「あおり運転」厳罰化の現状、ドライブレコーダー映像の証拠能力

「あおり運転」厳罰化の現状、ドライブレコーダー映像の証拠能力

「免許を取ったばかりで、まだ路上に出るのが怖い…」

「久しぶりの運転、周りの車のスピードについていけるか不安…」

ハンドルを握るあなたの、そんな少しドキドキした気持ち、とてもよく分かります。自分の運転操作に集中するだけでも大変なのに、周りの車、歩行者、自転車と、注意を払うべきことはたくさんありますよね。

特に、ニュースで時々耳にする「あおり運転」という言葉。もし自分がそのターゲットになってしまったら…と考えると、背筋が凍る思いがするかもしれません。

「あおり運転って、具体的にどんなことをされるの?」

「法律で厳しくなったって聞くけど、実際はどうなの?」

「もしもの時、ドライブレコーダーの映像って本当に役に立つの?」

そんなあなたの疑問や不安に、自動車メディアのプロとして、一つひとつ丁寧にお答えしていきます。この記事を読み終える頃には、あおり運転の正しい知識が身につき、「もしもの時の対処法」と「そうならないための予防策」が明確になっているはずです。

専門用語は使いません。分かりやすい言葉で、具体的にお話ししますので、どうぞリラックスして読み進めてください。一緒に、あなたとあなたの大切な人を守るための知識を身につけていきましょう。

「あおり運転」とは? 意外と知らないその定義

まず最初に、「あおり運転」とは一体どのような行為を指すのか、基本から確認しておきましょう。「なんとなく、後ろからビタッとくっつかれたり、幅寄せされたりすることかな?」というイメージをお持ちかと思いますが、法律ではもっと具体的に定められています。

具体的にどんな行為が「あおり運転」になるのか?

2020年6月30日に施行された改正道路交通法では、「妨害運転」、つまり「あおり運転」に該当する行為として、以下の10の類型を挙げています。これらは、他の車の通行を妨害する目的で行われる、非常に危険な行為です。

  1. 車間距離不保持前の車との車間距離を、理由なく極端に詰める行為です。いわゆる「ベタ付け」ですね。追突の危険があるだけでなく、前のドライバーに強烈なプレッシャーを与えます。
  2. 急ブレーキ禁止違反危険を防止するためでもないのに、不必要に急ブレーキをかける行為です。後続車に追突を誘発させる、極めて悪質な行為です。
  3. 進路変更禁止違反後ろから走ってくる車を妨害する目的で、急な割り込みを行ったり、その前で進路を塞いだりする行為です。
  4. 追越し違反前の車が右側を走っているのに、さらにその右側から危険な方法で追い越したり、左側から無理に追い抜いたりする行為です。
  5. 減光等義務違反夜間、対向車がいるにもかかわらず、ハイビーム(走行用前照灯)を使い続けたり、執拗にパッシングを繰り返したりして、相手の運転を妨害する行為です。
  6. 警音器使用制限違反危険を避けるためでもないのに、不必要にクラクションを鳴らし続けて威嚇する行為です。
  7. 安全運転義務違反幅寄せや蛇行運転など、相手の車に危険を感じさせるような運転をする行為です。数センチ単位での幅寄せは、運転に慣れていない方にとっては恐怖以外の何物でもありません。
  8. 最低速度違反(高速道路)高速道路の本線車道で、わざとノロノロ運転をして、後続車の通行を妨害する行為です。
  9. 高速自動車国道等駐停車違反(高速道路)高速道路上で、相手の車の進路を妨害するために、車を停止させる行為です。後続車による追突など、重大事故に直結する非常に危険な行為です。
  10. 通行区分違反対向車線にはみ出して走行し、向かってくる対向車を妨害したり、衝突させようとしたりする行為です。

いかがでしょうか。これらは単なる「マナー違反」ではなく、明確な「法律違反」であり、重大な事故を引き起こしかねない危険な行為なのです。

知らないと怖い。「妨害運転罪」の重い罰則

こうした危険な「あおり運転」をなくすため、法律は非常に厳しい罰則を設けました。それが「妨害運転罪」です。この法律ができたことで、あおり運転に対する処分は、以前とは比べ物にならないほど重くなりました。

「厳罰化」で何が変わったのか?

以前は、あおり運転に該当する行為があっても、例えば「車間距離不保持」という違反で処理されることが多く、罰則も比較的軽いものでした。しかし、「妨害運転罪」が創設されたことで、あおり運転は「一つの独立した、重大な犯罪」として扱われることになったのです。

そして、この罪の最も恐ろしい点は、たった一度の違反で「免許取り消し」になる可能性がある、ということです。

免許取り消しも?具体的な罰則を分かりやすく解説

妨害運転罪の罰則は、その危険性の度合いによって二段階に分かれています。

  1. 通行を妨害する目的で、上記の10類型の違反を行った場合・罰則:3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金・違反点数:25点・免許の処分:免許取り消し(欠格期間2年)欠格期間とは、免許を再取得できない期間のことです。つまり、最低でも2年間は、どんな種類の免許も取ることができなくなります。
  2. 上記の違反によって、さらに高速道路上で他の車を停止させるなどの「著しい交通の危険」を生じさせた場合・罰則:5年以下の懲役 または 100万円以下の罰金・違反点数:35点・免許の処分:免許取り消し(欠格期間3年)例えば、高速道路上で相手の車を無理やり停車させ、その結果、後続車が絡む追突事故が発生した場合などがこれにあたります。

違反点数を見てください。運転免許は、過去の違反履歴にもよりますが、通常は合計15点で免許取り消しとなります。妨害運転罪は、最低でも25点が付加されるため、「一発で免許取り消し」が確定する、非常に重い処分なのです。

「ちょっとカッとなっただけ」では、決して済まされません。仕事や生活の手段として車を運転している人にとっては、人生を大きく左右するほどの重い罰則が科せられることを、すべてのドライバーが知っておく必要があります。

もしもの時の最強の味方!ドライブレコーダーの重要性

ここまで、あおり運転の定義と厳しい罰則について見てきました。では、もしあなたが不幸にもあおり運転の被害に遭ってしまった場合、どうすれば自分を守ることができるのでしょうか。その答えが、ドライブレコーダーです。

なぜドライブレコーダーは必須アイテムなのか?

あおり運転の被害を警察に相談したり、被害届を出したりする際、最も重要になるのが「客観的な証拠」です。

「後ろの車に、すごく煽られて怖かったんです」

「急に幅寄せされて、ぶつかるかと思いました」

このように言葉で説明しても、相手のドライバーが「そんなことはしていない」と否定してしまえば、「言った、言わない」の水掛け論になってしまい、警察も捜査を進めるのが難しくなってしまいます。

しかし、そこにドライブレコーダーの映像があればどうでしょうか。

・いつ、どこで

・相手の車のナンバーや車種

・どのような危険な行為を

・どれくらいの時間、受け続けたのか

これらすべてが、映像と音声で克明に記録されています。これは、何よりも雄弁に事実を語る、動かぬ証拠となるのです。ドライブレコーダーは、もはや単なる「カー用品」ではなく、あなた自身と家族の安全を守るための「必須装備」と言えるでしょう。

ドライブレコーダー映像は「証拠」になるの?

「でも、ドライブレコーダーの映像って、本当に法的な証拠として認めてもらえるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。

結論から言うと、ドライブレコーダーの映像は、警察の捜査や裁判において、非常に有力な証拠として採用されるケースがほとんどです。

ただし、その証拠能力をより確かなものにするためには、いくつかのポイントがあります。

・日時設定が正確であること

映像がいつ撮影されたものかを示す日時は、非常に重要です。ドライブレコーダーを取り付けたら、必ず日時の設定を正確に行っておきましょう。GPS機能付きのモデルであれば、自動で時刻を補正してくれるので安心です。

・映像が改ざんされていないこと

当然ですが、映像を自分に都合よく編集・加工してはいけません。SDカードに記録された、ありのままの映像を提出する必要があります。

・相手のナンバープレートが鮮明に記録されていること

加害車両を特定するために、ナンバープレートの映像は決定的な証拠となります。画質が粗くて文字が読み取れない…ということにならないよう、ある程度の画質性能は確保しておきたいところです。

これらの条件を満たした映像は、あなたの正当性を証明するための、これ以上ない強力な武器となってくれるはずです。

失敗しない!ドライブレコーダー選びの3つのポイント

では、実際にドライブレコーダーを選ぶ際には、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。運転初心者の方でも分かりやすいように、3つのポイントに絞ってご紹介します。

  1. 画質:ナンバープレートをしっかり記録できるか最低でも「フルHD(約200万画素)」以上の画質を選びましょう。これにより、前を走る車のナンバープレートを鮮明に記録できる可能性が高まります。また、夜間の撮影能力も重要です。「STARVIS(スタービス)」といった、暗い場所でも明るく撮影できる技術に対応したモデルがおすすめです。
  2. 記録範囲:どこまで撮影したいか最も一般的なのは、車の前方だけを撮影する「フロントカメラ」タイプです。しかし、あおり運転は後方から行われることが多いため、理想を言えば、後方も撮影できる「前後2カメラ」タイプが安心です。さらに、左右からの幅寄せや割り込みも記録できる「360度カメラ」タイプもあります。ご自身の予算や、どのようなリスクに備えたいかに合わせて選びましょう。
  3. 付加機能:駐車中も安心できるか運転中だけでなく、駐車中の当て逃げやいたずらを記録できる「駐車監視機能」も人気の機能です。エンジンが止まっている間も、衝撃を検知したり、動くものを検知したりして自動で録画を開始してくれます。ただし、この機能を使うには、車のバッテリーから直接電源を取る配線が必要になることが多いので、購入時に確認しましょう。

被害に遭わないために。今日からできる自己防衛策

ドライブレコーダーという物理的な備えも大切ですが、それと同時に、あおり運転の被害に遭わないための「心構え」と「運転技術」も身につけておきたいものです。

冷静さが最大の武器!あおり運転に遭遇した時の対処法

もし、あおり運転のターゲットにされてしまったら。パニックにならず、冷静に行動することが何よりも重要です。絶対にやってはいけないこと、そしてやるべきことを、順を追って説明します。

・絶対にやってはいけないこと

・挑発に乗らない:相手がクラクションを鳴らしたり、パッシングをしてきても、絶対にやり返してはいけません。ブレーキをわざと踏んだり、スピードを落として対抗したりするのも危険です。相手をさらに刺激するだけです。

・車から降りない:相手が車を降りて威嚇してきても、絶対に車外に出てはいけません。身の危険が及ぶ可能性があります。

・やるべきこと

1. 安全な場所に避難する:まずはその場から離れることを考えましょう。高速道路であればサービスエリアやパーキングエリア、一般道であればコンビニやスーパー、ガソリンスタンドなど、人目があって防犯カメラも設置されていそうな場所に避難します。決して、人気のない路肩や空き地に停車してはいけません。

2. ドアをすべてロックする:安全な場所に停車したら、すぐに全てのドアをロックし、窓も開けないようにします。

3. ためらわずに110番通報する:身の危険を感じたら、すぐに110番に通報してください。「あおり運転を受けている」「車のナンバーは〇〇です」「今いる場所は〇〇です」と、落ち着いて状況を伝えましょう。ドライブレコーダーが録画中であることも伝えられると、より良いでしょう。

冷静さを保ち、安全を確保し、警察に助けを求める。この3つのステップを、頭の片隅に置いておいてください。

「あおられやすい運転」をしていませんか?

最後に、少しだけ視点を変えてみましょう。もちろん、あおり運転は100%加害者が悪いのですが、意図せずして「他のドライバーをイライラさせてしまう運転」をしてしまっている可能性も、ゼロではないかもしれません。

被害者にならないための予防策として、一度ご自身の運転を振り返ってみることも大切です。

・高速道路の追越車線を走り続けていませんか?

追越車線は、文字通り前の車を追い越すための車線です。追い越しが終わったら、速やかに走行車線に戻るのがルールであり、マナーです。

・流れに乗らない極端な低速走行をしていませんか?

制限速度を守ることは大前提ですが、道路全体の流れを無視した極端な低速走行は、渋滞の原因となり、後続車をイライラさせてしまうことがあります。

・急な割り込みやブレーキをしていませんか?

車線変更をする際は、十分に距離があることを確認し、早めにウィンカーを出す。ブレーキは、なるべく緩やかに踏む。こうした基本的な操作の積み重ねが、スムーズで安全な交通の流れを作ります。

・車間距離を詰めすぎていませんか?

自分が後続車の場合も、十分な車間距離を取ることで、前のドライバーに安心感を与えることができます。

もちろん、これらを守っていたからといって、理不尽なあおり運転を完全に防げるわけではありません。しかし、「他のドライバーへの配慮」を少しだけ意識することで、無用なトラブルに巻き込まれるリスクを減らすことはできるはずです。

まとめ

長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました。今回は、運転に不安を感じるあなたのために、「あおり運転」というテーマを深掘りしてきました。

最後に、今日の話をまとめます。

・あおり運転は、10種類の行為が定められた明確な犯罪であり、「妨害運転罪」という非常に重い罰則(一発で免許取り消し)が科せられる。

・もしもの時に自分を守る最強の武器は、客観的な証拠となる「ドライブレコーダー」。画質や記録範囲などをポイントに、自分の車に合ったものを選びましょう。

・万が一被害に遭ってしまったら、「挑発に乗らず、安全な場所に避難し、ためらわず110番通報する」ことが鉄則。

・「追越車線を走り続けない」など、他のドライバーをイライラさせない配慮ある運転を心がけることも、トラブルを避けるための大切な自己防衛策。

あおり運転は、決して許される行為ではありません。そして、その罰則はあなたの人生を大きく変えてしまうほど重いものです。

この記事で得た知識を、どうか「自分には関係ない話」だと思わないでください。正しい知識は、あなたを不要なトラブルから守り、より安全で快適なカーライフへと導いてくれるはずです。

ハンドルを握るすべての人が、お互いを思いやる気持ちを持てば、道路はもっと安全な場所になります。今日からまた、安全運転で素敵なドライブを楽しんでください。

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