自動車事故で相手が任意保険未加入だったら?無保険車事故のリスクと対処法

自動車事故で相手が任意保険未加入だったら?無保険車事故のリスクと対処法

自動車事故が起きたとき、もしも相手方が自動車保険(任意保険)に加入していない「無保険車」だったら、被害者はどのような補償を受けられるのでしょうか。無保険車との事故は、十分な賠償金を相手から得られない場合や、示談交渉が長引くリスクがあり得ます。本記事では、「無保険車」とはどういう車なのか、そのような車との事故が起きた場合の対処法や備え方などについて詳しく解説します。事故後のトラブルを回避し、ご自身の損害を最小限に抑えるための知識を整理しておきましょう。

無保険車とは何を指すのか

「無保険車」とは、法律で加入が義務付けられている自動車損害賠償責任保険(以下、自賠責保険)には加入しているものの、任意保険には加入していない車、あるいは自賠責保険そのものにも加入していない車のことを指します。

自賠責保険は「強制保険」とも呼ばれ、万が一の交通事故で相手にケガを負わせたり死亡させたりした場合の対人賠償が補償される仕組みです。ただし、支払われる保険金には限度額があり、物損事故には対応していません。一方、任意保険は事故全般のリスクに幅広く備えるための保険で、対人賠償の補償を無制限にできたり、対物や自身のケガなどをカバーしたりできます。ところが、世の中には何らかの事情により任意保険に加入せず走行する車も存在し、こうした車を総称して「無保険車」と呼びます。

損害保険料率算出機構の「2023年度 自動車保険の概況」によると、全国平均の任意保険の普及率(対人・対物)は75%前後であることがわかっています。つまり、4台に1台程度は、任意保険に未加入の可能性があるともいえます。

無保険車との事故で気をつけたいリスク

無保険車と事故を起こした場合、被害者側が抱えるリスクとしては主に以下のような点が挙げられます。

相手から十分な賠償を受けられない

任意保険があれば、加害者が契約している保険会社から保険金の支払いを受けられるため、被害者は必要な補償を受けやすくなります。しかし、任意保険に加入していないと、賠償は自賠責保険だけに限られてしまい、そもそも自賠責保険も未加入の場合は保険からの支払いすら期待できません。
被害者が被った損害が大きくなるほど、相手に支払い能力がなければ十分な賠償を受けられない可能性が高まります。

対物賠償がほぼ期待できない

自賠責保険は対人賠償のみであり、車や建造物などの物的損害を補償する仕組みはありません。相手が無保険車だった場合、車の修理費や買替費用、ガードレールや電柱などを破損した場合の賠償費用は自賠責保険ではまかなえません。加害者に十分な支払能力がなければ、被害者が自己負担せざるを得ない場面も想定されます。

示談交渉を自分で行わなくてはならない

任意保険の対人・対物賠償には、保険会社による示談交渉サービスが付帯されているのが一般的です。相手が任意保険に加入していれば、保険会社同士が話し合いを進め、事故の解決がスムーズに進むことも少なくありません。しかし、相手が無保険車の場合は、示談交渉を被害者本人が直接行わなければならないケースが多く、手続きの煩雑化や精神的負担が大きくなる傾向があります。連絡が取れない、相手が話し合いに応じないなどのトラブルに発展することも考えられます。

無保険車が自賠責保険に加入しているケースの補償

無保険車といっても、自賠責保険にだけは加入しているケースがあります。こうした場合、事故相手の対人賠償については自賠責保険の範囲内で補償を受けることが可能です。

自賠責保険の保険金が上限

自賠責保険の対人賠償には限度額があり、傷害(ケガ)であれば120万円、死亡であれば3,000万円、後遺障害であれば4,000万円が上限です。損害額が自賠責保険の範囲を超えた場合、相手に対して直接請求するしかありません。
しかし、相手が資力を持たずに支払えない場合、実質的に十分な賠償を受けられないおそれがあることも理解しておきましょう。

示談に応じない相手には「被害者請求」が有効

事故発生後、相手が賠償に応じない、連絡がつかないといった状況に陥ることもあります。自賠責保険には「被害者請求」という制度があり、これは被害者が直接相手の自賠責保険会社に保険金を請求できる仕組みです。必要書類をそろえたうえで請求すれば、示談がまとまる前でも一定の保険金を受け取れる可能性があります。
また、治療費や生活費など、早急に資金が必要な場合には「仮渡金請求」も検討すると良いでしょう。事故の状況やケガの程度に応じて、定額の仮渡金を受け取ることができます。

無保険車が自賠責保険にも未加入の場合

より深刻なのは、相手が自賠責保険そのものにも加入していないケースです。法律違反ではありますが、残念ながら世の中には無保険車が一定数存在します。こうした状況では相手の保険から一切補償を受けられないため、賠償金を確保するのが困難になる恐れがあります。

直接請求と政府保障事業の利用

このケースでは、まずは相手に対して直接賠償を請求する手続きをとります。しかし、任意保険以前に自賠責保険も未加入である加害者は支払い能力が乏しい場合も少なくありません。
そのようなときに利用を検討できる制度が「政府保障事業」です。国が被害者に立て替え払いを行ったのち、国が加害者に対して求償を行う仕組みで、被害者救済を目的としています。ただし、自賠責保険と同様に、対物損害は保障の対象にならず、上限金額も自賠責保険と同額である点に注意が必要です。

内容証明郵便や弁護士への相談

示談に応じない相手や話し合いが進まないときは、内容証明郵便で正式に賠償請求の意思を伝える方法が考えられます。これは「いつ、誰が、誰に、どういった内容で文書を出したのか」を郵便局が証明する制度で、法的拘束力こそないものの、自分の真剣な姿勢を示すうえで大きな意味があります。
また、弁護士に依頼して交渉を進めるのも一手ですが、加害者に支払い能力がない場合は、弁護士費用の負担が大きくなる恐れもあるため、費用対効果をよく検討しましょう。もっとも、任意保険の弁護士特約に加入していれば、弁護士費用を保険から補償できる場合があり、相談や着手金へのハードルは下がります。

無保険車との事故に役立つ任意保険の補償

事故の相手が無保険であっても、被害をカバーできるようにしておくためには、自分自身が任意保険に加入し、適切な補償を備えておくことが重要です。ここでは、無保険車との事故に特に役立つ補償の種類を紹介します。

人身傷害補償保険

人身傷害補償保険は、契約者や同乗者がケガをしたり死亡したりした場合に、過失割合に関係なく実際の損害額を補償してもらえる保険です。示談交渉を待たずに保険金を受け取れる点も大きなメリットといえます。
複数台の車を所有している場合でも、一つの契約で同居の家族全員が補償対象になることが多いので、ぜひ確認してみましょう。

無保険車傷害保険

無保険車傷害保険は、相手が無保険や低い補償額の保険しか持っていない場合に、自分や同乗者が死亡・後遺障害を負ったときの損害を補填してくれる保険です。相手方に支払い能力がない場合でも、自分の保険から一定の賠償金が支払われます。
保険会社によっては、人身傷害補償保険の一部として無保険車傷害の補償が含まれている場合もありますので、現在契約しているプランをチェックしてみてください。

車両保険

車への損害を補償する「車両保険」も重要です。相手が無保険で対物賠償がまったく期待できない場合でも、加入している車両保険の範囲内で修理費等をカバーできます。
車両保険には、事故のほとんどをカバーするタイプと、保険料を抑える代わりに補償範囲を限定したタイプがあるため、事故リスクとのバランスを考えて加入しましょう。

弁護士費用特約

相手が無保険車の場合、示談交渉は被害者と相手本人が直接行うケースが多くなります。相手とのやり取りが難航したり、法律的な知識が必要になったりする局面が出てきたときに、弁護士に依頼できると大きな安心材料です。
弁護士費用特約を付けておけば、保険会社が費用を負担するため、依頼料や着手金を理由に交渉を断念するリスクも減らせます。

自分が無保険で事故を起こしてしまった場合のリスク

ここまで、無保険車の相手方が加害者になるケースを主に見てきましたが、立場が逆になり、自分自身が無保険で事故を起こしてしまった場合には非常に大きな経済的リスクを負うことになります。

法律上、車を所有していれば自賠責保険への加入は義務ですが、それだけでは高額な賠償はカバーしきれない可能性が高いです。対物や相手への治療費がかさむような事故になると、何千万円という賠償金が発生する場合もあります。全額自己負担で賄えず、最悪の場合は財産の差し押さえが生じるなど、生活基盤を根底から揺るがす事態にもなりかねません。
自分自身が加害者になる可能性は誰しもゼロではありません。任意保険は文字通り「任意」ですが、車を運転する以上はほぼ必須の補償と考えておきましょう。

まとめ

無保険車との事故は、被害者にとって補償を十分に受けられないリスクが高まる厄介なトラブルです。相手が自賠責保険にのみ加入している場合であれば、最低限の対人賠償は期待できるものの、限度額を超える損害や対物損害は自分で負担しなければいけない可能性があります。相手が自賠責保険すら未加入ならば、なおさら賠償を受ける手段が限られ、政府保障事業の活用や弁護士に依頼しても、補償は十分とは言えません。

そこで重要なのは、自分自身が任意保険へ加入しておくことです。人身傷害補償保険や車両保険、無保険車傷害保険、弁護士費用特約などを備えることで、事故の際の経済的負担や示談交渉のストレスを大きく軽減できます。また、自分が加害者になったときにも、高額の賠償リスクから身を守ってくれるのが任意保険です。
万が一のときに備えて、保険の保障内容を見直すとともに、補償の重複や不足がないかどうかを家族全体の状況も含めて検討しておくことをおすすめします。

無保険車との事故は起こらないのが何よりですが、万が一のトラブルに見舞われても慌てず対応できるよう、正しい知識と備えを持っておきましょう。

安全運転カテゴリの最新記事