車を長期間放置することは、様々な問題を引き起こす可能性があります。「海外赴任が決まった」「ライフスタイルが変わって車を使わなくなった」「長期入院することになった」など、様々な理由で愛車を長期間放置せざるを得ない状況になることもあるでしょう。
しかし、車は単なる移動手段ではなく、大切な資産でもあります。長期間放置することで、車の価値が大きく下落してしまう可能性も否定できません。
この記事では、車を長期間放置することのリスクやデメリットを詳しく解説するとともに、放置前にすべき対策や、再び乗る際の注意点について、具体的な方法を提示します。さらに、売却や廃車、一時抹消登録といった選択肢についても詳しく解説し、あなたの状況に最適な解決策を見つけるお手伝いをします。
愛車を長く大切に乗り続けたい方も、将来的な売却を考えている方も、ぜひこの記事を参考に、賢い選択をして、愛車を守りましょう。
長期間放置が愛車に与える深刻なダメージ:放置のリスクとデメリット
車を1週間以上、1ヶ月以上、あるいはそれ以上の長期間放置すると、以下のような様々なリスクやデメリットが生じます。これらのリスクを事前に理解し、適切な対策を講じることが重要です。
ガソリンの劣化:放置期間と品質の関係
車を走行させると、ガソリンは消費され、給油することで自然に新しいガソリンと入れ替わります。しかし、長期間放置するとガソリンは劣化し、最終的にはドロドロとした粘度の高い、異臭を放つ物質に変質してしまうことがあります。
ENEOSによると、気温変化の少ない冷暗所での保管であれば、半年程度の放置であれば品質は保証されないものの、使用に問題はないとされています。しかし、これはあくまで目安であり、半年以上放置した場合は、ガソリンの使用に問題が生じる可能性が高くなります。
劣化したガソリンをそのまま使用すると、燃料系統に深刻なダメージを与え、エンジンの故障につながる恐れがあります。半年以上放置し、強い刺激臭などガソリンの劣化が疑われる場合は、専門業者(契約しているロードサービスなど)に依頼してガソリンを抜き取り、新しいガソリンを給油することをおすすめします。
無駄な維持費:放置期間中の経済的負担
車は所有しているだけで、様々な維持費がかかります。長期間乗らない場合でも、数年に一度の車検費用、駐車場代(借りている場合)、そして再び乗る際の修理費用など、経済的な負担は避けられません。
例えば、車両の重量や登録からの年数にもよりますが、車検には約3万〜7万円の費用がかかります。自宅に駐車場がない場合は、月極駐車場を借りる必要があり、都心部では月額約3万円、半年で18万円もの出費になることもあります。
これらの維持費は、車を使用していなくても発生し続けるため、長期間放置する場合は大きな経済的負担となります。
タイヤの空気圧低下:放置と変形のリスク
車に乗らなくても、タイヤの空気は自然に抜けていきます。JATMA(日本自動車タイヤ協会)の調査によると、タイヤの空気圧は1ヶ月で約5%低下するとされており、数ヶ月放置すれば、空気圧は大幅に低下してしまいます。
空気圧が低い状態で放置すると、車の重量に耐えきれず、タイヤが変形してしまう可能性があります。変形したタイヤで走行すると、バースト(破裂)のリスクが高まり、重大な事故につながる危険性があります。
長期間放置する場合は、定期的な空気圧のチェックと補充が不可欠です。また、保管時専用のタイヤに交換することも、タイヤの変形を防ぐ有効な手段です。
ハイブリッド車・EV車のバッテリー上がり:放置とバッテリーの関係
ハイブリッド車やEV車は、ガソリン車とは構造が異なりますが、駆動用バッテリーと補機バッテリーの2つのバッテリーを搭載しています。ガソリン車のバッテリーよりも寿命は長いものの、長期間放置することでバッテリーが上がってしまう危険性はあります。
特に、補機バッテリーは、車の電子機器を制御するために必要なバッテリーであり、長期間放置すると自然放電により電圧が低下し、エンジンがかからなくなることがあります。
EV車の場合は、ガソリンを使用しないため、ガソリンの劣化というリスクは避けられますが、維持費やタイヤの空気圧低下といったデメリットは、ガソリン車と同様に発生します。
週一回の運転でも注意が必要:短時間の運転がもたらすリスク
数ヶ月から年単位での長期間放置だけでなく、週に一度程度の運転しかしない場合でも、注意が必要です。週一回の運転時に適切な走行ができていないと、以下のような問題が発生する可能性があります。
バッテリーの劣化・バッテリー切れ
週に一度程度の運転では、バッテリーが十分に充電されず、劣化が進みやすくなります。特に、短時間の運転や渋滞が多い場合は、バッテリーへの負担が大きくなり、バッテリー切れのリスクが高まります。
車自体の劣化
車は、走行することで各部が適切に動作し、良好な状態を維持することができます。しかし、週に一度程度の運転では、エンジンやトランスミッションなどの機械部品が十分に温まらず、劣化が進みやすくなります。
また、長期間同じ場所に駐車していると、日光や雨風の影響を受け、ボディの塗装や内装の劣化が進む可能性があります。
週に一度程度の運転しかしない場合は、最低でも30分以上走行し、エンジンやトランスミッションを十分に温めるように心がけましょう。また、できるだけ風や日光の影響を受けない場所(屋根付き駐車場など)に保管することも重要です。
売却できない場合の選択肢:廃車と一時抹消登録
長期間放置していた車が売却できない場合は、廃車を検討する必要があります。廃車とは、車の登録情報を抹消し、公道を走行できない状態にすることです。
廃車の手続きと注意点
廃車の手続きは、自分で行うこともできますが、専門業者に依頼することも可能です。廃車には、解体業者への依頼、リサイクル料金の支払い、運輸支局での手続きなど、様々な手続きが必要になります。
廃車にするしかないと思われる車でも、査定してみると価値がつく可能性もあります。廃車を検討する前に、一度買取店で査定してもらうことをおすすめします。
一時抹消登録:税金対策と再登録の可能性
車に乗る予定がないものの、将来的に再び乗る可能性がある場合は、「一時抹消登録」という手段を検討することができます。
一時抹消登録とは、登録されている自動車の情報を一時的に抹消することです。一時抹消登録を行うと、自動車税(種別割)の支払いが不要になるため、税金対策として有効です。
一時抹消登録を行うと、公道を走行することはできなくなりますが、運輸支局で再登録の手続きを行うことで、再び走行できるようになります。
ただし、車の価値は年々低下していく傾向にあるため、一時抹消登録を行う前に、一度査定に出して現在の価値を確認することをおすすめします。
長期間放置前の対策:愛車を守るための具体的な方法
「車を長期間乗り続ける予定がある」「しばらく乗らないことがわかっている」という場合は、再び乗る際にスムーズに乗り出せるように、事前に適切な対策を講じておくことが重要です。
バッテリーのマイナス端子外し:自然放電の抑制
バッテリーは、車に接続された状態では、自然放電により徐々に電力が失われていきます。長期間放置する場合は、バッテリーのマイナス端子を外しておくことで、自然放電を抑制し、バッテリー上がりを防ぐことができます。
注意点:
- バッテリーの端子には、プラス(+)とマイナス(-)の2種類があります。プラス端子から外すと、ショート(短絡)を引き起こし、非常に危険です。必ずマイナス端子から外してください。
- バッテリーのマイナス端子を外しても、完全に放電を防ぐことはできません。1ヶ月程度で放電してしまうこともあるため、定期的なチェックが必要です。
- 作業に不安がある場合は、専門業者に依頼することをおすすめします。
盗難対策:愛車を守るためのセキュリティ対策
人通りの少ない場所に長期間放置する場合は、盗難のリスクが高まります。以下のような盗難防止対策を講じ、愛車を守りましょう。
- ハンドルロック(ステアリングロック): ハンドルを固定し、操作できなくする装置です。
- タイヤロック: ホイールに取り付け、タイヤが外れないようにする装置です。
- 防犯カメラ/ダミーカメラ: 監視カメラを設置することで、盗難を抑止する効果があります。
- 車用カバー: 車体を覆うことで、車種や状態を隠し、盗難のターゲットになりにくくします。
車の劣化を防ぐ保管方法:適切な環境で保管する
何も対策をせずに車を長期間放置すると、車の外装や部品が劣化してしまいます。以下のような対策を講じ、適切な保管環境を整えましょう。
- 湿気対策: 車内に乾燥剤を置くなどして、湿気を取り除きましょう。湿気は、カビや錆の原因となります。
- 車カバー: 車体を覆うことで、直射日光や雨風から車を守り、塗装や内装の劣化を防ぎます。
- 屋内保管: 可能であれば、雨風や直射日光の影響を受けない、屋内に保管しましょう。
- サイドブレーキ解除: 長期間サイドブレーキをかけたままにしておくと、ブレーキが固着してしまう可能性があります。サイドブレーキを解除し、輪止めを使用しましょう。
- ガソリン満タン: ガソリンタンク内の空間を少なくすることで、結露を防ぎ、ガソリンの劣化を抑制します。
- タイヤの空気圧を高めに: タイヤの変形を防ぐため、空気圧を通常よりも高めに設定しておきましょう。
- 定期的なエンジン始動と走行: 可能であれば、知人や家族に依頼して、週に1回30分以上、車を走行させてもらいましょう。エンジンやトランスミッションの劣化を防ぎ、バッテリーの充電にもなります。
長期間放置後の運転再開:安全確認と必要な手続き
長期間放置した車を運転する際は、法的・物理的に運転できる状態であるかを確認し、必要な手続きを行う必要があります。
セルフチェック:安全走行のための基本確認
放置している・していないに関わらず、車に乗る前のセルフチェックは重要です。しかし、長期間放置した場合は、日常的な確認項目に加えて、以下の点も確認しましょう。
- 警告灯: エンジン始動時に、警告灯が点灯していないか確認しましょう。警告灯が点灯している場合は、何らかの異常が発生している可能性があります。
- タイヤの空気圧: タイヤの空気圧が適切であるか確認しましょう。長期間放置すると、空気圧が大幅に低下している可能性があります。
- エンジン: エンジンがスムーズに始動するか確認しましょう。エンジンがかかりにくい場合は、バッテリー上がりや燃料系統のトラブルが考えられます。
- ブレーキ: ブレーキが正常に作動するか確認しましょう。ブレーキの効きが悪い場合は、ブレーキパッドの摩耗やブレーキフルードの劣化が考えられます。
- 灯火類: ヘッドライト、テールランプ、ウインカーなどの灯火類が正常に点灯するか確認しましょう。
- 液類: エンジンオイル、冷却水、ブレーキフルード、ウォッシャー液などの液量が適切であるか確認しましょう。
セルフチェックで異常が見つかった場合は、専門業者に点検を依頼しましょう。
車検切れの確認と手続き:公道走行の必須条件
車検が切れている車は、公道を走行することができません。もし走行した場合は、道路運送車両法違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
長期間放置していた車は、車検が切れている可能性が高いため、必ず車検証を確認しましょう。車検が切れている場合は、車検の手続きを行う必要があります。
車検の手続きは、自分で行うこともできますが、専門業者に依頼することも可能です。
整備工場での点検:プロの目で安全確認
長期間運転していない車は、様々な箇所に不具合を抱えている可能性があります。自分では気づかないような問題が見つかることもあるため、整備工場でプロの目で点検してもらうことをおすすめします。
整備工場では、エンジン、ブレーキ、サスペンションなど、車の主要な部分を点検し、必要に応じて修理や部品交換を行います。
車検が切れている場合や、エンジンがかからない場合は、レッカー車を手配して整備工場に持ち込む必要があります。
まとめ
車を長期間放置することは、様々なリスクやデメリットを伴います。ガソリンの劣化、維持費の負担、タイヤの空気圧低下、バッテリー上がりなど、放置期間が長くなるほど、問題は深刻化します。
しかし、事前に適切な対策を講じることで、これらのリスクを最小限に抑えることができます。バッテリーのマイナス端子を外す、盗難対策を行う、適切な保管環境を整えるなど、できることから始めましょう。
また、長期間放置した車を運転する際は、セルフチェック、車検の確認、整備工場での点検など、安全確認を徹底することが重要です。
愛車を長く大切に乗り続けるためにも、将来的な売却をスムーズに行うためにも、長期間放置に関する正しい知識を身につけ、賢い選択をしましょう。