運転免許証は、私たちが車を運転するうえで必携の身分証明書です。近年はICチップが搭載された「ICカード運転免許証」が主流になり、暗証番号を設定することで重要な個人情報を守る仕組みが採用されています。しかし、日常生活の中でこの暗証番号を入力する機会はそれほど多くはありません。ふと必要になったとき、「あれ、暗証番号って何に設定したっけ……」と困ってしまう方も少なくないでしょう。
とくに、銀行口座の開設やネットサービスの登録など、免許証を本人確認書類として利用するときに入力を求められて慌ててしまうケースが増えています。また、3回連続で間違えるとロックがかかってしまう仕様もあり、必要なときにすぐ使えないと非常に不便です。
そこで本記事では、運転免許証の暗証番号が「いつ、どのような場面で必要になるのか」、そして「忘れてしまったときの対処法」や「安全に管理するための具体的なポイント」まで、詳しく解説します。更新時や再交付時の手続きの流れもあわせて触れながら、暗証番号をめぐるお悩みを徹底的に解消していきましょう。
運転免許証の暗証番号とは何か
ICカード運転免許証が導入されたのは、偽造や変造による犯罪を防止するためです。それまで運転免許証の表面に記載されていた「本籍」の情報は、ICチップに内蔵される形へと変わり、外見からは個人の本籍を直接読み取れなくなりました。こうした個人情報の秘匿性を強化する仕組みとして登場したのが、運転免許証の「暗証番号」です。
ICカード運転免許証の概要
ICカード運転免許証には、次のような情報がICチップの中に記録されています。
- 本籍
- 顔写真データ
- 氏名・生年月日・免許の有効期限など
ただし、ICチップに格納されている情報を自由に閲覧できるわけではありません。読み取る際には、4桁の暗証番号が2組(「暗証番号1」「暗証番号2」)必要となります。
暗証番号が2組存在する理由
運転免許証の暗証番号は、4桁の数字×2組という形で設定します。これは安全性の観点から、読み取れる情報を段階的に分けているためです。
- 暗証番号1:氏名や生年月日、免許の種類など、表面にも記載されている情報
- 暗証番号2:顔写真や本籍など、より秘匿性が高い情報
もしも「暗証番号1」のみしか入力されなければ、表面に書いてある情報が読み取れるだけに留まります。一方、「暗証番号2」まで入力すれば、本籍や顔写真などより重要度の高い個人情報へアクセスが可能となります。
なお、運転免許証の暗証番号は「設定しなくても良い」という扱いではありますが、空欄のままだとICチップへのアクセスを防ぐ手立てがなくなるため、推奨としては必ず設定しておくのが一般的です。実質的には、警察署や運転免許センターでの交付時・更新時・再交付時に、この2組の番号を設定する流れになっています。
運転免許証の暗証番号を設定するタイミングと方法
暗証番号を設定する機会は、主に「新規交付」「更新」「再交付」の3パターンです。いずれの場合も、免許窓口や運転免許センターなどで手続きを行う際、ICチップ専用の読み取り装置で番号を入力することで設定が完了します。
新規交付時
初めて運転免許証を取得するときにも、ICチップの読み取り装置を使用して暗証番号を登録します。
- 申請書に必要事項を記入
- 窓口にてICチップ専用の端末へ移動
- 4桁の暗証番号を2組入力(繰り返し入力して確認)
- 登録完了後、暗証番号をバーコード付きカードに印字
ここで発行されたカードは「登録カード」と呼ばれ、設定した暗証番号とバーコードが記載されています。写真撮影前の段階で、この登録カードを免許証作成装置に読み込ませ、情報を連携させることで新しい免許証が作成されるしくみです。
免許更新時
有効期限が近づいてきたら免許更新を行いますが、その際にも必ず暗証番号の再設定が求められます。以前に設定していた番号を継続して使いたい場合でも、新規交付時と同様の手順で新しい暗証番号を2組登録することができます。ここで、暗証番号を忘れていてもまったく問題はありません。その場で新しい番号を決めればよいだけなので、更新時に「暗証番号を思い出せない…」と慌てる必要はありません。
再交付時
運転免許証を紛失したり、破損・汚損したり、あるいは氏名や条件等が変更となり免許証が再発行になるケースでは、再交付手続きの際に改めて暗証番号を設定します。再交付時は書類申請に加え、写真撮影や暗証番号の登録、そして新しい免許証の受け取りまでを同じ日に行う流れが一般的です。
運転免許証の暗証番号を使うシーン
日常で運転免許証の暗証番号を入力する機会は限られています。だからこそ「暗証番号を使ったことがない」という人も多く、その結果、いざ必要になったときに思い出せず困ってしまうのです。以下のようなタイミングでは暗証番号の入力が必要になることがあるため、注意しておきましょう。
ICチップ内の情報を確認するとき
運転免許センターや警察署の免許窓口には、運転免許証のICチップの中身を確認できる専用の端末が設置されています。引っ越しなどで本籍の情報に変更があった場合や、自分の免許証データを確認したいときには、この端末を通じてICチップ情報を読むことが可能です。読み取りの際に「暗証番号1」と「暗証番号2」が必要になります。
本人確認書類としての利用時
銀行や携帯電話ショップ、あるいは一部のインターネットサービスでは、本人確認の一環でICカード運転免許証を読み取るケースが増えています。近年ではオンラインで銀行口座を開設するときに、スマートフォンのカメラを使って免許証を読み取る方式も導入されつつありますが、その際に暗証番号の入力を求められることがあります。
また、在日米軍基地への立ち入りなどで、IC免許証による本人確認が行われることもあるため、あらかじめ暗証番号を把握しておかないと困るシーンが出てくる可能性があります。
運転免許証の暗証番号を忘れた場合の対処法
暗証番号を設定したものの、その後ほとんど使わずに年月が経つと、どんな番号を登録したか思い出せないのも無理はありません。そんなときにどうすればいいのか、大きく2つの対処法があります。
- 警察署や運転免許センターで照会する
- 次の更新時に再設定する
照会手続きの流れ
「早急に暗証番号が必要」という状況であれば、警察署の免許窓口や運転免許試験場、運転免許センターで照会手続きを行うのが最速の方法です。電話やオンラインでの照会はできないため、ICカード運転免許証を持参して直接出向きましょう。
- 窓口で暗証番号の照会をしたい旨を伝える
- 免許証を提示し、本人確認を受ける
- 端末を使って暗証番号を確認(あるいは窓口の方が照会してくれる場合も)
なお、照会は本人のみが行うことができ、代理人が手続きをすることは認められていません。
次の更新時に再設定する
免許証の更新時期が迫っているなら、いっそそのときに新しい番号を登録し直すのも手です。なぜなら、免許更新の際には必ず「暗証番号を記入する用紙」が渡され、そこに新たな番号を2組記入するからです。以前の番号がわからなくても問題なく再設定できます。日常生活で急ぎ使う予定がなければ、更新時まで特に大きな支障はないかもしれません。
暗証番号を3回連続で間違えたときの解除方法
暗証番号の入力を3回連続で誤ると、ICチップの照会がロックされてしまいます。こうなると、もう一度番号を思い出したとしても、解除の手続きなしにはICチップ内部の情報を読み取れません。
ロック解除の手続き
ロックされてしまった場合も、基本的には警察署や運転免許センターに本人が出向けば解除してもらうことが可能です。
- 運転免許証を提示
- 本人確認を実施
- 専用端末でロック解除の手続き
暗証番号を思い出している場合は、そのまま再度入力すればOKです。どうしてもわからなければ、あわせて照会を行うこともできます。いずれにしても、代理での解除は認められませんので、必ず本人が手続きを行う点に留意しましょう。
暗証番号は運転免許証の交付・再交付・更新時のみ変更可能
登録している暗証番号は、次の運転免許証の更新や再交付を受けるまで変更できません。銀行のキャッシュカードやスマホのロック画面のように「好きなときに自由に変えられる」というわけではないのです。
そのため、「知らない人に番号を知られてしまったかもしれない」「安全性に不安がある」といった場合も、今すぐに番号を切り替えることができない点には注意が必要です。
万一流出したかもしれないときはどうする?
暗証番号と免許証そのものを同時に紛失してしまったり、免許証を盗まれたりした場合、「顔写真や本籍、その他の個人情報が読み取られるのでは?」と不安になるかもしれません。もし情報漏えいの可能性が高いと感じたら、ただちに警察へ紛失・盗難の届け出を行うとともに、再交付の手続きを検討してください。再交付を受ければ、新たに暗証番号を設定し直すことができます。
安全に管理するためのポイント
暗証番号を忘れないようにする一方で、不正利用されないようセキュリティを高める工夫も必要です。ここでは、運転免許証の暗証番号を安全に管理するためのヒントを紹介します。
同じ番号を使い回さない
よくありがちなのが、キャッシュカードやクレジットカードの暗証番号、スマートフォンのロックコードなどを全て同じ4桁にしてしまうケースです。確かに覚えやすい反面、万が一その番号が他人に知られてしまった場合、一気に複数の個人情報や資産を守る手立てがなくなります。
とくに「暗証番号2」は本籍や顔写真といった、他の書類にはあまり載せたくない情報を読み取れる番号です。可能な限り、推測されにくい独自の番号を設定しましょう。
生年月日・電話番号など推測されやすい数字を避ける
誕生日や電話番号など、個人に紐づいた数字は非常に覚えやすい反面、第三者にも類推されやすいリスクが高いです。また、自動車ナンバーや郵便番号など、一見ランダムに思えて実は簡単に分かってしまう情報も避けた方が無難です。
暗証番号1は免許証の表面に書かれた数字(例:免許証番号の下一桁から4桁など)をもとにしておくと覚えやすい、という意見もあります。ただし、暗証番号2に関しては、より複雑で推測されにくい数字を使うのがおすすめです。
登録カードの保管に注意する
暗証番号を設定するときに発行される登録カードには、2組の暗証番号がそのまま印字されています。もし暗証番号を忘れた場合、このカードを見ればすぐにわかるため、保管しておくこと自体は悪いことではありません。
しかし、最大の注意点は「免許証と一緒に保管しない」こと。もし一緒に紛失したり、盗まれたりしたら、暗証番号と免許証が同時に第三者の手に渡るリスクが高まります。免許証と登録カードは必ず別々の場所に保管しておきましょう。
暗証番号を誰かに教えない
銀行のカード同様、運転免許証の暗証番号は原則として第三者に教えることはありません。たとえ家族や親しい友人であっても、うっかり口外すことで何らかのトラブルに巻き込まれる可能性はゼロではありません。また、職場の同僚や上司などから「会社の手続きで確認したいから暗証番号を教えてほしい」と言われたとしても、基本的には応じる必要はありません。
そもそも、暗証番号は「本人以外が知ってはいけない」性格の情報です。もし万が一、不審な連絡や詐欺まがいの依頼を受けた場合は、すぐに警察や関係機関に相談しましょう。
紛失・盗難に備えた事前のリスク対策
万が一、免許証を無くしてしまうと、再交付に時間と手数料がかかるだけでなく、自分の知らないところで免許証が悪用される可能性も否定できません。財布やカードケースに入れておくのは仕方ない部分もありますが、普段から持ち歩く必要のない場面であれば、あえて家に保管しておくなどのリスク管理を行うのも有効です。
また、万一に備えて「自分がどんな4桁を設定したか」を、忘れても思い出せるような形でこっそりメモしておき、そのメモは自宅の金庫や普段使わないファイルに保管するなど、厳重に管理すると良いでしょう。
まとめ
運転免許証の暗証番号は、ICカード運転免許証をより安全に使うために欠かせない仕組みです。しかし、日常生活で暗証番号を必要とする場面はそれほど多くはなく、「一度設定したきり、すっかり忘れてしまった」というケースが珍しくありません。いざ銀行やインターネット手続きなどで本人確認のために求められたときに、番号がわからず困ってしまうこともあるでしょう。
もし忘れてしまった場合は、警察署や運転免許センターに出向けば照会が可能です。3回連続で暗証番号を間違えてロックされても、本人が窓口で手続きをすれば解除してもらえます。免許更新のタイミングであれば、以前の番号は不要なので、新たに番号を設定し直すことで解決できます。
ただし、暗証番号は免許証の本籍や顔写真といった重要な個人情報へのアクセスを許すカギです。安易に生年月日や電話番号などを使い回さず、推測されにくい数字を設定してください。また、登録カードに記載される暗証番号を保管する際は、免許証本体と分けて保管するなどのセキュリティ対策も心がけましょう。
ICカード運転免許証のメリットは、偽造や不正利用を防ぐための仕組みが強化されている点にあります。その反面、本人が暗証番号を忘れてしまうと手続きに時間や手間がかかってしまうのも事実です。ぜひ本記事を参考に、暗証番号の管理方法を見直したり、忘れてしまったときの対処法を把握しておいたりして、トラブルなく快適に運転免許証を活用してみてください。あなたの大切な個人情報を守るためにも、しっかりと自分だけの暗証番号を設定し、安全性の高い保管方法を徹底しておきましょう。