デジタコとドライブレコーダーの違いとは?

デジタコとドライブレコーダーの違いとは?

近年、物流業界では運行記録を自動的に残すデジタコ(デジタルタコグラフ)が注目されている一方、一般乗用車やタクシーなどではドライブレコーダー(ドラレコ)も普及が進んでいます。ソニー損保の調査では「すでにドライブレコーダーが付いている」または「付けたいと思う」という回答が87.2%に達し、安全運転や事故の証拠確保の手段として広く関心が寄せられています​autobacs.com。一方、デジタコは道路運送車両法上の「運行記録計」として、大型バスやトラックなど一定の車両に装着が義務付けられており​ja.wikipedia.orgja.wikipedia.org、両者は用途や機能が大きく異なります。本記事では初心者向けに「デジタコ」と「ドライブレコーダー」の概要とその違い、導入メリット、選び方のポイントを解説します。

デジタコとは?

デジタコ(デジタルタコグラフ)とは、トラックやバスなどに搭載される車両の運行データを自動記録する装置です。従来のアナログ式タコグラフでは専用の記録紙(タコチャート)が用いられていましたが、デジタルタコグラフは各種データを電子的に記録します​ja.wikipedia.org。1998年からは国土交通省の型式認定対象となり​ja.wikipedia.org、記録媒体はメモリーカードなどが使われます。具体的には、走行速度や運転時間、走行距離、エンジン回転数などの基本データに加えて、急加速・急減速の検知、ドアの開閉、GPSによる位置情報、実車・空車の走行区間、燃料の給油量・充填量、荷物の重量・数量、停車中の積み下ろし・待機・休憩といった多彩なデータを記録できる機種もあります​ja.wikipedia.org。これらの記録によって、車両の稼働状況やドライバーの運転行動を客観的に把握することが可能です。

また、日本では1962年から順次デジタコ装着義務の対象車両が拡大されてきました。現在では、貸切バスや長距離路線バス、一定規模以上のトラックなど多くの事業用車両にデジタコの装着が法令で義務付けられています​ja.wikipedia.org。近年は安全対策として新たに、貸切バス車両にも2024年4月からデジタコ使用が義務化されています​ja.wikipedia.org。デジタコによってドライバーの労働時間管理や速度管理を徹底することで、法令遵守や事故防止を図ることが目的です。

ドライブレコーダーとは?

ドライブレコーダー(ドラレコ)は、車両の前方(あるいは前後・車内など)の映像を記録する小型カメラ+録画機能です。一般的にはフロントガラスやダッシュボードに取り付けられ、常時または衝撃検知時に車載のメモリーカードに映像・音声を記録します。近年は手軽に購入できる市販モデルが増え、自宅でDIY取り付けをするユーザーも多くなりました​autobacs.com。高解像度カメラや広角レンズを搭載したモデルでは、周囲の交通状況を広範囲で鮮明に撮影できます。また、GPSやGセンサー、ナイトビジョン、Wi-Fi通信などの機能を備えた製品もあり、録画映像に走行速度や位置情報を重ねて記録することも可能です。

ドライブレコーダーの主な目的は、万一の事故やトラブル発生時にその状況を映像で保存・確認できる点にあります。記録された映像は「いつ・どこで・どのように」事故が起きたかを客観的に示す証拠となり、保険請求や警察の調査で役立ちます。最近はあおり運転が社会問題となったこともあり、ドラレコによって危険運転を抑止したり、運転行動を安全指導に活用する企業も増えています​aspicjapan.org。なお、車検や道路交通の保安基準では、フロントガラスへのカメラ取り付け位置にも規制があります。具体的には、ドライブレコーダーはフロントガラスの上端から20%以内の範囲に貼り付ける必要があり、この範囲外では車検に通らないため注意が必要です​autobacs.com

デジタコとドライブレコーダーの違い

デジタコとドラレコは、記録対象や目的、法的義務などが大きく異なります。主な違いは以下の通りです。

  • 記録内容の違い: デジタコは走行速度や走行距離、運転時間、エンジン回転数といった運転データを記録します​ja.wikipedia.org。運転中の加速や減速、ドアの開閉、車載GPSによる位置情報、積載状態など、多岐にわたるデータを長期間にわたって保存できます​ja.wikipedia.org。一方、ドライブレコーダーは主に車両の前方(前後や車内も含む)の映像と音声を記録します​aspicjapan.org。映像は一定時間で自動上書き(ループ)されることが多く、事故発生前後の数分間を重視して保存します。
  • 目的・用途の違い: デジタコは運行管理や法令遵守が目的であり、ドライバーの勤務時間や走行速度を適切に管理するために使われます​ja.wikipedia.org。大型車両では法律で装着が義務付けられており、安全管理や労務管理の効率化が図れます​ja.wikipedia.orgja.wikipedia.org。一方、ドラレコは交通事故や危険運転の記録・証拠確保が主な目的です。撮影映像は事故の状況確認やあおり運転の抑止、安全運転指導用教材として活用されます​aspicjapan.org
  • 法的規制の違い: デジタコは道路運送法や運輸規則で一定条件の車両への装着が義務付けられています​ja.wikipedia.orgja.wikipedia.org。例えば大型トラックや長距離バスなどは法律でデジタコ(運行記録計)の設置が求められ、違反すると罰則の対象となります。これに対し、ドライブレコーダーは現在のところ一般車両への装着義務はありません。一部の商用車では安全対策として推奨されるケースがありますが、法令上の義務ではなく、ユーザーの任意導入に留まります。
  • 設置場所の違い: デジタコ本体は通常、運転席周りの計器盤近くに固定され、車両の電源系統や速度センサーにつないで使用します。一方、ドラレコはフロントガラスやダッシュボードに取り付けられ、車外の映像を広く撮影できる位置に設置します。フロントガラス取り付け時は前述の通り上部20%以内に設置しなければなりません​autobacs.com

デジタコの導入メリット

デジタコを導入すると、運送事業者にとって以下のようなメリットがあります。

  • 法令遵守とリスク管理: 法律で装着が義務付けられている場合は導入自体が必須ですが、仮に任意の場合でも、運転時間や休憩時間を確実に管理できます。運行管理者は速度や連続運転時間をデータで確認し、速度超過や長時間連続運転の予防指導が可能になります​ja.wikipedia.org。これにより、過労運転や法令違反による罰則リスクを軽減できます。
  • 安全運転教育: デジタコに記録されたデータは客観的な運転履歴となり、ドライバー自身の運転傾向を把握する材料になります。運転者は急加減速の回数や平均速度などを振り返ることで、安全運転意識を高めることができます​ja.wikipedia.org。また、異なるドライバーの波形パターンから運転クセの違いが分かるため、適切な指導・評価にも役立ちます。
  • 労務管理の効率化: 運行記録から正確な労働時間や休憩時間の実績を自動で把握できるため、勤怠管理が簡素化します​ja.wikipedia.org。従来は運転日報や走行距離の自己申告に依存していた部分をデータで補完でき、事務作業の負担が軽減します​ja.wikipedia.org
  • 事故調査やクレーム対応: デジタコは電子データで記録を残すため改ざんが難しく、事故の際には客観的な運転状況の証拠となります。例えば衝突前の速度が明確に把握できるため、保険会社との過失割合の判断資料にもなり得ます​ja.wikipedia.org
  • 運行コストの削減: テレマティクス機能付きのデジタコでは、車両と事業所間でデータ通信が可能になり、取得した情報を基に配車やルート計画を最適化できます​ja.wikipedia.org。最適ルートの検討や臨機応変な配車によって無駄な走行が減り、燃料費や人件費などの運行コスト削減が期待できます​ja.wikipedia.org

ドライブレコーダーの導入メリット

ドライブレコーダーを装着することで、以下のようなメリットがあります。

  • 事故時の証拠映像: 交通事故やあおり運転などの危険行為が発生した際、ドラレコがその瞬間の映像・音声を録画しています。記録された映像は事故発生状況の客観的な証拠となり、警察や保険会社への説明がスムーズになります​aspicjapan.org。事故の過失割合争いでも、映像があれば自身の無実を証明しやすくなる場合があります。
  • 安全運転指導・抑止: ドラレコにより危険運転の映像を教材として共有できるため、安全教育に役立ちます​aspicjapan.org。また、車載カメラがあることで運転者自身が安全運転を意識するようになり、煽り運転や居眠り運転など重大事故につながる危険行為の抑止効果が期待できます​aspicjapan.org
  • 安心感の向上: 映像記録があることで万が一の際も証拠が残り、ドライバーや家族は精神的な安心感を得られます。実際、ドライブレコーダー装着者からは「事故時に録画があれば安心」という声が多く、装着率も年々上昇しています​autobacs.com
  • 駐車中のトラブル対応: 多くのドライブレコーダーは衝撃検知機能(Gセンサー)や駐車監視モードを備えており、エンジン停止中の当て逃げやいたずらも記録可能です。駐車場でのトラブル防止にも役立ちます(※機種により機能差があります)。

それぞれの選び方のポイント

  • デジタコを選ぶ際のポイント: 法令を満たす認定型式の製品を選ぶことが最優先です。日本ではデジタコは国交省の型式認定対象であり​ja.wikipedia.org、認定済みであることを必ず確認しましょう。通信機能付きモデルならリアルタイムでデータを管理でき、運行管理の効率化につながります。導入時には車両への配線工事やメモリーカードの運用が必要で、機器自体の価格も高額になりやすい点には注意が必要です​aspicjapan.org
  • ドライブレコーダーを選ぶ際のポイント: 必要とする機能や撮影範囲を明確にして選びます。前方映像だけで十分ならシンプルなフロントカメラ型でよいですが、後方や車内も録画したい場合はデュアルカメラモデルを検討します。解像度はフルHD(1080p)以上を目安にすると夜間の映像も鮮明です。画角も視界を広く撮影できる広角レンズ搭載機が安心です。駐車監視機能やGPS(速度・位置記録)などのオプションも、必要に応じて選択します。なお、ドライブレコーダーはフロントガラスの上端20%以内に取り付ける必要があるため​autobacs.com、購入前に取り付け位置の空きスペースを確認してください。
  • 導入コストとサポート: 両者とも導入費用やサポート体制も選定の重要要素です。デジタコは車両への組み込みが必要で設置コストがかかるため、専門業者による見積もりをとりましょう。ドラレコは比較的安価で簡単に装着できますが、信頼性や保証内容にも注意し、長期使用に耐える製品を選ぶと安心です。

まとめ

デジタコ(デジタルタコグラフ)とドライブレコーダーは、どちらも運転・走行を記録する装置ですが、その用途や機能、法的扱いには大きな違いがあります。デジタコはトラック・バス向けの運行管理機器で、速度・時間・距離など多様な運行データを自動で記録し、法令遵守や安全管理に役立ちます​ja.wikipedia.orgja.wikipedia.org。一方、ドライブレコーダーは主に映像を録画するもので、事故の証拠確保やあおり運転防止を目的としています​aspicjapan.orgautobacs.com。両者は補完的な関係にあり、大規模な物流事業者では両方を活用して運転管理と安全確保を両立させるケースもあります。記事で紹介した特徴やメリット、選び方のポイントを参考にし、利用目的に合った機器を選んで導入検討してください。

参考資料: 運行記録計(タコグラフ)に関する法令や技術情報​ja.wikipedia.orgja.wikipedia.orgja.wikipedia.orgja.wikipedia.org、ドライブレコーダーの機能・メリット解説記事​aspicjapan.orgautobacs.comautobacs.com

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