車を選ぶうえで気になるのが、軽自動車と普通車のどちらにすべきかという点です。軽自動車は維持費の安さや運転のしやすさが魅力である一方、普通車はエンジンパワーや乗り心地の良さに定評があります。しかし実際には、価格や維持費以外にも車体サイズ、安全性能、走行性能など、さまざまな観点から比較しておく必要があります。
本記事では、軽自動車と普通車それぞれの定義からメリット・デメリット、さらにおすすめの車種までを詳しく解説します。家族構成やライフスタイルに合った車選びをするためにも、ぜひ参考にしてみてください。
軽自動車と普通車の定義
車選びをする際、まず押さえておきたいのが「軽自動車」と「普通車」の定義です。日本国内では「道路運送車両法」と「道路交通法」という2つの法律が存在し、それぞれで車の区分が異なるため少しややこしく感じることもあります。ここでは、車体サイズや排気量などを中心に、軽自動車と普通車の基準をわかりやすく整理します。
軽自動車の定義
軽自動車は日本独自の規格に該当する車両を指し、サイズや排気量などが細かく規定されています。現在の基準は以下のとおりです。
- 全長:3.40m以下
- 全幅:1.48m以下
- 全高:2.00m以下
- 排気量:660cc以下
軽自動車の乗車定員は4人までと決められており、5人以上の乗車は原則禁止です。これは日本の道路事情や駐車スペースの狭さに対応するために考えられた規格ともいわれています。
普通車(普通自動車)の定義
普通車(普通自動車)の区分は、「道路運送車両法」と「道路交通法」で少し異なります。道路運送車両法では以下のいずれかひとつでも上回る車を普通自動車と定義しています。
- 全長:4.70m
- 全幅:1.70m
- 全高:2.00m
- 排気量:2,000cc
また、これらすべてを下回るうえで排気量が2,000cc以下の場合は「小型自動車」に区分されますが、道路交通法では「小型自動車」も含めて「普通自動車」と呼びます。乗車定員は11人未満です。
軽自動車と普通車の違いを項目ごとに比較
軽自動車と普通車は、サイズだけでなく維持費や走行性能、乗り心地に至るまで多方面で違いがあるのが特徴です。ここでは主な違いをピックアップしながら、詳しく見ていきましょう。
車両価格
車両価格は、軽自動車のほうが安い傾向があります。新車でも100万円未満から購入できる車種があるため、初期費用を抑えたい方には大きな魅力です。たとえばホンダ N-ONEやスズキ アルトなどは、グレードによっては100万円前後で購入可能なモデルもあります。
一方、普通車はコンパクトカーでも100万円以上がスタンダードですが、選択肢が豊富なため、グレードやオプション次第では比較的低価格帯を選ぶこともできます。スズキのアルトは軽自動車のイメージが強いですが、「アルト ラパン」や「ソリオ」など多彩なラインナップがあり、普通車でも価格を抑えたモデルは存在します。
近年は軽自動車でも上級志向の車種が増え、ターボエンジン搭載車や内装の質感が高いモデルでは200万円を超えるケースも珍しくありません。したがって、単純に「軽自動車のほうが安い」とは言い切れない部分があるので、欲しい車種のグレードやオプションを比較しながら検討することが大切です。
維持費
車の「維持費」には、主に以下のような費用が含まれます。
- 自動車税(種別割)または軽自動車税(種別割)
- 自動車重量税
- 自賠責保険(強制保険)
- 任意保険
- ガソリン代
- 車検費用
- メンテナンス費用
- 駐車場代
維持費のなかでも税金と保険料は大きな差が出やすいポイントです。
税金の違い
普通車では、排気量に応じて自動車税(種別割)が変動し、大排気量になるほど税額は高くなります。これに対して軽自動車税(種別割)は一律10,800円(自家用の場合)なので、特に大排気量の普通車と比較すると差が大きく感じられるでしょう。
車検時に支払う自動車重量税でも、軽自動車は2年で6,600円と抑えられていますが、普通車は車重が0.5t増えるごとに2年で8,400円が加算されます。重い車であればあるほど支出は増えるため、「なるべく費用を抑えたい」「維持費の安さを最優先したい」という方には、やはり軽自動車が有利といえます。
保険料の違い
保険は自賠責保険と任意保険の2種類があります。自賠責保険の保険料には地域差や車種による違いが多少あるものの、軽自動車と普通車で大きな開きはありません。
一方、任意保険は車両保険の有無や特約の内容、契約者の年齢、車種などで大きく異なります。同条件で契約する場合、一般的に軽自動車のほうが安くなる傾向があります。ただし、スポーツカーなど特定の普通車は保険料が高くなることもあるので、個別の見積もりをとるのが確実です。
ガソリン代
燃費性能は車種によってまちまちなので、一概に「軽自動車が安い」とは言えません。近年は普通車でもハイブリッド車や燃費性能の高いエンジン車が登場し、軽自動車に負けない燃費を実現しているモデルも多くあります。
たとえばコンパクトカーの代表格であるトヨタ ヤリス(ハイブリッド車)は30km/Lを超える燃費を誇り、ガソリン代を大幅に削減できる可能性があります。一方、軽自動車でもホンダ N-BOXやスズキ ワゴンRなどは20km/Lを超えるモデルが存在するため、実用域では大きな差が生じないケースも少なくありません。
走行性能
軽自動車は排気量が660cc以下に規定されているため、普通車と比べるとエンジンパワーに差があります。高速道路や坂道をスムーズに加速するなら、排気量に余裕がある普通車のほうが安心感があるでしょう。
もっとも、軽自動車でもターボエンジンを搭載したグレードならパワフルな走りが期待できます。たとえばスズキ ワゴンRスティングレーのターボモデルやホンダ N-BOXカスタムのターボモデルなどは、市街地走行での加速や高速走行での余裕を感じられます。
普通車は車体が大きく重量がある分、直進安定性が高く、横風によるブレも比較的少ないのが強みです。走行中の安定感や高速域での安心感を重視する方には普通車が向いているといえます。
乗り心地
軽自動車というと車内が狭いイメージをもたれがちですが、近年は室内空間を広くとる「スーパーハイトワゴン」が登場し、大人4人でも十分くつろげるほどの広さを確保する車種が増えました。代表的なところではホンダ N-BOXやダイハツ タントなどが挙げられます。
一方で、車幅自体は規格の上限が1.48mと定められているため、普通車と比べると肩まわりの広さにはやや制約があります。窮屈さを感じるかどうかは、家族構成や使用シーンによっても変わるでしょう。
普通車は車体のサイズに余裕があるため、シートやサスペンションにも凝った設計が可能です。高速道路を使った長距離ドライブなどでは、車内空間の広さと乗り心地の良さが際立ちます。運転時の疲れにくさや同乗者の快適性を最重視するなら、普通車のほうがメリットは大きいかもしれません。
安全性能
軽自動車は車両重量が軽いため、「事故時の安全性に不安があるのでは?」と敬遠されがちでした。しかし近年は衝突安全ボディや先進運転支援システム(ADAS)を標準装備した車種が増え、軽自動車でも高い安全性を確保しているケースが増加しています。
国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)が実施する「自動車アセスメント」では、軽自動車と普通車に共通した基準で安全性を評価しています。最近ではホンダ N-BOX、日産 サクラなどがファイブスター賞を獲得しており、衝突安全性能と予防安全性能の両面で高評価を得ています。
普通車も、もちろん先進安全技術が充実しているモデルが多く、衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱防止支援機能などがほぼ標準装備となりつつあります。最近は自動ブレーキの義務化が進んでいるため、軽自動車か普通車かというよりは「どの年代、どのグレードのモデルなのか」によって安全装備の充実度が変わるといえるでしょう。
ナンバープレートの色
外見上わかりやすい違いとして挙げられるのが「ナンバープレートの色」です。基本的に、軽自動車は黄色地に黒文字(自家用の場合)、普通車は白地に緑文字(自家用の場合)となっています。
ただし、最近はラグビーワールドカップやオリパラをきっかけに登場した図柄入りナンバーの交付により、軽自動車でも白色ベースのナンバープレートを取得できるようになりました。その際、軽自動車の場合は枠線が黄色になっているので、よく見ると軽自動車だとわかりますが、見た目としては普通車に近い雰囲気を出すことが可能です。
軽自動車のメリット・デメリット
軽自動車は「維持費を安くしたい」「狭い道でも運転しやすい」「運転初心者でも扱いやすい」など、多くの魅力があります。一方、以下のようなデメリットもあるので、購入前にしっかり理解しておくことが大切です。
- メリット
- 車体価格や維持費が抑えやすい
- 小回りが利き、狭い道路や駐車場でも取り回しがラク
- 燃費が良い車種が多く、ガソリン代を節約しやすい
- デメリット
- 排気量が小さいため、高速道路や坂道でパワー不足を感じることがある
- 横風の影響を受けやすい
- 車幅に限界があるので、後部座席に大人数が乗ると手狭感がある
普通車のメリット・デメリット
軽自動車に比べ車体サイズやエンジン性能に余裕がある普通車は、走行安定性やゆとりある室内空間が魅力です。しかし、その快適性とパワーを得るために避けられないデメリットも存在します。
- メリット
- 広い室内空間と快適な乗り心地
- エンジンパワーに余裕があり、高速走行や坂道でも安定感が高い
- 乗車定員が多く、大きな荷物も積みやすい
- デザインやボディタイプの選択肢が豊富
- デメリット
- 軽自動車より車両価格や税金が高め
- ボディサイズが大きい分、狭い駐車場や道路では取り回しが難しい
- 排気量や重量が増えるほど保険料や税金も上がりやすい
軽自動車と普通車はどっちを選ぶ?
「軽自動車か普通車、どちらが自分に合っているのか分からない」という方は、ライフスタイルや使用目的を整理してみると判断しやすくなります。
軽自動車がおすすめな人
- 日常の買い物や近所への移動がメイン
- 狭い道路や小さな駐車場を頻繁に利用する
- 維持費を少しでも抑えたい
- 運転初心者やペーパードライバーで、車幅感覚に自信がない
軽自動車の最大のメリットは、なんといっても経済性と扱いやすさです。日常的に短距離移動が中心ならば、軽自動車のパワー不足を感じるシーンは多くないでしょう。大人数が乗らないのであれば、室内空間の狭さもそれほど気にならず、車庫入れなどの運転ストレスも軽減されます。
普通車がおすすめな人
- 4人以上で車に乗る機会が多い
- アウトドアやスポーツなど、大きな荷物を積むシーンが多い
- 高速道路で長距離走行することがよくある
- 車のデザインや性能、乗り心地にもこだわりたい
家族で遠出することが多い方や、アウトドア趣味で荷物をたくさん積みたい方には、普通車の車内空間の広さと走行性能の高さが頼りになります。車体が大きいほど快適な室内やエンジンパワーを得られる半面、維持費がかさむ傾向にあるので、その点を踏まえて検討しましょう。
まとめ
軽自動車と普通車は、どちらも一長一短があります。維持費を抑えたい、狭い道でもスイスイ走りたいという方は軽自動車を選ぶメリットが大きいでしょう。一方、家族や友人とのドライブを重視したり、高速道路での安定した走りを求めたりする方には、普通車の広い室内空間やパワフルなエンジン性能が魅力的です。
また、近年は軽自動車でもターボエンジン搭載車や安全装備の充実したモデルが続々と登場し、普通車に引けを取らない性能を備えつつ、低コストで維持できる選択肢が増えています。普通車もコンパクトカーからワンボックス、SUVなど多彩なラインナップがあり、ライフスタイルや好みに合った車を見つけやすい状況です。
車選びで大切なのは、単に「どちらがいいか」ではなく「どのように使いたいか」を明確にすることです。使用目的や家族構成、運転に慣れているかどうか、駐車場の広さなど、あらゆる角度から検討したうえで、自分に最適な一台を見つけてみてください。