交通違反点数の累積、免許停止・取消処分の基準を再確認

交通違反点数の累積、免許停止・取消処分の基準を再確認

「運転免許を取ったばかりで、まだ運転が少し怖い…」

「久しぶりに運転するから、交通ルールがうろ覚えで不安…」

「自分は大丈夫だと思っているけど、交通違反の点数ってどうなっているんだろう?」

運転する方なら誰しも、一度はこんな風に思ったことがあるのではないでしょうか。毎日のように車を運転していると、つい慣れから油断が生まれてしまうこともあります。しかし、その一瞬の油断が交通違反につながり、大切な運転免許に影響を及ぼす可能性があるのです。

交通違反をすると科される「違反点数」。この点数が一定の基準に達すると、「免許停止(免停)」や、最悪の場合「免許取消」という重い行政処分が待っています。

この記事では、運転初心者の方やペーパードライバーの方にも分かりやすく、交通違反の点数制度の基本的な仕組みから、免許停止・取消処分の具体的な基準、そして処分を避けるための大切なポイントまで、詳しく丁寧に解説していきます。

「点数って、持ち点が減っていくの?」「免停って、具体的に何日間運転できなくなるの?」といった素朴な疑問にもお答えします。この記事を最後まで読んでいただければ、点数制度への理解が深まり、より一層、安全運転を心がけるきっかけになるはずです。あなた自身と、周りの人の安全を守るために、一緒に交通違反の点数制度について再確認していきましょう。


目次

そもそも交通違反の点数制度って何?

まずはじめに、交通違反の点数制度の基本的な考え方についてお話しします。多くの方が誤解しているポイントもありますので、ここでしっかりと基本を押さえておきましょう。

「違反点数」と「反則金」は別物です

交通違反をすると、「青キップ」や「赤キップ」といったものが切られ、「反則金」や「罰金」を支払うことになる場合があります。これと「違反点数」は、実は全く別のものです。

  • 反則金・罰金:違反行為に対する金銭的なペナルティです。比較的軽微な違反(青キップ)の場合は「反則金」、重大な違反(赤キップ)の場合は「罰金」となり、刑事罰の一種として扱われます。
  • 違反点数:将来の危険運転を防止するために、違反行為の危険性や悪質性に応じて付けられる点数のことです。これは行政処分(免許停止や免許取消)の基準となります。

つまり、違反をすると「金銭的なペナル-ティ」と「行政処分の基準となる点数」の両方が科される、と覚えておいてください。

点数は「加算方式」。持ち点が減るわけではない!

運転免許の点数制度について、最もよくある誤解が「持ち点からの減点方式だ」というものです。「免許を取ったときは15点持っていて、違反するたびに点数が引かれていく」と思っている方が非常に多いのですが、これは間違いです。

正しくは、「加算方式」です。

免許を取得した時点での持ち点は「0点」です。そして、交通違反をするたびに、その違反内容に応じた点数がどんどん「加算」されていきます。例えば、信号無視をすれば2点、速度超過(20km/h以上25km/h未満)をすれば2点が加算され、累積点数は4点となります。

この累積した点数が、過去の違反歴(前歴)に応じて定められた一定の基準に達してしまった場合に、免許停止や免許取消といった行政処分が行われるのです。「点数が引かれる」のではなく「悪い点数が積み重なっていく」というイメージを持つと分かりやすいでしょう。

自分の累積点数を確認する方法

「そういえば、自分は今、何点なんだろう?」と気になった方もいるかもしれません。自分の現在の累積点数や過去の違反歴は、証明書を発行してもらうことで確認できます。

主な確認方法は以下の通りです。

  • 自動車安全運転センターで「累積点数等証明書」を申請する
  • 最寄りの警察署や交番、駐在所に備え付けの申込用紙を使って申請する
  • ゆうちょ銀行・郵便局で直接申し込む

証明書の発行には手数料がかかりますが、自分の運転履歴を正確に把握しておくことは、安全運転への意識を高める上でとても大切です。特に、過去に違反をしてしまった経験がある方は、一度確認してみることをお勧めします。


免許停止(免停)になってしまう基準とは?

では、具体的に累積点数が何点になったら「免許停止(免停)」になってしまうのでしょうか。ここが一番気になるところだと思います。実は、免停になる基準は、全員が同じではありません。過去に行政処分を受けた回数、いわゆる「前歴」によって大きく変わってくるのです。

「前歴」の回数が処分の重さを左右する

「前歴」とは、過去に免許停止や免許取消の処分を受けた回数のことを指します。この前歴が多いほど、より少ない点数で、より長期間の免許停止処分を受けることになります。

例えば、過去に一度も行政処分を受けたことがない「前歴0回」の人と、過去に一度、免許停止になったことがある「前歴1回」の人では、同じ違反点数でも処分の内容が全く異なるのです。

この前歴は、行政処分が終わった日から1年以上、無事故・無違反で過ごすことができればリセットされ、0回に戻ります。

具体的な点数と免停期間

それでは、前歴の回数別に、免許停止となる点数と期間を見ていきましょう。

前歴がない方(前歴0回)

初めて免許を取得してから、一度も免許停止や取消の処分を受けたことがない方です。

  • 累積点数 6点~8点:30日間の免許停止
  • 累積点数 9点~11点:60日間の免許停止
  • 累積点数 12点~14点:90日間の免許停止

一番軽い30日の免停でも、累積6点で該当してしまいます。例えば、「信号無視(2点)」と「指定場所一時不停止(2点)」、「携帯電話使用(3点)」をしてしまうと、合計で7点となり、30日間の免許停止処分を受けることになります。

過去に1回の前歴がある方(前歴1回)

過去に一度、免許停止などの処分を受けたことがある方です。

  • 累積点数 4点~5点:60日間の免許停止
  • 累積点数 6点~7点:90日間の免許停止
  • 累積点数 8点~9点:120日間の免許停止

前歴が1回あるだけで、基準がかなり厳しくなることが分かります。わずか4点の違反で、60日間もの間、運転ができなくなってしまいます。

過去に2回以上の前歴がある方

前歴が増えるほど、さらに厳しい基準が設けられています。

  • 前歴2回の場合:累積2点で90日間の免許停止
  • 前歴3回の場合:累積2点で120日間の免許停止
  • 前歴4回以上の場合:累積2点で150日間の免許停止

前歴が2回以上になると、信号無視(2点)たった一回で、長期間の免許停止処分が下されることになります。日頃から、いかに違反をしない運転を心がけるかが重要です。

免停になるとどうなる?流れを解説

万が一、免許停止の基準に達してしまった場合、どのような流れで手続きが進むのでしょうか。大まかな流れを知っておきましょう。

  1. 出頭要請通知書の受け取り違反点数が基準に達すると、公安委員会から「意見の聴取通知書」または「出頭要請通知書」といった書類が郵送されてきます。ここには、出頭する日時や場所が記載されています。
  2. 出頭と免許証の返納指定された日時・場所に運転免許証を持参して出頭します。そこで行政処分の内容が告げられ、免許証を返納することになります。この瞬間から、免許停止期間が開始され、一切の運転ができなくなります。
  3. 停止処分者講習の受講(任意)免許停止期間を短縮することができる「停止処分者講習」という制度があります。これは任意参加ですが、講習の最後に受ける考査(テスト)の成績に応じて、停止期間が短縮されます。例えば、30日の免停の場合、最大で29日間短縮され、講習を受けた日のみの停止で済むこともあります。
  4. 免許証の返還免許停止期間が満了すると、免許証が返還されます。停止処分者講習で期間が短縮された場合は、その短縮後の期間が満了した日に返還されます。この日から、再び運転することが可能になります。

免許取消になってしまう深刻なケース

免許停止よりもさらに重い処分が「免許取消」です。これは、文字通り運転免許が取り消され、運転する資格を失ってしまうという非常に厳しい処分です。再び運転するためには、定められた期間が経過した後に、もう一度、教習所に通うか試験場で直接受験するなどして免許を取り直さなければなりません。

免許取消となる点数の基準

免許取消になる基準も、免許停止と同様に「前歴」の回数によって異なります。

前歴の回数免許取消となる累積点数
前歴なし15点以上
前歴1回10点以上
前歴2回5点以上
前歴3回以上4点以上

ご覧の通り、前歴が増えるほど、非常に少ない点数で免許取消となってしまいます。前歴が2回ある方なら、一時停止違反(2点)と携帯電話使用(3点)の合計5点で免許を失う可能性があるのです。

「欠格期間」とは?免許を再取得できない期間

免許取消処分を受けると、すぐに免許を取り直せるわけではありません。「欠格期間」という、免許を再取得することができない期間が定められています。この期間は、取消の原因となった累積点数や違反内容によって異なり、最低でも1年、最も重いケースでは10年間も免許を取ることができません。

例えば、前歴がない方が累積15点で免許取消になった場合、欠格期間は1年となります。しかし、同じ15点でも、その中に酒気帯び運転などが含まれていると、欠格期間はさらに長くなります。

特定の悪質・危険な違反は一発で免許取消も

中には、それまでの累積点数が0点であっても、たった一度の違反で即座に免許取消となる、極めて悪質・危険な違反行為があります。これらは「特定違反行為」と呼ばれています。

主な特定違反行為と、その違反点数は以下の通りです。

  • 酒酔い運転:35点
  • 麻薬等運転:35点
  • 救護義務違反(ひき逃げ):35点
  • 危険運転致死傷罪など:45点~62点

これらの違反は、重大な交通事故に直結する極めて危険な行為です。たった一度の過ちで、長期間にわたって運転免許を失うだけでなく、被害者やその家族、そして自分自身の人生を大きく狂わせてしまうことを、決して忘れてはいけません。

免許取消後の流れと再取得への長い道のり

免許取消処分を受けると、運転免許を再び手にするまでの道のりは非常に長くなります。

  1. 欠格期間の満了を待つまずは、定められた欠格期間(1年~10年)が終了するまで待たなければなりません。この間は、当然ながら一切の運転はできません。
  2. 取消処分者講習の受講欠格期間が満了しても、すぐに免許の試験を受けられるわけではありません。その前に、2日間で合計13時間にも及ぶ「取消処分者講習」を受講し、修了証を受け取る必要があります。この講習は予約制で、費用もかかります。
  3. 免許の再取得取消処分者講習を修了して初めて、運転免許試験の受験資格が得られます。ここから、再び教習所に通うか、運転免許試験場で直接試験を受けて、合格を目指すことになります。

一度失った免許を取り戻すことが、いかに大変なことかお分かりいただけたかと思います。


知っておきたい!点数制度の特例とリセットの仕組み

ここまで、免許停止や取消といった厳しい処分について解説してきましたが、点数制度にはドライバーにとって有利になる特例や、累積点数がリセットされる仕組みも存在します。これを正しく理解しておくことも大切です。

点数がリセットされる3つのケース

違反によって加算された累積点数は、一定の条件を満たすと0点にリセットされ、前歴も0回として扱われるようになります。

ケース1:1年間の無事故・無違反

最後の違反をした日から、その後1年間、新たな違反をせず、事故も起こさずに過ごすことができれば、それまでの累積点数は0点にリセットされます。

例えば、ある日に2点の違反をしてしまったとしても、その日から1年間、安全運転を続けて無事故・無違反であれば、1年後には累積点数が0点に戻るのです。日々の安全運転の積み重ねが、いかに重要かが分かります。

ケース2:2年以上無事故・無違反の人がした軽微な違反

過去2年以上にわたって無事故・無違反だった人が、3点以下の軽微な違反(一時停止違反や速度超過20km/h未満など)をした場合に適用される特例です。

この場合、違反をした日から3ヶ月間、さらに無事故・無違反で過ごすことができれば、その違反による点数は加算されなくなります。ただし、この3ヶ月の間に別の違反をしてしまうと、前回の違反点数も合わせて加算されてしまうので注意が必要です。

ケース3:免許停止・取消処分が終わった後

免許停止や免許取消の処分期間が満了すると、それまでの累積点数は0点にリセットされます。

ただし、注意点があります。点数は0になりますが、免許停止や取消の処分を受けたという「前歴」は残ります。この前歴が消えるのは、先ほども説明した通り、処分期間が終わってから1年間、無事故・無違反で過ごした場合です。

累積点数等証明書で自分の運転履歴を確認しよう

先ほども少し触れましたが、「累積点数等証明書」を取得すると、現在の累積点数だけでなく、過去3年間の交通違反、交通事故、運転免許の行政処分の記録が記載されています。

また、「無事故・無違反証明書」や「運転記録証明書」といったものもあり、これらは就職の際に企業から提出を求められたり、安全運転者であることを証明したりする際に役立ちます。自分の運転を客観的に見直す良い機会にもなりますので、活用してみるのも良いでしょう。

ゴールド免許の条件と点数制度の関係

多くのドライバーが目標とする「ゴールド免許(優良運転者免許証)」。このゴールド免許を取得するためには、免許の更新年の誕生日から遡って過去5年間、無事故・無違反であることが条件です。

つまり、点数制度における違反点数が加算されるような行為をしてしまうと、次の免許更新ではゴールド免許を受け取ることができなくなります。ゴールド免許は、安全運転を続けてきた証であり、免許更新時の講習時間が短くなったり、自動車保険の保険料が割引になったりといったメリットもあります。日頃から点数を意識した安全運転を心がけることが、ゴールド免許の維持にもつながるのです。


うっかり違反を防ぐ!安全運転のための具体的な心構え

点数制度の仕組みを理解した上で、最も大切なのは、そもそも交通違反をしないことです。ここでは、特に運転初心者の方が陥りやすい「うっかり違反」を防ぎ、安全な運転を続けるための具体的な心構えを5つご紹介します。

時間に余裕を持った行動を心がける

「遅刻しそう!」という焦りは、安全運転の最大の敵です。焦ると、どうしてもスピードを出しすぎてしまったり、信号が変わる間際に無理な右折をしたり、一時停止がおろそかになったりしがちです。これらの行為は、すべて交通違反であり、重大な事故の原因にもなります。

出発する前に、目的地までのルートや所要時間をしっかりと確認し、常に5分、10分の余裕を持って家を出る習慣をつけましょう。たった少しの心の余裕が、運転の余裕につながります。

「かもしれない運転」で危険を予測する

教習所で何度も教わった「かもしれない運転」を、日々の運転で実践することが非常に重要です。

  • 物陰から子供が飛び出してくるかもしれない。
  • 対向車がセンターラインをはみ出してくるかもしれない。
  • 前の車が急ブレーキをかけるかもしれない。

このように、常に危険を予測しながら運転することで、危険な状況に陥る前にスピードを落としたり、車間距離を十分に取ったりといった、安全な行動が自然とできるようになります。

標識や標示を正しく理解する習慣

「この標識、どういう意味だっけ?」と迷った経験はありませんか?特に、一方通行や指定方向外進行禁止、駐停車禁止といった標識を見落とすと、意図せず違反をしてしまうことになります。

運転中は、前方の車の動きだけでなく、道路脇の標識や路面に書かれた標示にも常に注意を払いましょう。もし意味が分からない標識があれば、後で必ず調べる習慣をつけることが大切です。

スマートフォンやカーナビの操作は安全な場所に停車してから

運転中のスマートフォン操作(ながらスマホ)は、罰則が非常に厳しくなっています。画面を注視することはもちろん、手に持って通話するだけでも違反となります。注意力が散漫になり、追突事故などの原因となる極めて危険な行為です。

スマートフォンやカーナビを操作したいときは、必ずコンビニの駐車場やサービスエリアなど、安全な場所に車を停めてから行うように徹底してください。

疲れたら無理せず休憩を

長時間の運転や、仕事終わりの疲れた状態での運転は、判断力や集中力を低下させます。眠気を感じたり、注意が散漫になってきたと感じたら、決して無理をせず、早めに休憩を取りましょう。

少し仮眠をとったり、外の空気を吸ってストレッチをしたりするだけでも、気分がリフレッシュされ、安全な運転を続けることができます。


まとめ

今回は、交通違反の点数制度について、基本的な仕組みから免許停止・取消の基準、そして違反を防ぐための心構えまで、詳しく解説してきました。

最後に、この記事の重要なポイントを振り返ってみましょう。

  • 点数制度は「減点方式」ではなく「加算方式」です。
  • 免許停止や免許取消の基準は、過去の処分歴である「前歴」によって大きく変わります。
  • たった一度の悪質な違反(酒酔い運転など)で、一発で免許が取り消されることもあります。
  • 違反をしても、その後1年間無事故・無違反を続ければ、累積点数はリセットされます。
  • 「時間に余裕を持つ」「かもしれない運転を実践する」など、日々の心がけが違反を防ぎます。

交通違反の点数制度は、決してドライバーを罰するためだけにあるのではありません。私たちドライバー一人ひとりが交通ルールを守り、安全な交通社会を実現するための大切な仕組みです。

今回ご紹介した内容をしっかりと頭に入れて、明日からの運転に活かしていただければ幸いです。ハンドルを握るということは、自分だけでなく、同乗者や歩行者など、周りの人々の命を預かる責任ある行為です。そのことを常に忘れずに、思いやりのある安全な運転を続けていきましょう。

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