EV車(電気自動車)の購入を検討している、あるいは最近乗り始めたという方にとって、最初の関心事の一つが「充電」ではないでしょうか。ガソリン車でいうところの給油にあたるEVの充電は、日々のカーライフに欠かせない重要な要素です。
「充電ステーションってどこにあるの?」「種類がたくさんあってよくわからない」「使い方が難しそう…」といった不安や疑問を抱えている方も多いかもしれません。
しかし、ご安心ください。EVの充電は、種類と使い方さえ覚えてしまえば決して難しいものではありません。この記事では、EV初心者の方に向けて、充電ステーションの種類やそれぞれの使い方、料金、マナーなどを、網羅的に、そして分かりやすく解説していきます。
この記事を読めば、EVの充電に関する不安が解消され、快適なEVライフをスタートできるはずです。
まずは基本!EVの充電方法は大きく2種類
EVの充電方法は、大きく分けて「普通充電」と「急速充電」の2種類があります。この2つの最も大きな違いは、充電にかかる時間です。それぞれの特徴を理解し、シーンによって使い分けることが、EVを賢く乗りこなすための第一歩です。
充電方法 | 普通充電 | 急速充電 |
充電時間の目安 | 長い(数時間〜一晩) | 短い(30分程度) |
主な設置場所 | 自宅、マンション、商業施設、宿泊施設など | 高速道路SA/PA、道の駅、自動車ディーラーなど |
利用シーン | 基礎充電(自宅での夜間充電など)、目的地充電(買い物や食事中) | 継ぎ足し充電(長距離移動の途中) |
バッテリーへの影響 | 負荷が少なく、バッテリーに優しい | 負荷が比較的大きく、頻繁な使用は避けるのがベター |
まずはこの2つの大きな違いを念頭に、それぞれの詳細を見ていきましょう。
日々の基本となる「普通充電」
普通充電は、時間をかけてゆっくりと充電する方法です。EVの充電における基本であり、バッテリーへの負担が少ないため、日常的に最も利用される充電方法となります。
普通充電器の種類
普通充電に使う設備(普通充電器)には、主に以下の種類があります。
コンセントタイプ
EV専用に設置された、プラグを差し込むタイプの充電設備です。多くの場合、壁面に設置されています。電圧によって100Vと200Vの2種類があります。
- 100Vコンセント: 家庭用の一般的なコンセントと同じ形状ですが、そのまま使用できるわけではなく、EV充電用の配線工事が必要です。充電速度は非常に遅く、1時間の充電で走行できる距離は5〜10km程度と、緊急用と考えるのが良いでしょう。
- 200Vコンセント: EVの普通充電で最も標準的なタイプです。エアコンなどで使われるものと同じ200Vの電圧を利用し、1時間の充電で10〜20km程度走行できる電力を充電できます。後述する自宅充電では、この200Vコンセントの設置が一般的です。
ケーブル付き普通充電器
充電ステーション側にケーブルが備え付けられているタイプの充電器です。商業施設や公共の駐車場などによく設置されています。車載の充電ケーブルを取り出す必要がないため、手軽に充電できるのがメリットです。出力は3kWのものが主流ですが、最近では倍速で充電できる6kWのタイプも増えてきています。
- 3kW充電器: 1時間の充電で約15〜20km走行分を充電できます。
- 6kW充電器: 1時間の充電で約30〜40km走行分を充電できます。ショッピングや食事の間に、ある程度の電力を回復させたい場合に非常に便利です。ただし、6kWの性能をフルに活かすには、車両側も6kW充電に対応している必要があります。
普通充電ができる場所
普通充電は、私たちの生活の様々な場所に設置されています。
自宅(戸建て・マンション)
EVユーザーにとって最も重要な充電拠点が「自宅」です。これを「基礎充電」と呼びます。夜、寝ている間に充電しておけば、翌朝には満充電の状態で出発できるため、ガソリンスタンドに行く手間が一切なくなります。
戸建ての場合は、駐車場に200Vのコンセントやケーブル付き充電器を設置する工事を行います。マンションなどの集合住宅でも、近年はEV充電設備付きの物件が増えており、既存のマンションでも管理組合の許可を得て設置できるケースが増えています。
商業施設(ショッピングモール、スーパーなど)
買い物をしている間に充電できる「目的地充電」の代表例です。多くの商業施設では、駐車料金とは別に充電料金が設定されているか、あるいは無料で提供されていることもあります。駐車場の便利な場所に設置されていることが多く、買い物のついでに気軽に充電できるのが魅力です。
宿泊施設(ホテル、旅館)
旅行先や出張先でも普通充電は活躍します。宿泊している間に車を充電しておけるため、翌日の移動も安心です。EVでの旅行を計画する際は、充電設備のある宿泊施設を選ぶのがおすすめです。
コインパーキング、公共施設など
都市部のコインパーキングや、市役所などの公共施設にも普通充電器が設置されていることがあります。外出先で少しだけ駐車する時間を利用して、こまめに充電することも可能です。
普通充電の使い方(公共の充電器)
自宅以外で普通充電器を利用する際の、一般的な使い方をステップごとに解説します。
- 充電器の前にクルマを停める充電ケーブルがクルマの充電ポートに届く位置に、正しく駐車します。
- 充電カードやアプリで認証する多くの公共の充電器は、利用するために認証が必要です。
- 充電カードの場合: 充電器の指定された部分に、専用の充電カード(後述)をタッチします。
- スマートフォンのアプリの場合: 充電器に表示されているQRコードを読み取ったり、アプリ上で充電器の番号を入力したりして認証を行います。
- 充電コネクタをクルマに接続する
- ケーブル付き充電器の場合: 充電器に備え付けられている充電コネクタを取り、クルマの充電ポートのフタを開けて、しっかりと奥まで差し込みます。「カチッ」とロックされる音がするのを確認しましょう。
- コンセントタイプの場合: 車に積んである自分の充電ケーブルを取り出し、片方を充電器のコンセントに、もう片方をクルマの充電ポートに接続します。
- 充電を開始するコネクタが正しく接続されると、多くの場合、自動で充電が開始されます。充電器によっては「充電開始」ボタンを押す必要がある場合もあります。充電が始まると、クルマのメーターパネルや充電器のランプで充電中の状態が示されます。
- 充電を終了する
- 充電カードの場合: 再度、充電カードをタッチすると充電が終了し、コネクタのロックが解除されます。
- アプリの場合: アプリ上で「充電停止」の操作を行います。
- クルマ側で充電停止の操作ができる車種もあります。
- コネクタを抜き、片付けるコネクタをクルマから抜き、クルマの充電ポートのフタを閉めます。ケーブル付き充電器の場合は、ケーブルを元の位置にきちんと収納しましょう。コンセントタイプの場合は、自分のケーブルを忘れずに片付けます。
- 速やかにクルマを移動させる充電が完了したら、その場に駐車し続けるのはマナー違反です。次に充電したい人が待っている可能性があるので、速やかにクルマを移動させましょう。
長距離移動の強い味方「急速充電」
急速充電は、その名の通り、普通充電よりもはるかに短い時間で多くの電力を充電できる方法です。高出力の直流電流を直接バッテリーに送ることで、スピーディーな充電を実現します。
急速充電器の種類(規格)
日本の急速充電器の規格は、ほぼ「CHAdeMO(チャデモ)」に統一されています。海外では「CCS」や、テスラ独自の「スーパーチャージャー」といった規格がありますが、日本国内でEVに乗る上では、まずは「CHAdeMO」という名前を覚えておけば問題ありません。
CHAdeMO(チャデモ):
日本が主導して開発した急速充電規格です。国内のほとんどのEVと、サービスエリアや道の駅などに設置されている急速充電器がこの規格に対応しています。コネクタの形状が特徴的で、少し大きく重さもあります。
急速充電器は、その出力(kW数)によって充電スピードが異なります。
- 低出力(〜40kW): 初期に設置された充電器に多いタイプです。
- 中出力(50kW):現在、最も普及している標準的なタイプです。30分間の充電で、バッテリー容量の80%程度まで充電できる車種が多いです(※バッテリー容量や車両の状態によります)。
- 高出力(90kW以上): 最近、高速道路などを中心に設置が進んでいる新しいタイプです。対応している車両であれば、50kWタイプよりもさらに短い時間で充電が可能です。
急速充電ができる場所
急速充電器は、主に移動の途中で立ち寄る場所に設置されています。
高速道路のサービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)
EVで長距離ドライブをする際の、最も重要な充電拠点です。ほとんどのSA・PAに設置されており、トイレ休憩や食事のついでに充電することができます。
道の駅
一般道のドライブにおける重要な充電スポットです。地域の特産品を見たり、休憩したりしながら充電できるため、旅行の楽しみも広がります。
自動車ディーラー
各自動車メーカーのディーラーにも急速充電器が設置されています。基本的にはそのメーカーの車が優先ですが、多くの場所で他メーカーのEVも受け入れています。営業時間内のみ利用可能など、独自のルールがある場合が多いので事前に確認すると良いでしょう。
コンビニエンスストア
一部のコンビニエンスストアの駐車場にも設置が進んでいます。24時間利用できる場所が多く、いざという時に頼りになる存在です。
商業施設
大型のショッピングモールなど、滞在時間が長くなる施設では、普通充電器に加えて急速充電器が設置されている場合もあります。
急速充電の使い方
急速充電器は出力が大きい分、普通充電器よりも操作が少し複雑に感じられるかもしれませんが、基本的な流れは同じです。画面の案内に従えば誰でも簡単に操作できます。
- 充電器の前にクルマを停める急速充電器のケーブルは太くて重く、あまり長くないことが多いです。クルマの充電ポートの位置を確認し、ケーブルが無理なく届く位置にしっかりと停めましょう。
- 充電器の操作パネルで設定を行う多くの急速充電器には、タッチパネル式の液晶画面が付いています。
- 支払い方法の選択: まず、支払い方法を選択します。多くの場合、「充電カード」か「クレジットカード(都度払い)」を選びます。
- 充電時間の選択: 次に充電時間を選択します。一般的には「15分」や「30分」などが選択肢として表示されます。多くの公共の急速充電器では、1回の利用時間が最大30分に設定されています。これは、充電待ちの他の利用者に配慮するためのルールです。
- 認証を行う画面の案内に従い、充電カードをタッチするか、クレジットカードを挿入・読み取りさせて認証を完了させます。
- 充電コネクタをクルマに接続する
- 充電器の太いコネクタを取り、クルマの急速充電ポート(普通充電とは別のポートになっている車種が多い)のフタを開けて、奥までしっかりと差し込みます。
- 普通充電のコネクタより重いので、両手でしっかりと持ちましょう。
- 正しく接続されると、「カチッ」と大きな音がしてコネクタがロックされます。
- 充電を開始するコネクタがロックされたことを確認したら、充電器の「充電開始」ボタンを押します。充電が始まると、充電器のファンが「ゴォー」という大きな音を立てて作動し始めますが、これは正常な動作ですので驚かないでください。充電中は、充電器の画面に残り時間や現在の充電量などが表示されます。
- 充電終了を待つ設定した時間が経過すると、充電は自動的に終了します。もし途中で止めたい場合は、充電器の「充電終了」ボタンを押します。注意: 急速充電中は、感電の危険や機器の故障を防ぐため、むやみにコネクタを触ったり、クルマから離れすぎたりしないようにしましょう。基本的には、車内やその周辺で待機します。
- コネクタを抜き、片付ける充電が終了したら、コネクタのロック解除ボタンを押しながら、コネクタをクルマから引き抜きます。重いので落とさないように注意し、元の位置にしっかりと収納してください。
- 速やかにクルマを移動させるこれは普通充電と同様に非常に重要なマナーです。特に急速充電は、長距離移動中のドライバーが「急いで」利用することが多いです。充電が終わったら、次の人のために速やかにスペースを空けましょう。
充電ステーションの探し方
いざ充電が必要になった時、どこに充電ステーションがあるのか分からなければ意味がありません。幸い、充電ステーションを探す方法はたくさんあります。
- 車載ナビゲーションシステム: 最近のEVには、充電ステーションを検索できるナビが標準装備されています。現在地周辺の充電器はもちろん、目的地までの経路上にある充電器を探すこともできます。満空情報(現在使用中かどうか)を表示してくれるナビもあります。
- スマートフォンアプリ: EVユーザー必須のツールです。「EVsmart」や「GoGoEV」といった専用アプリが人気です。地図上で充電ステーションの場所を探せるだけでなく、充電器の種類(普通/急速)、出力、料金、利用者の口コミなどを詳細に確認できます。満空情報もリアルタイムで更新されるものが多く、非常に便利です。
- ウェブサイト: 各アプリはウェブサイト版も提供しており、PCで事前に旅行の計画を立てる際などに役立ちます。
知っておくと便利!「充電カード」の世界
公共の充電ステーションを利用する際、毎回クレジットカードで支払うことも可能ですが(ビジター利用)、EVユーザーの多くは「充電カード」を持っています。
充電カードとは?
充電カードは、提携している全国の充電ステーションで、認証と支払いをスムーズに行うためのカードです。ガソリンスタンドの会員カードやクレジットカードのようなものとイメージしてください。
充電カードのメリット
- 利便性: カードをかざすだけで認証が完了するため、毎回クレジットカード情報を入力する手間が省けます。
- 料金プラン: カード発行会社によって様々な料金プランが用意されています。月額基本料金を支払うことで、充電料金(分単位またはkWh単位)が割安になるプランが多く、頻繁に外で充電する方ほどお得になります。
充電カードの種類
充電カードは、主に自動車メーカーが発行するものと、充電インフラサービス会社が発行するものがあります。
- 自動車メーカー発行のカード: 日産、トヨタ、ホンダなど、各自動車メーカーが自社のEVオーナー向けに発行しているカードです。多くは「e-Mobility Power(eMP)」というネットワークと提携しています。
- e-Mobility Power(eMP)カード: eMPは、日本のEV充電ネットワークの中核を担う会社です。高速道路やコンビニ、商業施設など、全国の多くの充電器がこのeMPのネットワークに接続されています。自動車メーカーのカードを持っていれば、eMPのマークがある充電器を共通で利用できる、という仕組みです。
どのカードを選ぶかは、ご自身のライフスタイル(月々の走行距離、外での充電頻度など)によって異なります。購入したEVのディーラーで相談に乗ってもらうのが一番確実でしょう。
みんなが気持ちよく使うための充電マナー
EVが普及するにつれて、充電ステーションでのマナーの重要性が高まっています。充電ステーションは限られた公共の設備です。全てのEVユーザーが気持ちよく利用できるよう、以下の点を心掛けましょう。
- 充電が終わったら、すぐに移動する: 最も重要なマナーです。充電完了後もスペースを占有し続ける「放置駐車」は、次に利用したい人にとって大変な迷惑となります。
- 急速充電は30分を目安に: 急速充電は、あくまで「継ぎ足し」のためのものです。満充電に近づくと充電スピードが落ちるため、80%程度を目安に切り上げ、次の人に譲るのがスマートな使い方です。
- ケーブルは丁寧に扱う: 充電ケーブルを地面に引きずったり、乱暴に扱ったりすると、断線や故障の原因になります。使い終わったら、きちんと元の位置にまとめましょう。
- 順番を守る: 充電待ちの車がいる場合は、きちんと列に並び、順番を守りましょう。到着順が分かるように、ハザードを点けて待つなどの配慮も有効です。
- ガソリン車は駐車しない: 充電スペースはEVのための場所です。「EV専用」と表示されているスペースに、ガソリン車や、充電しないEVが駐車することは絶対にやめましょう。
まとめ:計画的な充電で快適なEVライフを!
EVの充電ステーションには、自宅や目的地でゆっくり充電する「普通充電」と、移動の途中で素早く充電する「急速充電」の2種類があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身のカーライフに合わせて賢く使い分けることが、EVを快適に乗りこなす秘訣です。
最初は覚えることが多くて少し戸惑うかもしれませんが、数回使えばすぐに慣れるはずです。スマートフォンアプリなどを活用して計画的に充電を行い、マナーを守って、スマートで快適なEVライフをお楽しみください。