ディーゼル車とは?ガソリン車との違い・メリット・デメリット、選び方と税制優遇を徹底解説

ディーゼル車とは?ガソリン車との違い・メリット・デメリット、選び方と税制優遇を徹底解説

ディーゼル車は、かつて排出ガス規制の影響で国内乗用車市場から姿を消しかけたものの、現在は技術の進歩によって大きく進化し、再び注目を集めています。軽油を燃料とするディーゼルエンジンは、燃料代の安さや燃費の良さ、トルクの太さなど、多くの魅力を持っています。一方で、ディーゼル特有のデメリットやガソリン車との違いも存在します。

本記事では、ディーゼル車の基本構造からメリット・デメリット、具体的な選び方や誤給油トラブルへの対処法、さらにクリーンディーゼル車に関わる税制特例措置について詳しく解説します。ディーゼル車を購入・検討する際の参考にしていただければ幸いです。

ディーゼル車とはなにか

ディーゼル車とは、ディーゼルエンジンを搭載し、燃料として軽油を使用する車のことです。かつてはトラックやバスなどの商用車、あるいは本格SUVなどに多く採用されていましたが、近年は排出ガスを徹底的にクリーン化する技術が進み、乗用車でも採用例が増えています。燃費効率に優れたエンジンとして注目され、欧州では「乗用車=ディーゼル」というほど普及率が高いのも特徴です。

ディーゼル車とガソリン車のエンジンの違い

燃料の違い

ディーゼル車は「軽油」を燃料とし、ガソリン車は「ガソリン」を燃料とします。軽油の方が引火点が高く、気化しにくい一方、自然発火しやすいという特性があります。これを利用するのがディーゼルエンジンです。

燃焼方式の違い

ガソリンエンジンは「点火プラグ」を用いて火花で燃料を着火させます。燃料を気化させ、シリンダー内に混合気として送り込み、プラグの火花で燃焼させる方式です。

一方、ディーゼルエンジンは点火プラグを使いません。シリンダー内の空気を高圧縮することで高温にし、そこへ霧状の燃料(軽油)を噴射して自然着火させます。そのため、スロットルバルブがなく、アクセルペダルの開度に応じて燃料噴射量を変化させるだけで出力を調整します。

構造と特徴

ディーゼルエンジンは、圧縮比が高いぶん、エンジン本体が頑丈に作られているのが特徴です。燃焼室もガソリンエンジンとは異なる形状をしており、近年のディーゼル車は燃料噴射技術やターボ技術が進化して、ガソリン車に劣らないパワーを持つようになりました。トルクの面ではディーゼル車に軍配が上がる場面が多く、特に重量のある車や悪路走行を想定したSUVなどに向いています。

ディーゼル車のメリット

ディーゼル車には、ガソリン車とは異なる数々のメリットがあります。ここでは代表的な3つの魅力を紹介します。

1.燃料コストが安い

ディーゼル車最大の魅力といえるのが燃料コストの低さです。ディーゼルエンジンはガソリンエンジンより燃焼効率が高く、燃費性能に優れています。さらに、軽油はガソリンよりも燃料の課税額が安く設定されているため、1Lあたりの燃料代が抑えられます。特に長距離移動の多い方や業務で頻繁に車を使う方にとっては、大きな経済的メリットとなるでしょう。

2.トルクが太く、力強い走り

ディーゼルエンジンは同排気量のガソリンエンジンに比べてトルクが大きくなりやすい傾向にあります。トルクとは、車が前進するときの「押し出す力」を示し、坂道や高負荷状態での加速力に直結します。例えば大人数を乗せたり、多くの荷物を積んだりして走る場合、低回転から粘り強いトルクを発揮してくれるディーゼル車は非常に頼もしい存在です。

そのため、トラックなどの貨物車やクロスカントリー4WD、SUVなどではディーゼルが好まれる傾向があります。悪路走破性を重視する場合にも、ディーゼルエンジンの大きなトルクは大きなアドバンテージです。

3.エンジンの耐久性が高い

圧縮により燃焼させるディーゼルエンジンは、内部の部品が頑丈に設計されており、総じて耐久性に優れています。商用車・貨物車など過酷な使用環境で活躍する車に多く採用されていることからも分かるように、ディーゼルは長期的な酷使に強いエンジンといえます。乗用車でも同様の恩恵があるため、長く乗ることを考えている方には魅力的でしょう。

ディーゼル車のデメリット

ディーゼル車はメリットだけでなく、いくつかのデメリットや注意点も存在します。購入の際は、これらをきちんと理解しておきましょう。

1.騒音・振動が大きい

ディーゼルエンジン特有の「ディーゼルノック」と呼ばれる振動によって、ガラガラとした音が発生しやすいのが弱点です。ガソリンエンジンよりもエンジンの作動音が耳障りに感じられるケースがあり、「車内の静粛性を最重視する」という方はディーゼル車を敬遠することもあります。

ただし最近のディーゼル車は燃料噴射技術や騒音・振動対策が進歩し、車内でのノイズはかなり抑えられています。実際に試乗してみると、アイドリング時や発進時にわずかにディーゼルらしさが残る程度で、走り出してしまえばほぼ気にならないほどに改良が進んでいます。

2.高回転まで回りにくい

ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べて圧縮比が高く、ピストン行程が長い(ロングストローク)傾向があります。そのため高回転域まで一気に回すような走り方は苦手でした。しかし、近年はターボの採用や燃料噴射制御の高度化によって、従来よりも高回転を伸ばせるタイプのディーゼルエンジンも登場しています。

それでも「エンジンをキビキビ高回転まで回してスポーティに走りたい」という方にとっては、ガソリンエンジンの方が好まれる場面も少なくありません。ディーゼル車はトルク特性や低回転での粘りに強みがあるため、自分の用途や好みに合うかどうか見極める必要があります。

3.尿素水(アドブルー)の補充が必要な場合も

クリーンディーゼル車の中には、排気ガスを浄化する「尿素SCRシステム」を採用しているものがあります。これは有害な窒素酸化物(NOx)を尿素水(アドブルー)と化学反応させて無害化する技術ですが、定期的に尿素水を補充する手間が発生します。もっとも、一般的な使用であれば、定期点検や車検時に補充するだけで事足りることが多く、軽油の安さを考えれば大きな負担にはなりにくいでしょう。

ディーゼル車の選び方

ディーゼル車はSUVからコンパクトカー、バンまで幅広いラインナップが存在します。ここではディーゼル車を選ぶ際に注目しておきたいポイントを5つ解説します。

1.エンジンの最大出力・最大トルク

ディーゼルエンジンは一般的にトルクが大きい傾向ですが、同じディーゼル車でも、エンジンの味付けやスペックは車種によって異なります。最高出力と最大トルク、さらにそれらを発揮する回転域を比較することで、「高回転域のパワー重視タイプ」か「低回転域からトルクが厚いタイプ」かを見極められます。

高速巡行が多い方やロングドライブを楽しむ方は高回転域での伸びを重視したモデル、人や荷物を多く乗せて山道などを走る機会が多い方はトルクの厚さを重視したモデルが向いているでしょう。

2.静粛性と振動対策のチェック

最近のディーゼル車は以前ほど騒音・振動が気になりませんが、やはり神経質な方には注意が必要です。試乗する際にはアイドリング時のエンジン音や加速時のノイズ、振動の程度などをしっかり体感してみましょう。ディーゼル独特のカラカラした音が車内にどの程度侵入してくるかを確認すれば、購入後のギャップが少なくなります。

3.燃費性能

ディーゼルエンジンは燃焼効率の高さゆえ燃費に優れますが、車体重量や走行条件によっても大きく変動します。近年採用されているWLTCモード燃費は「市街地」「郊外」「高速道路」に分けて測定しているため、自分の運転シーンに合う燃費値をチェックしましょう。市街地走行が多い方なら「市街地」の数値を重視し、高速道路を多用する方なら「高速」の数値が参考になります。

4.ボディサイズ

車体のサイズは運転のしやすさや燃費などにも影響を与えます。車幅の広いSUVタイプなどは取り回しが難しい場合もあるため、駐車場環境や日常的に通る道幅などを考慮して、無理なく扱えるサイズかを検討しましょう。大人数で使用する機会が多いのか、一人または夫婦での使用がメインなのか、といったライフスタイルも大切な判断材料です。

5.積載性能

大きなトルクを活かして重い荷物を載せることが多いなら、ラゲッジスペースの形状や容量は要チェックです。車種によってはスクエアな荷室を持つモデルやシートアレンジが多彩なモデル、防水・防汚加工されたフロアなど、使い勝手を考慮した設計のものもあります。荷物を積み下ろししやすいかどうか、実際の形状や開口部の高さなども含めて確認してみましょう。

クリーンディーゼル車の税制特例措置

自動車を所有すると、購入時や車検時、毎年の税金として様々な税負担が発生します。特にディーゼル車の場合はクリーンディーゼル技術の進歩に伴い、エコカー減税の対象となるケースもあるため、購入時にチェックしておくとお得です。

ディーゼル車にかかる主な税金として、「自動車税環境性能割」「自動車税種別割」「自動車重量税」があります。2025年3月時点で、自家用ディーゼル車が受けられる特例措置は自動車重量税に関わるエコカー減税のみとなっています(営業用車両はまた別の措置があります)。

エコカー減税による重量税の軽減

エコカー減税は、排出ガス性能や燃費性能が一定水準をクリアしている車両に適用される制度です。2024年1月1日~2025年4月30日、または2025年5月1日~2026年4月30日に新車新規検査を受けたクリーンディーゼル車は、令和12年度燃費基準の達成率に応じて税額が免税・軽減されます。達成率が高いほど免税・軽減幅が大きくなるため、購入前には対象モデルかどうかを販売店やメーカーに確認するとよいでしょう。

また、2021年5月1日~2023年4月30日の期間に新車新規検査を受け、一定の燃費基準をクリアした中古のクリーンディーゼル車でも、初回継続検査時の重量税が免税となる場合があります。中古車を検討する際も、エコカー減税適用の可否をしっかりチェックしておきましょう。

いずれにしても、過去の排出ガス規制や燃費基準をクリアしているかどうかで適用される税率は変わってきます。所有コストに直結する部分ですので、カタログやディーラーにて必ず確認してください。

ディーゼル車にガソリンを入れてしまったときの対処法

ディーゼル車が乗用車の主流に加わるにつれ、セルフスタンドでの燃料間違い、いわゆる「誤給油」が増えています。軽油とガソリンを間違えて給油してしまうと重大なトラブルに発展する可能性があります。万が一誤給油した場合の正しい対処法を知っておきましょう。

誤給油に気づいたらエンジンをかけない

もしディーゼル車にガソリンを入れてしまったら、エンジンをかけるのは厳禁です。給油直後に気づいた場合、すでにエンジンが動いていても即座に停止しましょう。そのまま走り続けると、燃料ポンプやインジェクター、エンジン内部まで誤燃料が回り、深刻な損傷を招きます。

基本的にはその場でロードサービス(JAFなど)に連絡し、修理工場などで燃料を抜き取ってもらう対処が必要です。軽油の中に混ざった少量のガソリンでもエンジン内部を痛める恐れがあるため、個人で無理に対処せずプロに任せるのが得策です。

ガス欠にも注意

ディーゼル車は、ガス欠を起こすと燃料ラインに空気が入り込み、エンジン再始動が難しくなるケースがあります。エア抜きが必要になるモデルもあり、ガス欠後に単に燃料を補給しただけでは動き出せないことがあるのです。ロードサービスを呼ぶ手間や費用を考えると、燃料計を常に気にしてガス欠にならないように早め早めの給油を心がけましょう。

今後のディーゼル車の展望

近年は電気自動車やハイブリッド車、燃料電池車など環境性能の高い車種が続々と台頭しています。欧州を中心に、今後は内燃機関車(ガソリン・ディーゼル)に対して販売規制を進める動きもあります。しかし、それでもディーゼルエンジンは引き続き高い燃焼効率や耐久性、トルク特性などを武器に改良が進められています。

日本国内でも、「高い経済性を求めるユーザー」や「重い荷物・多人乗車を想定するユーザー」「アウトドアやキャンプなどSUVの利点を活かしたいユーザー」などから一定の需要があり、すぐにディーゼル車が市場から消えることは考えにくいでしょう。また、高性能ディーゼルターボエンジンの開発が進むことで、従来のイメージを覆すような静粛性やパワーを持つモデルも増え続けています。

まとめ

ディーゼル車は燃料コストの安さや優れた燃費性能、大きなトルクによる力強い走り、そして高い耐久性など、多くのメリットを備えています。一方で、騒音・振動や高回転域の伸び、尿素水の補充など、独自のデメリットや注意点があることも確かです。これらを理解した上で、日々の使い方や好みに合った車種を選ぶのが重要です。

また、クリーンディーゼル車は国やメーカーの技術開発により、以前よりも環境性能が高まっています。エコカー減税による重量税の優遇など、購入後の維持費にもプラスに働く制度もありますので、ディーラーやメーカーサイトで最新情報を確認しましょう。さらに誤給油やガス欠などのトラブルを回避するために、燃料の種類を間違えないよう日頃からしっかり注意することが大切です。

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