海外旅行で運転免許証は持っていくべき?
海外旅行の準備といえば、パスポートや航空券、クレジットカードなどを真っ先に思い浮かべる方が多いでしょう。一方、日常的に車を運転している方であれば「海外旅行に運転免許証を持っていく必要はあるのか?」と気にするかもしれません。結論からいえば、海外旅行で車を運転する予定がなくても、日本の運転免許証を携帯しておくことには大きなメリットがあります。
パスポート紛失時の身分証明として役立つ
海外旅行中にパスポートを紛失してしまうと、ホテルへのチェックインや飛行機への搭乗手続きに支障が出るのはもちろん、そもそも自国への帰国が困難になります。再発行や渡航書の申請には時間がかかり、海外滞在日数を延ばさなければならない可能性もあるでしょう。
こうした状況に備えて、運転免許証を持参しておくことは重要です。運転免許証は、世界的に「身分証明書の一つ」と認識される場合があり、緊急時にパスポートの代わりとして一定の効力をもつ可能性があります。具体的には、渡航書(パスポートをなくした際に緊急帰国のために取得する書類)を発行する際、申請者の本人確認のために運転免許証が求められることもあるのです。
もっとも、最近の運転免許証には本籍地の記載がなく、日本国籍を示す唯一の証明にはなりにくい点は留意しなければなりません。そのため、最終的に戸籍謄本や抄本などを取り寄せる必要が出てくるケースもあります。しかし短期旅行であれば、パスポートのコピーや運転免許証などの組み合わせで対応できることもあるため、「持っていて損はない身分証明書」として考えておくとよいでしょう。
日本の運転免許証で運転できる国や地域もある
一般的に「日本の運転免許証だけ」で海外の公道を走行することは認められていません。しかし、ハワイやグアム、サイパンなど、一部の国・地域では日本の免許証の提示のみで車を運転できる場合があります。
ただし、現地の交通法規を把握していないと、いざ警察官に免許証を提示したときにスムーズに受け入れてもらえないことも考えられます。そうしたトラブル回避のために、国際免許証(国外運転免許証)を取得しておくのも一つの方法です。国や地域によって運転ルールが異なるため、渡航先が日本の運転免許証だけで良いのか、あるいは国際免許証が必要なのかを事前に確認しておきましょう。
海外での運転を可能にする国際免許証とは
海外で車を運転する際、よく耳にするのが「国際免許証」です。これは日本国内では正式には「国外運転免許証」と呼ばれており、所持している日本の運転免許証の内容を翻訳する形で、海外で運転を認めてもらうための証明書の役割を果たします。
国際免許証(国外運転免許証)の基本
国際免許証(国外運転免許証)は、発行日から1年間有効です。ただし、発行元となる日本の運転免許が有効期限切れとなれば、国際免許証の効力も失われます。つまり、日本の運転免許証の有効期間が迫っている場合は、早めの免許更新が必要ということです。
また、免許停止期間中の人や、有効期限が過ぎて失効状態にある人は、国際免許証を取得できません。旅行や出張などで「海外で運転したい」「レンタカーを借りる予定がある」という方は、国内の免許証がきちんと有効状態か確認し、余裕をもって手続きするようにしましょう。
国際免許証が有効な国・地域
国際免許証が通用するのは、日本が加盟する「ジュネーブ条約」に加盟している国々です。アジアのタイやシンガポール、中近東のトルコやイスラエル、アフリカの南アフリカやエジプト、欧州ではイギリスやフランス、イタリア、ロシア、北米のアメリカ合衆国、カナダ、南米各国、オセアニアのオーストラリアやニュージーランドなど、幅広い国が含まれます。たとえば以下のような国・地域でも利用可能です。
- アジア:フィリピン、インド、タイ、マレーシア、シンガポール、カンボジア、韓国など
- 中近東:トルコ、イスラエル、シリア、キプロス、ヨルダン、レバノン、アラブ首長国連邦など
- アフリカ:南アフリカ、エジプト、モロッコ、ガーナ、コンゴ、チュニジアなど
- ヨーロッパ:イギリス、フランス、ドイツ(※2023年現在、日本の国際免許証による運転は基本不可。要注意)、イタリア、ロシア、スペイン、ポルトガルなど
- 北中南米:アメリカ合衆国、カナダ、ペルー、キューバ、アルゼンチン、チリなど
- オセアニア:オーストラリア、ニュージーランド、フィジー、パプアニューギニアなど
- 特別行政区など:香港、マカオ、グアム、プエルトリコなど
なお、条約に加盟していない国や、加盟国であっても現地独自の事情により運転が認められないケースもあります。中には、「日本大使館の翻訳証明書があればOK」とする地域もあるので、渡航先に関する公式情報を事前にチェックしておきましょう。
国際免許証の取得方法
国際免許証は、日本国内の所定の窓口で発行してもらえます。発行自体は難しくなく、必要書類を揃えれば即日または数週間以内に入手可能です。ここでは、国際免許証取得の一般的な流れと注意点を解説します。
申請できる場所
- 住民登録のある都道府県の運転免許センター・運転免許試験場
- 一部の指定警察署
基本的に、運転免許センターや試験場であれば、申請日にそのまま即日交付してもらえます。警察署での申請の場合は、地域や時期によって2週間~3週間ほどかかるのが一般的です。海外渡航日が迫っている場合は、免許センターや試験場へ直接出向くほうが安心でしょう。
必要書類と手数料
国際免許証の申請時には、以下の書類・証明を用意する必要があります。
- 運転免許証(日本の有効な免許)
- 顔写真1枚
- サイズ:縦5cm×横4cm(または4.5cm×3.5cmと指定されているところも)
- 申請前6カ月以内に撮影したもの
- 正面・無帽・無背景で、顔がはっきりわかるもの
- パスポートなどの海外渡航を証明する書類
- 申請書(交付申請書)
- 窓口で入手し、必要事項を記入
- 古い国外運転免許証(該当者のみ)
- 有効・無効問わず、以前取得した国際免許証が残っている場合は返納義務がある
- 印鑑(都道府県により必要な場合あり)
手数料は2,350円~2,400円程度が目安となりますが、都道府県により多少の違いがある場合があります。東京では2023年5月時点で2,350円とされています。
有効期限と注意点
国際免許証の有効期限は発行日から1年間です。更新制度はないため、使いたい時期が明確であれば、渡航日が近づいてから発行するほうが期限を無駄にしません。
また、万一海外滞在中に日本の免許証が期限切れになった場合は、国際免許証も同時に効力を失う点に注意が必要です。長期の海外出張や留学などを予定している方は、免許証の更新時期と照らし合わせた上で申請手続きを行いましょう。
海外で車を運転するときに必要なもの
海外で運転する場合、国際免許証と日本の免許証だけを持っていればよいとは限りません。現地のレンタカー会社や交通当局が提示を求める書類や、車を借りる際の支払いに使うクレジットカードなども含め、以下の点をしっかり準備することが大切です。
国際免許証+日本の運転免許証はセット
国際免許証は、日本の免許証の翻訳版という意味合いが強く、「両方が揃って初めて効力を持つ」と理解しておきましょう。国際免許証のみでは「あなたが本当に日本の免許を持っているかどうか証明できない」とみなされるので、必ず日本の免許証も携帯してください。
パスポートやビザの携帯
旅行中は、ホテルのチェックインや観光先での身分証提示など、何かとパスポートの提示を求められる機会があります。車の運転と直接関係なくても、万が一の際に備えてパスポートは常に手元に置いておくのがベターです。もし渡航先にビザが必要な場合は、それも含めて忘れずに携帯しましょう。
クレジットカード
海外でレンタカーを借りるなら、クレジットカードは必須といっても過言ではありません。多くのレンタカー会社は、デポジット(保証金)としてクレジットカード情報を預かる形を取っています。現地で現金をたくさん持ち歩くリスクを減らすためにも、クレジットカードは複数枚用意するか、少なくとも利用限度額に余裕があるカードを1枚携帯しておくと安心です。
翻訳証明書が必要な場合も
ハワイやグアム、サイパンなど、一部の地域では日本の運転免許証と日本大使館等が発行する翻訳証明書だけで合法的に運転できる場合があります。この場合も国によって条件が異なるので、渡航前に在外公館や現地の観光情報サイトで必要書類を確認しましょう。
海外で運転するときの注意点
いざ海外で運転しようとする際、日本とは道路事情も交通ルールも大きく異なることが少なくありません。旅行の醍醐味として国際免許証を活用するのは素晴らしい体験ですが、以下のポイントにも留意することをおすすめします。
交通ルールと通行方向の違い
日本は左側通行、欧米の多くの国は右側通行です。慣れない側通行での運転は想像以上にストレスや危険を伴うため、最初のうちは細心の注意を払いましょう。とくに交差点での右左折時には、つい日本の感覚でハンドルを切ってしまいがち。助手席に慣れた人(現地に詳しい知人や友人)が同乗してくれると、より安全です。
また、日本では踏切での一時停止が必須ですが、海外の多くの国にはそのような決まりがありません。優先道路の概念やラウンドアバウト(環状交差点)のルールなど、渡航先独特の交通ルールを事前にインターネットや旅行ガイドなどで確認しておきましょう。
レンタカーを選ぶ際はオートマ車が無難
国や地域によってはマニュアル車が主流ということもあります。アメリカでは比較的オートマ車が多い反面、ヨーロッパではマニュアル車のレンタカーが主体となっていることもしばしば。慣れない右側通行の場所でマニュアル車を運転するのは、ギアチェンジの操作も含めてかなり負担が大きいものです。
多少割高になってもオートマ車を選んだほうが安全性も疲労軽減も見込めるので、初心者や海外での運転に不安がある方にはオートマ車を強くおすすめします。
海外旅行保険の特約加入を検討しよう
海外で運転するなら、**海外旅行保険の「自動車運転損害賠償責任特約」**を付けることを検討しましょう。通常の海外旅行保険では、レンタカーなどを運転している最中の事故については補償されないことが多いです。一方、この特約を付けると、運転中の事故に関する賠償責任をある程度カバーしてもらえます。
ただし、保険会社や契約プランによって補償範囲が異なるため、以下の点を必ず確認してください。
- 適用可能な国や地域の範囲
- 補償される対象(レンタカーのみ、知人の車も含む、など)
- 補償金額の上限
国によっては車両保険の加入義務や、自動車保険への加入が法律で義務付けられている場合もあります。レンタカー契約時に、CDW(Collision Damage Waiver)やLDW(Loss Damage Waiver)などと呼ばれる保険に自動的に組み込まれるケースも多いので、契約内容をしっかり確認しておきましょう。
長期滞在時は早めの免許更新も検討
もし海外赴任や留学で長期間日本を離れる予定がある場合は、免許証の更新時期に注意が必要です。通常の更新期間に日本に戻れない場合、海外在住のまま免許を失効させてしまうリスクも考えられます。
日本の免許には「更新期間前の更新手続き」という制度があり、一定の条件を満たせば更新期間前でも免許を更新することが可能です。これを活用すれば、余裕を持って免許の有効期限を延ばし、渡航先でも国際免許証が利用しやすくなります。詳細はお住まいの都道府県の運転免許センターや、警察署に相談してみましょう。
まとめ
海外で車を運転してみたいと思う方は少なくありませんが、前提として、日本の運転免許証だけでは海外の大半の国で運転できない点をしっかり認識しておきましょう。ジュネーブ条約加盟国に渡航する場合は、国際免許証(国外運転免許証)を取得することによって、安全かつ合法的に車を運転できます。一部の国や地域では、日本大使館の翻訳証明書によって運転可能な場合もあるため、渡航前には渡航先のルールを十分に調べておくことが大切です。
また、パスポートを万が一失くしてしまった際の身分証明書としても、運転免許証は重宝します。最近の免許証は本籍地の記載がないため、本来の意味での「国籍証明」としては使いにくいものの、少なくとも「氏名」と「顔写真」で本人確認するための補助書類として役立つ可能性が高いでしょう。
国際免許証の申請手続き自体は、運転免許センターなら即日発行されるなど手軽です。発行費用もそこまで高くありません。海外の高速道路や広大な自然の中をドライブするのは非常に魅力的で、旅行の思い出としても格別なものになるでしょう。ただし、日本とは道路や交通ルールが大きく異なり、言語の違いや保険の問題など、トラブルに巻き込まれるリスクもゼロではありません。
安全面を最優先に考え、事前準備としては国際免許証の取得に加えて、海外旅行保険に自動車運転損害賠償責任特約を付帯するなどの対策をしっかり行いましょう。クレジットカードの有無や翻訳証明書の要否も含めて渡航先の状況を確認し、余裕を持ったスケジュールで準備に取り組むことが、海外ドライブを思い切り楽しむための第一歩です。安全と安心を確保しつつ、異国の景色を車窓から満喫してください。