車の「下回り」洗浄の重要性、特に雪国では必須!

車の「下回り」洗浄の重要性、特に雪国では必須!

「洗車は定期的にしているけれど、そういえば車の下側なんて覗いたこともないな…」

運転免許を取ったばかりの方や、久しぶりにハンドルを握るペーパードライバーの方、そして毎日運転しているベテランドライバーの方も、このように思ったことはないでしょうか。

ピカピカに磨かれたボディは気持ちが良いものですが、実は車の安全性にとって本当に重要なのは、普段は目にすることのない「下回り」なのです。特に、雪が降る地域にお住まいの方にとっては、この下回りのケアが愛車の寿命、ひいては安全運転に直結すると言っても過言ではありません。

「どうして見えない場所がそんなに大事なの?」

「洗浄って、具体的にどうすればいいの?」

この記事では、そんな疑問に一つひとつ丁寧にお答えしていきます。なぜ下回り洗浄が必要なのか、その理由を知れば、きっとあなたも「次の休みに早速やってみよう!」と思えるはずです。この記事を読み終える頃には、あなたも愛車の見えない部分まで気遣える、ワンランク上のドライバーになっていることでしょう。

そもそも車の「下回り」ってどの部分?

まず、「下回り」と聞いて、具体的にどの部分を指すのかピンとこない方もいらっしゃるかもしれませんね。車の専門用語では「アンダーボディ」や「シャシー」などとも呼ばれますが、簡単に言えば「車を裏側から見たときの、地面に一番近い部分全体」のことです。

ここには、私たちが安全に運転するために欠かせない、非常に重要な部品がたくさん集まっています。いくつか代表的なものを挙げてみましょう。

箇条書き:

・シャシーフレーム:車の骨格となる部分です。人間の体でいえば背骨のような存在で、車全体の強度を支えています。

・サスペンション:路面からの衝撃を吸収し、乗り心地を良くしたり、タイヤを地面にしっかり接地させたりする役割があります。「足回り」とも呼ばれる重要なパーツです。

・マフラー:エンジンの排気ガスを外に排出し、その際の音を小さくする装置です。

・ブレーキ配管:ブレーキペダルを踏んだ力を、各タイヤのブレーキに伝えるためのオイルが通る管です。これが損傷するとブレーキが効かなくなる、命に関わる部品です。

・燃料タンクや配管:ガソリンなどの燃料を貯めておき、エンジンに送るための部品です。

いかがでしょうか。どれも車の「走る・曲がる・止まる」という基本的な性能を根底から支えている、まさに心臓部とも言える部品ばかりです。普段は見えない場所ですが、これらの部品が正常に機能して初めて、私たちは安心して車を運転することができるのです。

なぜ下回りの洗浄が必要なの?見えない場所の汚れが引き起こす深刻なトラブル

では、なぜこの重要な下回りをわざわざ洗浄する必要があるのでしょうか。それは、下回りが車の中で最も過酷な環境に晒されており、放置すると安全を脅かす深刻なトラブルを引き起こす可能性があるからです。

下回りを汚す手ごわい敵たち

車を走らせているだけで、下回りは様々な汚れに攻撃されています。

箇条書き:

・泥や砂、ホコリ:道路を走れば当然付着します。

・雨水や水たまり:雨の日の運転では、泥水が絶えず跳ね上げられます。

・潮風(塩害):海の近くに住んでいる方や、海沿いをドライブする方は要注意です。潮風には塩分が含まれています。

・融雪剤(塩化カルシウムなど):そして、これが最大の敵です。雪国の冬道に撒かれる白い粒々の正体で、雪や氷を溶かす働きがありますが、車にとっては非常に厄介な存在です。

これらの汚れが、なぜそれほど問題なのでしょうか。その答えは「錆(サビ)」にあります。

すべての元凶、「錆」の恐怖

鉄などの金属は、水と酸素に触れると化学反応を起こして錆びてしまいます。これを「酸化」と言います。車の部品の多くは金属でできているため、雨の中を走ったり、湿気の多い場所に駐車したりするだけでも、少しずつ錆は発生してしまうのです。

そして、この錆の進行を恐ろしいほど加速させるのが「塩分」です。先ほど挙げた「潮風」や「融雪剤」には、この塩分がたっぷりと含まれています。塩分が付着した金属は、何もない状態に比べて何倍ものスピードで錆が進行していきます。

下回りに泥や融雪剤が付着したまま放置すると、湿気がこもりやすくなり、常に塩水に浸されているような状態になります。これは、車の部品を意図的に錆びさせているようなものです。

では、実際に錆が進行すると、どのような恐ろしいことが起こるのでしょうか。

箇条書き:

・マフラーに穴が開く:錆で腐食したマフラーに穴が開くと、排気ガスが漏れて有毒なガスが車内に入り込む危険性があります。また、「バリバリ」という大きな騒音が発生し、整備不良で法律違反になることもあります。

・ブレーキが効かなくなる:ブレーキ配管が錆びて穴が開くと、そこからブレーキオイルが漏れ出してしまいます。そうなると、いくらブレーキペダルを踏んでも力が伝わらず、ブレーキが全く効かなくなるという、命に関わる最悪の事態に陥る可能性があります。

・走行が不安定になる:サスペンションの部品が錆びてしまうと、車の動きが不安定になったり、異音が発生したりします。最悪の場合、走行中に部品が折れてしまい、重大な事故につながることも考えられます。

・車の骨格が弱くなる:車の骨格であるシャシーフレームが錆びてしまうと、車全体の強度が低下します。そうなると、万が一の事故の際に乗員を守る性能が著しく落ちてしまう危険性があります。

このように、下回りの錆は、ただ見た目が悪くなるだけでなく、車の寿命を縮め、私たちの安全を直接的に脅かす、非常に深刻な問題なのです。

特に雪国で下回り洗浄が「必須」と言われる理由

日本全国どこでも下回り洗浄は重要ですが、特に雪国にお住まいの方にとっては「任意」ではなく「必須」のメンテナンスと言えます。その理由は、すでにお話しした「融雪剤」の存在です。

冬になると、雪国の道路には凍結を防ぐために大量の融雪剤が散布されます。この主成分は「塩化カルシウム」や「塩化ナトリウム」で、どちらも強力な塩分です。

雪道を走ると、タイヤが巻き上げた雪と融雪剤が混じり合ったシャーベット状の泥水が、下回りの隅々にまでびっしりと付着します。この状態は、まさに塩分を含んだ泥で車の下側をパックしているようなものです。乾きにくく、常に湿った状態が続くため、錆の進行にとってはこれ以上ないほど好都合な環境となってしまいます。

「雪国の車は寿命が短い」と聞いたことがあるかもしれませんが、その最大の原因が、この融雪剤による塩害なのです。厳しい冬を安全に越えるために必要な融雪剤ですが、車にとっては過酷な試練となります。だからこそ、雪国では他の地域以上に、意識的に下回りを洗浄して塩分を洗い流してあげることが、愛車を錆から守り、長く安全に乗り続けるための絶対条件となるのです。

いつ、どのくらいの頻度で洗浄すればいいの?最適なタイミング

「下回り洗浄の重要性は分かったけれど、じゃあ、いつやればいいの?」と思いますよね。洗浄の最適なタイミングは、お住まいの地域や車の使い方によって変わってきます。

雪国にお住まいの場合

雪国での下回り洗浄は、特にタイミングが重要です。

箇条書き:

・冬のシーズン中:融雪剤が散布されている間は、理想を言えば1ヶ月に1回程度、洗車をするついでに下回りも洗浄できると安心です。頻繁に走行する方ほど、こまめな洗浄が効果的です。

・冬の終わり(春先):ここが最も重要なタイミングです。雪が解け、道路から融雪剤がなくなる3月〜4月頃になったら、必ず徹底的に下回りを洗浄しましょう。これは、ワンシーズンかけて下回りに蓄積された塩分や汚れを、ここで一度完全にリセットするという意味合いがあります。これをやるかやらないかで、その後の錆の進行が大きく変わってきます。

沿岸部にお住まい、または海によく行く場合

海の近くは、潮風によって常に塩分にさらされています。

箇条書き:

・定期的な洗浄:特に意識していなくても塩分が付着するため、1〜2ヶ月に1回程度は下回りを洗浄することをおすすめします。

・台風の後:台風が過ぎ去った後は、空気中に多くの塩分が含まれています。車全体が塩でベタベタしていることもあるため、できるだけ早く洗車と下回り洗浄を行いましょう。

未舗装路(ダート)を走行した後

キャンプや釣りなどで、舗装されていない道路を走った後も洗浄のタイミングです。泥汚れは水分を保持しやすく、錆の原因となるため、早めに洗い流すのが理想です-

上記に当てはまらない一般的な地域の場合

雪も降らず、海からも遠い地域であれば、それほど神経質になる必要はありません。しかし、道路には見えない汚れがたくさんありますし、酸性雨なども錆の原因になります。

箇条書き:

・半年に1回〜1年に1回:定期的なメンテナンスとして、このくらいの頻度で洗浄しておくと、車の状態を良好に保つことができます。

・車検のタイミング:車検の際には、整備工場で下回りのスチーム洗浄を依頼できることが多いです。プロに点検してもらいながら洗浄もお願いできるので、手間もかからずおすすめです。

自分でもできる?プロに任せる?下回り洗浄の方法とそれぞれのメリット・デメリット

下回り洗浄には、自分で手軽にできるものから、専門の業者に依頼する本格的なものまで、いくつかの方法があります。それぞれの特徴を知って、ご自身の状況に合った方法を選びましょう。

方法1:ガソリンスタンドの洗車機を利用する

最も手軽で一般的なのが、ガソリンスタンドなどに設置されているドライブスルー洗車機を利用する方法です。

洗車機のメニューに「下部洗浄」や「下回り洗浄」といったオプションがあれば、それを選ぶだけでOKです。通常の洗車コースに数百円程度の追加料金で利用できる場合がほとんどです。洗車機のブラシが届かない車の下側を、床に設置されたノズルから高圧の水を噴射して洗い流してくれます。

箇条書き:

・メリット:

・とにかく手軽で時間がかからない。

・料金が安い。

・普段の洗車のついでに気軽にできる。

・デメリット:

・機械が自動で洗浄するため、細かい部分や頑固な汚れまでは落としきれないことがある。

・洗浄のクオリティは、洗車機の性能によって差がある。

軽い汚れを落としたり、定期的に塩分を洗い流したりするには十分な効果が期待できます。初心者の方でも簡単に試せる、最もハードルの低い方法と言えるでしょう。

方法2:コイン洗車場の高圧洗浄機を使う

「洗車機よりも、もっと自分の手でしっかり洗いたい」という方には、コイン洗車場に設置されている高圧洗浄機を使う方法がおすすめです。

ガンタイプのノズルの先から強力な水圧で水を噴射し、汚れを吹き飛ばします。

箇条書き:

・洗浄するときのポイント:

・安全のため、絶対に車の下に潜り込んではいけません。

・ノズルを地面すれすれに持ち、地面に水を当てて跳ね返った水流で下回りを洗うようなイメージで作業します。

・特に汚れが溜まりやすいタイヤハウス(タイヤのすぐ上の内側部分)や、サスペンションの部品周り、マフラーなどを狙って念入りに洗浄しましょう。

・水や泥が自分に跳ね返ってくるので、長靴やレインウェア(カッパ)など、濡れても良い服装で作業するのが必須です。

・メリット:

・洗車機では水が届きにくいような入り組んだ場所も、狙って洗浄することができる。

-自分の目で汚れを確認しながら、納得がいくまで作業できる。

・デメリット:

・手間と時間がかかる。

・服装の準備が必要で、汚れたり濡れたりする。

・慣れないうちは、どこを洗えば良いか分からず、洗浄ムラができてしまう可能性がある。

少し手間はかかりますが、その分、洗浄効果は高くなります。特に、冬の終わりに融雪剤を徹底的に落としたい場合などには有効な方法です。

方法3:プロ(ディーラーや整備工場、専門業者)に依頼する

最も確実で、洗浄効果が高いのが、ディーラーや自動車整備工場、カーケアの専門業者といったプロにお願いする方法です。

プロに依頼すると、専用の設備を使って徹底的に洗浄してくれます。一般的には、リフトで車体を持ち上げて、作業員が下回りの状態を目で直接確認しながら、高温・高圧のスチーム洗浄機などを使って隅々まで汚れを洗い落としてくれます。

箇条書き:

・メリット:

・洗浄クオリティが最も高く、自分では絶対に不可能なレベルで綺麗になる。

・プロの目で下回りの状態(錆の有無や部品の損傷など)をチェックしてもらえる。

・後述する「防錆コーティング」を同時に施工できる場合が多い。

・デメリット:

・費用が比較的高くなる(数千円から、メニューによっては数万円かかることも)。

・作業に時間がかかり、事前に予約が必要な場合が多い。

料金はかかりますが、その価値は十分にあります。特に、新車を購入した時や、車検のタイミング、雪国で厳しい冬を越した後など、ここぞという時にはプロの力を借りるのが最も安心で効果的です。

もっと錆から愛車を守るために!下回り洗浄とセットで行いたい「防錆コーティング」

下回り洗浄は、付着してしまった塩分や汚れを「洗い流す」ための対策です。これだけでも非常に効果的ですが、さらに一歩進んで、そもそも錆を「発生させにくくする」ための予防策も存在します。それが「防錆コーティング」です。

防錆コーティングとは?

防錆コーティングとは、その名の通り、錆の発生を防ぐための特殊な塗料(コーティング剤)を、車の下回りの金属部分に直接吹き付けて保護膜を作る作業のことです。「アンダーコート」や「シャシーブラック」などと呼ばれることもあります。

このコーティング剤が膜となって、水分や塩分、酸素などが直接金属に触れるのを防いでくれるため、錆の発生を強力に抑制することができます。また、走行中の飛び石などが下回りに当たってできる小さな傷からも、金属部分を保護してくれる効果もあります。

どんな人におすすめ?

防錆コーティングは、特に以下のような方に強くおすすめします。

箇条書き:

・新車を購入した方:まだ錆が全く発生していない、新車の綺麗な状態のうちに施工するのが最も効果的です。最初にしっかりガードしておくことで、長期間にわたって下回りを良い状態に保つことができます。

・雪国や沿岸部にお住まいの方:塩害のリスクが非常に高い地域では、防錆コーティングは必須の装備とさえ言えます。中古車を購入する際も、防錆処理がされているかどうかは重要なチェックポイントになります。

・一台の車を長く大切に乗りたい方:下回りの状態は、車の寿命に直結します。定期的なメンテナンス費用を考えても、最初にコーティングをしておくことで、結果的に大きな修理を防ぎ、トータルコストを抑えられる可能性があります。

防錆コーティングは、専門的な知識と設備が必要なため、ディーラーや整備工場、コーティング専門店などのプロに依頼して施工してもらうのが一般的です。効果の持続期間はコーティング剤の種類や車の使用環境によって異なりますが、一度施工すれば数年間は効果が続きます。

まとめ

今回は、普段あまり目にすることのない車の「下回り」の洗浄がいかに重要か、というテーマでお話ししてきました。最後に、この記事のポイントを振り返ってみましょう。

箇条書き:

・車の「下回り」には、安全運転を支える重要な部品が集中している。

・下回りの汚れを放置すると「錆」が発生し、マフラーの穴あきやブレーキの故障など、命に関わる深刻なトラブルを引き起こす危険がある。

・特に、雪道に撒かれる「融雪剤」は塩分を多く含み、錆を急激に進行させる最大の原因となるため、雪国では下回り洗浄が絶対に欠かせない。

・洗浄のタイミングは、雪国なら冬の終わり(春先)が最も重要。自分の住む地域や車の使い方に合わせて、定期的に行うことが大切。

・洗浄方法は、手軽な洗車機から、コイン洗車場での手洗い、最も効果的なプロへの依頼まで、様々な選択肢がある。

・洗浄と合わせて、錆の発生を予防する「防錆コーティング」を施工すると、さらに安心して愛車に乗り続けることができる。

私たちの目からは見えない場所で、車の下回りは常に過酷な環境に耐えながら、私たちの走りを支えてくれています。その見えない部分までしっかりと気遣い、ケアしてあげることこそ、ドライバーとしての責任であり、真の安全運転への第一歩と言えるのではないでしょうか。

この記事をきっかけに、ぜひ一度、ご自身の愛車の下回りに目を向けてみてください。そして、定期的な洗浄を習慣にして、大切な愛車とあなた自身の安全を、錆の脅威から守っていきましょう。

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