運行前点検とは?確認項目、手順、徹底のポイントを完全解説

運行前点検とは?確認項目、手順、徹底のポイントを完全解説

日々の業務に欠かせない自家用自動車。しかし、その安全運行には、日常的な点検が不可欠です。メンテナンスを怠ると、走行中の突然の故障や車両トラブル、さらには重大な交通事故につながる危険性があります。

この記事では、自家用自動車の運行前点検について、その重要性、具体的な点検項目と手順、そして点検を徹底するためのポイントを詳しく解説します。日々の安全運転と、企業の信頼を守るために、ぜひ参考にしてください。

運行前点検とは:安全運転の第一歩

運行前点検とは、文字通り、車の運転前に実施する点検のことです。自家用自動車と事業用自動車では、その頻度や項目に違いがあります。

自家用自動車の運行前点検(日常点検整備)

自家用自動車の場合、運行前点検は「日常点検整備」と呼ばれます。これは、道路運送車両法によって義務付けられており、ドライバー自身が日常的に行うべき点検です。

自動車の使用者は、自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に、国土交通省令で定める技術上の基準により、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない。

引用元:道路運送車両法第四十七条の二

この法律では、点検の頻度は具体的に定められていません。しかし、故障や車両トラブルを未然に防ぎ、安全な運転を確保するためには、車の使用頻度に合わせて、こまめな点検を行うことが重要です。

事業用自動車の運行前点検

バスやトラックなどの事業用自動車は、公共性が高く、事故が発生した場合の影響も大きいため、運行前点検はより厳格に義務付けられています。具体的には、1日1回、運行前に必ず点検を実施しなければなりません。

運行前点検の具体的な項目:自家用自動車と事業用自動車の違い

自家用自動車と事業用自動車では、運行前点検の項目が異なります。それぞれの詳細な項目を見ていきましょう。

自家用自動車の運行前点検項目

自家用自動車の運行前点検は、ドライバー自身が行います。国土交通省が推奨する点検項目は以下の通りです。異常を発見した場合は、速やかに整備工場などに修理を依頼しましょう。

エンジンルーム

  • ブレーキ液の量:リザーバータンクの液量が規定範囲内(MINとMAXの間)にあるか。
  • 冷却水の量:リザーバータンクの液量が規定範囲内(MINとMAXの間)にあるか。
  • エンジンオイルの量:オイルレベルゲージで確認し、規定範囲内(FとLの間)にあるか。
  • バッテリー液の量:バッテリー液面が規定範囲内(UPPERとLOWERの間)にあるか。(※メンテナンスフリーバッテリーの場合は不要)
  • ウィンドウォッシャー液の量:リザーバータンクの液量が十分にあるか。

車の周り

  • ランプ類の点灯・点滅:ヘッドライト、ブレーキランプ、ウインカーなどが正常に点灯・点滅するか。
  • タイヤの亀裂や損傷:タイヤにひび割れや、釘などの異物が刺さっていないか。
  • タイヤの空気圧:タイヤの空気圧が適正であるか。(※専用のエアゲージで測定)
  • タイヤの溝の深さ:タイヤの溝が十分に残っているか。(※スリップサインが出ていないか)

運転席

  • エンジンのかかり具合と異音:エンジンがスムーズにかかり、異音がないか。
  • ウィンドウォッシャー液の噴射状態:ウォッシャー液が正常に噴射されるか。
  • ワイパーの拭き取り:ワイパーが正常に作動し、雨水をしっかり拭き取れるか。
  • ブレーキの踏み残りしろと効き具合:ブレーキペダルを踏み込んだときに、十分な踏みしろがあり、ブレーキがしっかり効くか。
  • 駐車ブレーキの引きしろ(踏みしろ):パーキングブレーキをかけたときに、十分な引きしろ(踏みしろ)があるか。
  • エンジンの低速・加速状態:エンジンが低速時や加速時に、異常な振動や音がないか。

事業用自動車の運行前点検項目

事業用自動車の運行前点検項目は、自家用自動車よりも詳細に定められています。

  • ブレーキ:ペダルの踏みしろ、ブレーキの効き具合、ブレーキ液の量
  • タイヤ:空気圧、亀裂・損傷・異常摩耗、ディスク・ホイールの取り付け状態
  • バッテリー:バッテリー液の量
  • エンジン:冷却水の量、エンジンオイルの量、ファンベルトの張り具合
  • 灯火装置・方向指示器:点灯・点滅具合、汚れや変色、損傷
  • ウィンドウォッシャー液:噴射の向きや高さ、量
  • ワイパー:拭き取り具合
  • エアタンク:凝水がないか
  • 運行において異常が認められた箇所:前回の運行で異常があった箇所について、今回の運行に支障がないか

自家用自動車の運行前点検手順:5つのステップ

自家用自動車の運行前点検は、以下の手順で効率的かつ確実に行いましょう。点検結果は、運転日報などに記録し、社内で共有することが重要です。

ステップ1:安全な場所への移動

まず、平坦で安全な場所に車を移動させます。車が動かないように、輪止めをかけるとさらに安全です。

ステップ2:運転日報の確認

運転日報を確認し、前回の運転時に異常がなかったかを確認します。他の人が運転していた場合は、直接話を聞き、情報共有を徹底しましょう。もし異常や違和感があった場合は、代替車両の使用を検討するなど、安全を最優先に考えましょう。

ステップ3:エンジンルームの点検

ボンネットを開け、エンジンルーム内の各項目を点検します。

  • ブレーキ液の量
  • 冷却水の量
  • エンジンオイルの量と汚れ
  • バッテリー液の量(メンテナンスフリーバッテリーの場合は不要)
  • ウィンドウォッシャー液の量

ステップ4:車両の周りの点検

車の周りを一周しながら、以下の項目を点検します。

  • ランプ類の点灯・点滅
  • タイヤの亀裂や損傷
  • タイヤの空気圧
  • タイヤの溝の深さ

ステップ5:運転席での点検

最後に運転席に座り、以下の項目を点検します。

  • エンジンのかかり具合と異音
  • ウィンドウォッシャー液の噴射状態
  • ワイパーの拭き取り
  • ブレーキの踏み残りしろと効き具合
  • 駐車ブレーキの引きしろ(踏みしろ)
  • エンジンの低速・加速状態

運行前点検を怠るリスク:重大な事故につながる可能性も

運行前点検を怠ると、車両トラブルや交通事故のリスクが高まります。安全運転のためには、日頃からの点検が不可欠です。

車両トラブルのリスク

JAFのロードサービス出動理由の上位には、バッテリー上がりやタイヤのパンクが常にランクインしています。これらのトラブルは、日常的な点検で防げるものが多く、運行前点検の重要性を示しています。

整備不良による罰則

自家用自動車の運行前点検自体には罰則はありませんが、整備不良の車を運転することは、道路交通法違反となります。整備不良と判断された場合、ドライバーには違反点数が加算され、反則金が科せられます。また、ドライバーだけでなく、運行管理者や整備管理者、企業も車両管理責任を問われる可能性があります。

企業への信頼失墜

運行前点検を怠ったことが原因で事故が発生した場合、企業は社会的信頼を大きく失う可能性があります。最悪の場合、企業の存続に関わる事態にもなりかねません。

運行前点検の徹底:安全運転管理者の選任と従業員教育

運行前点検を徹底するためには、従業員への呼びかけだけでなく、組織的な取り組みが必要です。

安全運転管理者の選任

一定台数以上の自動車を使用する事業所では、安全運転管理者の選任が義務付けられています。安全運転管理者は、運行前点検を含む安全運転管理業務の中心的な役割を担い、点検の習慣化を促進します。

従業員への交通安全教育

安全運転管理者だけでなく、従業員一人ひとりが運行前点検の重要性を理解することが大切です。定期的な交通安全教育を実施し、点検の必要性や具体的な方法を周知徹底しましょう。

定期点検整備と車検の実施

運行前点検に加えて、定期点検整備と車検も忘れずに実施しましょう。定期点検整備は、車の各部を詳細に点検し、必要に応じて部品交換や修理を行うもので、自家用自動車の場合は1年に1回の実施が義務付けられています。車検は、保安基準に適合しているかを検査するもので、自家用自動車の場合は初回が3年後、以降は2年ごとに受ける必要があります。

アルコールチェックの義務化:ドライバーの安全確認も重要

2023年12月からは、白ナンバー事業者に対しても、運転前後のアルコールチェックが義務化されました。検知器を用いたアルコールチェックの実施、記録の保管など、適切な対応が必要です。

まとめ:運行前点検で安全なカーライフを

運行前点検は、車両トラブルや交通事故を防ぎ、安全なカーライフを送るための基本です。日々の点検を習慣化し、安全運転を心がけましょう。また、企業においては、安全運転管理者の選任や従業員教育などを通じて、組織全体で運行前点検を徹底する体制を構築することが重要です。

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