赤信号進入の救急車と青信号進入のクルマとの優劣は?

赤信号進入の救急車と青信号進入のクルマとの優劣は?

日常の運転では、交差点でいきなりサイレンを鳴らした救急車が現れることがあります。
自車の信号は「青」、しかし救急車は「赤」を無視して交差点に進入してくる――そんな場面で「私は青信号なのだから進んで良いのか、それとも止まるべきか」と迷った経験はないでしょうか。
本記事では、初心者ドライバーの方でも理解しやすいように、救急車(緊急自動車)の優先権と一般車両がとるべき具体的な行動を、道路交通法の根拠や罰則とともに丁寧に解説します。
「いざ」という瞬間に迷わず安全な判断ができるよう、ぜひ最後までお読みください。

緊急自動車の「優先通行権」とは

道路交通法第40条は、サイレンを吹鳴し赤色灯を点灯させて緊急走行中の車両(救急車・消防車・パトカーなど)に「優先通行権」を認めています。
具体的には、交差点およびその付近で緊急自動車が接近してきた場合、ほかの車両や路面電車は交差点を避けて左側に寄り、停止または進路を譲らなければなりません。
この規定は「信号表示より優先」であることがポイントです。つまり、赤信号を無視して進む権限が緊急自動車に与えられている一方、一般車両は青信号であっても進行を優先できません。

赤信号を無視できる?救急車の通行特例

緊急自動車が赤信号を通過できるのは法的に認められた「交通特例」によるものです。とはいえ、救急車も完全に自由に突入して良いわけではなく、次の三つの条件がセットになっています。

  1. 赤色灯の点灯とサイレンの吹鳴(周囲に緊急走行を知らせる義務)
  2. 徐行義務(赤信号交差点へ進入する際は必ず徐行し、安全確認を徹底)
  3. 他の交通に著しい危険を生じさせない(安全確保が前提条件)

救急車側が上記を怠って衝突事故を起こした場合、過失の度合いが問われるのはもちろん、状況次第では救急車側に損害賠償責任が発生します。緊急走行中だからといって無条件で免責されるわけではない点を覚えておきましょう。

一般ドライバーが守るべき基本ルール

救急車が見えたら――その瞬間に取るべき行動はシンプルです。

  1. ルームミラー・サイドミラーで位置を把握
    音だけでなく、どの方向から接近しているのかを確認しましょう。
  2. ウインカーと減速で周囲に合図
    可能な限り左側へ寄せ、後続車にも自分の意図が伝わるようウインカーを出して減速します。
  3. 安全な場所で停止
    交差点の中ではなく、「交差点を避けて」停止が原則です。後続車に追突されないよう、急ブレーキを避けながら確実に止まります。
  4. 再発進は周囲を確認してから
    救急車通過直後、二台目・三台目の消防車が続くケースも少なくありません。ミラーや目視で安全を確認してから車線に戻りましょう。

シチュエーション別:交差点での具体的判断例

①青信号で直進する最中に救急車が赤信号から進入してきた場合

青信号は本来「進行して良い」ことを示しますが、緊急自動車の優先通行権が上位にあるため、直進車は進行を一時停止して道を譲らなければなりません。交差点中央で急停止するとかえって危険なので、余裕があるなら停止線手前で止まるか、すでに交差点に進入している場合はハンドル操作を最小限にして速やかに抜け、左側に寄せて停止するのが安全です。
もし後方から救急車が接近して自車の直進を遮る形になるときは、いったんブレーキランプを点灯させ減速し、後方車に注意喚起を行うとともに、交差点手前で停止する選択肢を優先してください。

②右折待機中(青信号・対向車あり)の場合

交差点中央で右折待機中に救急車が赤信号側から交差点へ進入しようとしている――そんな場面では、交差点中央に停止したまま動かないのが基本です。
理由:ハンドルを切って後退すると後続車や歩行者と接触するリスクが高く、かえって通行を妨げる結果になりやすいからです。救急車は徐行義務のもとで直進または右左折してきます。自車が無理に移動するより、「動かずにスペースを確保する」方がスムーズで安全なのです。もちろん、救急車の動きを妨げると判断したら、そっとハンドルを真っ直ぐに戻し少し前へ出るなど、最小限の調整でスペースを譲りましょう。

③矢印信号が出ている場合

矢印信号は通常の信号機より優先度が高い指示ですが、緊急自動車>矢印信号>通常信号の順序で優先度が決まっています。矢印が出ていても、救急車が赤信号から進入してくる場合は必ず救急車を優先し、指示に従った通行はできません。矢印だからといって「自分が優先」と勘違いすると重大事故につながりますので注意してください。

④片側二車線以上の道路で左側車線を走行中の場合

片側二~三車線の市街地道路では、救急車が「もっとも通行しやすい車線」(多くは中央車線)を選ぶ傾向にあります。左側走行中のドライバーは、路肩に停車して路上を空けるとともに、左折車や歩行者との接触に気をつけましょう。右側車線走行中の車は可能であれば車線をさらに右へ変更するか、前後車間をとってブロックしない位置で減速・停止するのがスマートです。

なぜ「青信号でも止まる」ことが大切なのか

初心者の方は「信号の色=絶対的命令」と覚えがちですが、道路交通法は「緊急事態を救命するための柔軟性」を優先に掲げています。救急車は人命を左右する秒単位の活動を行うため、一般車がわずか数秒間止まるだけで救える命があります。
青信号でも停止する行為はルール違反ではなく、むしろ道路交通法に合致した最善の協力行動だと理解しましょう。

もし進路を譲らなかったら?―罰則と行政処分

緊急自動車の進行を妨害した場合、道路交通法第120条第1項第2号により5万円以下の罰金が科されます。
また、行政処分の違反点数は1点で、累積点数によっては免許停止のリスクも発生します。反則金(軽微な場合の青切符)は普通車で 6,000円 程度が一般的ですが、救急車妨害の重大性によっては告発(赤切符)となり刑事裁判に発展する可能性も否定できません。

誤りやすいポイントと対策

①サイレンが聞こえた時点で進路変更してしまう

音が不意に聞こえた瞬間にハザードを出して急ハンドル――これは追突事故の危険が高まります。ミラーで方向を確認し、まず減速・後続車に合図を行ってから安全に寄せてください。

②救急車の後ろに追随して交差点を突破

「救急車の後ろなら赤信号でも行ける」という誤認は非常に危険で、交差点内の二次衝突を誘発します。道交法上も違反となるため、救急車が完全に通過した後、自分の信号が青になるまで停止するのが正解です。

③片側一車線の山道や橋梁区間

すぐに寄せるスペースがない場合には、先にある退避所を見つけた時点でウインカーを出し、減速して救急車に合図を送りましょう。対向車線が空いていると判断して急な右寄せを行うと、正面衝突のリスクがあります。

安全意識を高めるためのコツ

  • 普段からバックミラーとサイドミラーを「5〜8秒ごと」に確認
    接近車両の早期発見につながり、心の余裕が生まれます。
  • 車内での音量管理
    大音量の音楽再生やイヤホン着用はサイレンの聞き漏らし原因になります。
  • ナビ・スマホの使用は信号待ちで
    運転中の注視は状況判断を遅らせ、緊急自動車の接近にも気づきにくくなります。
  • 「譲られた側」の立場を想像
    救急隊員や患者の命を思い浮かべると、自然と協力的な行動がとれるようになります。

高速道路での注意点

高速道路では路肩走行が基本です。ただし、渋滞時には「避難用スペース(非常駐車帯)」車線間の走行(いわゆるランブルストリップス付近)で追い越す場合もあります。ドライバーは以下の手順を徹底してください。

  1. ハザードを点灯しゆっくり減速
  2. 走行車線へ寄せて停車?追越車線走行中なら可能な限り左車線へ
  3. 救急車が通過後、後続の緊急車両がないか確認してから再発進

救急車と歩行者・自転車の関係

歩行者・自転車も救急車に対しては通行を妨げない義務があります。横断歩道を渡る最中にサイレンが聞こえた場合は、立ち止まって周囲を確認し、救急車が優先することを意識しましょう。ドライバーとしては、歩行者がパニックで飛び出すリスクを考慮し、速度をさらに落として注意深く通過させる必要があります。

ドラレコ映像で学ぶ「ヒヤリ・ハット」事例集

自動車学校や安全運転講習では、実際のドラレコ映像を用いて「ヒヤリ・ハット」場面を学習することがあります。自宅でもネット上の教材や各自治体の交通安全サイトで無料視聴できるケースがありますので、実映像を見て具体的な距離感・タイミングを体感すると理解が深まります。
特に下記のポイントを意識して映像を確認すると効果的です。

  • 救急車のサイレンが聞こえてから視認するまでの時間差
  • 交差点進入前に徐行するか一時停止するかの判断
  • 救急車通過後の再発進タイミング

まとめ

救急車と青信号進入の一般車両――どちらが優先かという問いの答えは明快です。
「緊急自動車が常に優先」という大原則のもと、一般ドライバーは信号表示よりも救急車の通行を最優先しなければなりません。
たとえ自分の信号が青でも、周囲を確認し、安全な場所で停止して道を譲る行動が、結果的にすべての交通参加者――患者、救急隊員、ほかのドライバー、歩行者――の命を守ることにつながります。
今日ご紹介したポイントを運転前にもう一度イメージトレーニングし、「いざ」という瞬間に迷わず最善の判断ができるドライバーを目指しましょう。

安全運転で快適なカーライフをお過ごしください。

安全運転カテゴリの最新記事