すれば、まず間違いなく運転免許は取り消しとなり、長期間(最大10年間)、免許を再取得できなくなります。
  • 社会的信用の失墜:「危険運転で人を死なせた(傷つけた)」という事実は、前科として一生ついて回ります。就職や転職が著しく困難になったり、場合によっては現在の職場を解雇されたりすることもあります。家族や友人からの信用も失い、社会的に孤立してしまう可能性も否定できません。
  • 莫大な損害賠償:刑事罰とは別に、被害者やその遺族に対して、民事上の損害賠償責任を負うことになります。死亡事故や重い後遺障害が残る事故の場合、その金額は数千万円から、時には億を超えることも珍しくありません。自動車保険に加入していても、飲酒運転などの悪質なケースでは保険金が支払われないこともあり、一生をかけて償い続ける人生を送ることになります。

たった一度の危険な運転が、自分の自由、仕事、財産、そして未来のすべてを奪い去ってしまう。その代償は、あまりにも大きいのです。


第4章:あなたが加害者にならないために – 今すぐできる5つの心構え

ここまで、「危険運転致死傷罪」の恐ろしさについて解説してきました。しかし、ただ怖がるだけでは意味がありません。大切なのは、どうすれば自分が加害者にならずに済むのか、その具体的な方法を知り、実践することです。ここでは、今日からすぐにでも実践できる、安全運転のための5つの心構えをご紹介します。

4-1. 心と時間に「ゆとり」を持つ

危険な運転の多くは、ドライバーの「焦り」や「怒り」といった、心の乱れから生まれます。

  • 「約束の時間に遅れそう!」と焦ってスピードを出す。
  • 「割り込まれた!」とカッとなって、あおり運転をしてしまう。

こうした状況に陥らないために、最も大切なのは、運転前に心と時間の両方に「ゆとり」を持っておくことです。

出発前には、5分、10分でもいいので、時間に余裕を持たせる計画を立てましょう。それだけで、「急がなきゃ」という焦りがなくなり、心に平穏が生まれます。運転中にイラっとすることがあっても、「まあ、いいか。こっちは急いでないし」と、穏やかに受け流せるようになるはずです。

4-2. 自分のコンディションを客観的に把握する

車を運転するのは、機械ではなく、あなた自身です。あなたの体調や精神状態は、運転にダイレクトに影響します。

  • 飲酒:言うまでもありません。一滴でも飲んだら絶対に運転しない。
  • 薬:風邪薬やアレルギーの薬など、眠気を誘う成分が含まれている場合があります。服用したら運転は避けましょう。
  • 疲労・睡眠不足:集中力や判断力を著しく低下させます。眠いと感じたら、無理せず休憩を取り、仮眠をとる勇気を持ちましょう。
  • 感情の起伏:仕事で嫌なことがあった、家族と喧嘩したなど、精神的に不安定な時は、運転も攻撃的になりがちです。運転前に深呼吸をするなど、一度気持ちをリセットしてからハンドルを握りましょう。

「自分は大丈夫」という根拠のない自信は禁物です。常に自分のコンディションを客観的に見つめ、少しでも不安があれば運転を控える判断が、あなたと周りの人を守ります。

4-3. 「かもしれない運転」を徹底する

教習所で何度も教わった「かもしれない運転」。これは、安全運転の基本中の基本であり、最も効果的な事故防止策です。

  • 「物陰から子供が飛び出してくるかもしれない」
  • 「対向車がセンターラインをはみ出してくるかもしれない」
  • 「前の車が急ブレーキをかけるかもしれない」

常に危険を予測しながら運転することで、いざという時に冷静に対処できる心の準備ができます。アクセルやブレーキの操作も、自然と慎重になり、車間距離も十分に取るようになります。

「だろう運転」から「かもしれない運転」へ。意識を少し変えるだけで、運転の質は劇的に向上します。

4-4. あおり運転には「関わらない」が鉄則

もし、不運にもあおり運転の被害に遭ってしまったら、どうすればよいのでしょうか。

一番大切なのは、「相手にしない、関わらない」ことです。

  • 挑発に乗らない:相手がクラクションを鳴らしたり、パッシングをしてきても、決して対抗してはいけません。腹が立っても、冷静さを保ちましょう。
  • 道を譲る:相手は先に行きたがっているのですから、安全な場所で速やかに道を譲り、自分から遠ざけましょう。プライドは不要です。
  • 安全な場所に避難する:それでも執拗に追いかけられる場合は、サービスエリアやパーキングエリア、警察署、交番、コンビニなど、人目が多く、助けを求められる場所に避難しましょう。
  • 車から降りない・通報する:避難したら、ドアを必ずロックし、車からは絶対に出ずに、すぐに110番通報してください。「今、〇〇という場所で、〇〇色の車にあおられています」と、落ち着いて状況を伝えましょう。

4-5. ドライブレコーダーという「お守り」

最後におすすめしたいのが、ドライブレコーダーの設置です。

ドライブレコーダーは、万が一の事故やトラブルの際に、客観的な証拠としてあなたの正当性を証明してくれる、非常に心強い味方です。

また、「録画中」というステッカーを貼っておくだけで、あおり運転を未然に防ぐ抑止力にもなります。

自分の身を守るため、そして理不尽なトラブルに巻き込まれないための「お守り」として、ぜひ設置を検討してみてください。


まとめ:ハンドルを握ることは、命を預かること

今回は、「危険運転致死傷罪」という重いテーマについて、詳しく解説してきました。

この法律が対象とする10の危険な行為、そして有罪となった場合に科される厳しい刑罰を知り、改めてハンドルを握ることの責任の重さを感じていただけたのではないでしょうか。

危険運転は、決して特別な人間が起こすものではありません。ほんの少しの油断、焦り、怒りの感情が、誰しもを危険なドライバーに変えてしまう可能性があるのです。

大切なのは、法律の条文を暗記することではありません。

「なぜ、その行為が危険なのか」を理解し、

「どうすれば、その危険を避けられるのか」を考え、

そして、「常に思いやりと譲り合いの心を持って運転する」ことです。

あなたがハンドルを握るその手には、あなた自身の未来はもちろん、同乗者や、あなたの周りを走る他の車、歩行者など、多くの人の命が預けられています。

この記事が、あなたのカーライフをより安全で、より豊かなものにするための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。今日から、そして明日からも、優しい気持ちで安全運転を心がけていきましょう。

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