高速道路の最低速度違反とは?意外と知らないルール

高速道路の最低速度違反とは?意外と知らないルール

高速道路と聞くと、どんなイメージを持ちますか?

「速いスピードで走る道路」「スピードの出し過ぎに注意しないと」といった、最高速度を意識する方がほとんどだと思います。免許を取るときの教習所でも、スピードの出し過ぎについては何度も注意されますよね。

しかし、実は高速道路には「速すぎる」ことだけでなく、「遅すぎること」も交通違反になるという、意外と知られていないルールが存在します。それが「最低速度違反」です。

「え、ゆっくり走る方が安全じゃないの?」

「怖いから、あまりスピードを出したくない…」

特に運転に慣れていない初心者の方や、久しぶりにハンドルを握るペーパードライバーの方にとっては、そう感じるのも無理はありません。しかし、高速道路という特殊な環境においては、遅すぎる運転が、かえって重大な事故を引き起こす原因となってしまうのです。

この記事では、なぜ高速道路に最低速度が定められているのか、その理由と危険性、そして違反した場合の罰則について、専門用語をできるだけ使わずに分かりやすく解説します。

この記事を読み終えれば、あなたも高速道路の速度に関するルールを正しく理解し、自信を持って安全に走行できるようになるはずです。

高速道路には「最低速度」というルールがあった!

まず、最も基本的な事実から確認しましょう。高速道路には、道路交通法によって「最低速度」が定められています。普段、私たちが一般道路を走る際にはあまり意識することのない、高速道路ならではの重要なルールです。

そもそも最低速度って何?

最低速度とは、その名の通り「これ以上遅い速度で走ってはいけません」と定められた速度のことです。

道路交通法では、対面通行でない高速道路の本線車道(登坂車線や加速・減速車線などを除く、通常の走行に使われる車線)における最低速度は、時速50キロメートルと定められています。

  • 最低速度:原則として時速50km

つまり、特別な標識がない限り、高速道路の本線では時速50km以上の速度で走らなければならない、ということです。

なぜこのようなルールがあるのでしょうか。それは、高速道路が「多くの車が高速で、かつ円滑に移動する」ことを目的として作られた道路だからです。もし一台だけ極端に遅い車がいると、全体の流れが乱れてしまい、非常に危険な状況が生まれてしまいます。この危険性については、後ほど詳しく解説します。

すべての高速道路で50km/hなの?

「原則として時速50km」と説明しましたが、例外もあります。

道路の状況によっては、個別に最低速度が指定されている区間も存在します。その場合、道路標識によって示されています。

  • 最低速度の道路標識
    • 青い円形の標識の中に、白い文字で数字が書かれています。
    • 数字の下には、白い横線(アンダーライン)が引かれています。
    • 例えば、「50」と書かれていれば、その区間の最低速度は時速50kmであることを示します。

このアンダーライン付きの青い丸い標識を見たら、「ここからは、この数字より遅く走ってはいけないんだな」と理解してください。

もちろん、何があっても絶対に最低速度以上で走らなければならない、というわけではありません。

  • 最低速度が適用されないケース
    • 渋滞していて、物理的に50km/h以上出せない場合
    • 事故や悪天候(濃霧、大雨、大雪など)で、警察官などから速度を落とすよう指示された場合、または危険を避けるためにやむを得ず減速・停止する場合
    • 道路工事などで規制がかかっている場合

このような場合は、安全を最優先し、周囲の状況に合わせて走行することが求められます。あくまでも、交通が通常通り流れている状況でのルールだと覚えておきましょう。

なぜ「遅すぎること」が違反になるのか?その危険性とは

「でも、スピードを落として慎重に走るのが、どうして危険なの?」と疑問に思う方もいるでしょう。その理由は、高速道路では「周囲の車との速度差」が最も危険な要素の一つだからです。遅すぎる運転は、主に3つの大きな危険を生み出します。

周囲との速度差が生む「追突事故」のリスク

これが最も大きな危険です。

例えば、あなたが時速100kmで走行しているとします。当然、前の車も同じくらいの速度で走っているだろうと予測しながら運転していますよね。

そこに、もし時速40kmで走っている車が突然現れたらどうでしょうか。

時速100kmの車から見れば、時速40kmの車は「前方に止まっている障害物」に非常に近い感覚で見えます。気づくのが遅れれば、ブレーキが間に合わずに追突してしまう可能性が極めて高くなります。

高速道路での追突事故は、速度が速い分、衝撃もすさまじく、命に関わる大事故になりかねません。あなたが良かれと思ってゆっくり走っているその行為が、後続車にとっては予測不能な「危険物」となり、重大な事故を誘発してしまう恐れがあるのです。

渋滞の引き金に!交通の流れを乱す原因

特に渋滞する理由がないのに、なぜか車が詰まってしまう「自然渋滞」。実は、この原因の一つが、一台の低速走行車であるケースも少なくありません。

一台の車が周囲の流れに乗らずにゆっくりと走り続けると、その後ろの車はブレーキを踏まざるを得ません。さらにその後ろの車、そのまた後ろの車…と、ブレーキの連鎖が波のように後方へ伝わっていきます。この波が大きくなると、最終的には後方で車が完全に停止してしまい、渋滞が発生するのです。

運転している本人は、安全運転をしているつもりでも、気づかないうちに広範囲にわたる渋滞を引き起こし、多くの人に迷惑をかけている可能性があるのです。

無用な車線変更を誘発し、さらなる危険を生む

特に危険なのが、追い越し車線(一番右側の車線)をゆっくりと走り続ける行為です。追い越し車線は、その名の通り、前の車を追い越すための車線であり、追い越しが終わったら速やかに左側の走行車線に戻るのがルールです。

この追い越し車線を低速で走り続けると、後方から来た速い車は行き場を失ってしまいます。そして、その遅い車を避けるために、左側の走行車線へ無理な車線変更を試みたり、複数の車線にまたがって追い越しをかけようとしたりするかもしれません。

このように、一台の低速走行車が原因で、周囲の車が次々と危険な運転を強いられることになり、結果として全体の事故リスクを大幅に高めてしまうのです。

気になる罰則は?最低速度違反の罰金と点数

では、もし最低速度違反で取り締まりを受けたら、どのような罰則が科されるのでしょうか。自分は大丈夫と思わず、万が一の知識として知っておきましょう。

最低速度違反(正式名称:最低速度違反)の罰則は、普通車の場合、以下の通りです。

  • 違反点数:1点
  • 反則金:6,000円

最高速度違反(スピード違反)に比べると、点数も反則金も軽く感じるかもしれません。しかし、この数字だけを見て「大したことない」と考えるのは早計です。

前述の通り、最低速度違反が引き起こす最も重いペナルティは、取り返しのつかない「重大事故」です。6,000円の反則金よりも、事故を起こしてしまった場合の物理的・精神的・金銭的な損害の方が、比較にならないほど大きいことを絶対に忘れないでください。

初心者でも安心!高速道路を安全な速度で走るためのコツ

ここまで読んで、「ルールや危険性はわかったけど、やっぱり高速で走るのは怖い…」と感じている方もいるかもしれません。大丈夫です。ここでは、初心者の方でも安心して高速道路を走るための、具体的で実践的なコツをお伝えします。

まずは「走行車線」を基本に走ろう

高速道路には、複数の車線があります。一番左側の車線が「走行車線」、その右隣が「追い越し車線」です。(道路によっては走行車線が2本以上ある場合もあります)

運転の基本は、走行車線を走ることです。追い越し車線は、前の車を追い越す時だけ使い、追い越しが終わったらすぐに走行車線に戻りましょう。

特に初心者の方は、まずは一番左の走行車線を、落ち着いて走ることに集中してください。周囲の車も「この車線は普通に走る車線だな」と認識しているため、不必要に煽られたり、プレッシャーを感じたりすることが少なくなります。

周りの車の流れに乗ることを意識する

高速道路で最も安全な速度は、「その時の交通の流れに乗った速度」です。

一人だけ速すぎても、遅すぎても、流れを乱す危険な存在になってしまいます。

メーターだけをじっと見るのではなく、少し視野を広げて、前を走る車や、バックミラーに映る後ろの車が、大体どれくらいのスピードで走っているかを感じ取ってみましょう。

例えば、周りの車がだいたい時速80km〜90kmくらいで流れているようであれば、あなたもその速度に合わせて走るのが、最も安全でスムーズです。もちろん、法定の最高速度を超えない範囲で、というのが大前提です。

速度を維持するのが怖い…そんな時の対処法

そうは言っても、スピードを出し続けることに恐怖を感じることもあるでしょう。そんな時は、以下のことを試してみてください。

  • 視線を遠くに置く車のすぐ前のアスファルトを見るのではなく、できるだけ遠く、道路の先の方を見るように意識してください。視線が近いと、景色が速く流れるためスピードを過剰に感じてしまいますが、遠くを見ることで体感速度が和らぎ、精神的に楽になります。また、ハンドル操作も安定しやすくなります。
  • 十分な車間距離をとる前の車との距離をたっぷりとることも、安心感につながります。十分な距離があれば、前の車が急にブレーキを踏んでも、慌てずに対処できます。「前の車に離されちゃうかも」と焦る必要は全くありません。むしろ、車間距離を詰めすぎることの方がはるかに危険です。
  • 無理せず休憩をとるそれでも「怖い」「疲れた」と感じたら、絶対に無理をしないでください。高速道路には、一定の間隔でサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)が設置されています。次の休憩施設で一度高速を降り、気持ちを落ち着かせましょう。温かい飲み物を飲んだり、少し外の空気を吸ったりするだけでも、気分は大きく変わります。

合流や車線変更では、ためらわず加速する

高速道路の運転で、初心者の方が最も緊張する場面の一つが、インターチェンジやサービスエリアからの「合流」ではないでしょうか。

ここで一番やってはいけないのが、怖がって十分に加速しないまま本線に合流しようとすることです。

本線を走っている車は時速80km以上で走行しています。そこに時速40kmや50kmで合流しようとすれば、追突してくださいと言っているようなものです。

合流の手前にある「加速車線」は、その名の通り、本線の流れに乗る速度まで十分に加速するための助走路です。加速車線を最大限に使い、アクセルをしっかりと踏み込んで、本線を走る車と同じくらいの速度まで上げてから、スムーズに合流しましょう。これは車線変更の時も同じです。ためらわずに、周囲の流れに合わせて加速することが、あなた自身の安全を守ります。

まとめ

今回は、普段あまり意識することのない「最低速度」という高速道路のルールについて、詳しく解説してきました。

最後に、大切なポイントをもう一度確認しましょう。

  • 高速道路の本線には、原則として「時速50km」という最低速度が定められている。
  • 遅すぎる運転は、後続車からの追突事故や、交通渋滞の原因となり非常に危険。
  • 最低速度違反は、点数1点、反則金6,000円(普通車)の罰則がある。
  • 安全の秘訣は、走行車線を基本に、周りの車の流れに乗って走ること。
  • 怖いと感じたら無理せず休憩し、合流時はためらわずに加速することが重要。

高速道路は、正しくルールを理解して利用すれば、とても便利で快適な移動手段です。今回学んだ「最低速度」という考え方は、あなたを危険から守り、周りのドライバーへの配慮にもつながる、大切な安全運転の知識です。

「速すぎず、遅すぎず。」

この絶妙な速度感覚を身につけて、これからも自信を持って、安全なドライブを楽しんでください。

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