普段何気なく運転している車でも、走行中や発進時などに不調のサインが出ていることがあります。こうした症状を見逃すと、突然エンジンが止まってしまったり、深刻な故障につながったりする可能性が高まります。車の故障の原因は多岐にわたり、エンジン内部だけでなく各パーツ同士の複雑な連携によって生じることもあるため、原因を突き止めるのは一筋縄ではいきません。しかし、大まかな症状ごとに傾向を知っておけば、いざというときに慌てず対処できるでしょう。ここでは、車でよくある故障の症状や原因、対処法を詳しく解説し、日常点検や簡単にできるセルフメンテナンスのポイントも併せて紹介します。
車によくある故障症状とは
車の故障には「エンジンがまったくかからない」「エンジンの振動が大きい」「ブレーキを踏むと金属音がする」など、さまざまなパターンがあります。いずれも最初の小さな違和感を見逃してしまうと、ある日突然大きなトラブルとして表面化することが多いです。ここでは、代表的な故障・不具合の症状を取り上げ、一般的にどのような原因が考えられるかを説明していきます。
エンジンがかからない、かかりにくい
エンジンがかからない、あるいはかかりにくくなる症状は、車を動かすうえで最も深刻といえるでしょう。エンジン始動には「混合気(燃料と空気)を作る」「圧縮する」「点火する」の3つの工程が必要です。いずれか1つでも問題があればエンジンは回りません。具体的には下記のような原因が考えられます。
- ガソリンの残量不足(ガス欠)
- バッテリー上がりやターミナルの接触不良
- セルモーターやオルタネータの故障
- プラグが摩耗して火花が飛ばない
- コンピューターや電気系統のトラブル
どれが原因なのか見極めるのは専門知識が必要で、状況によってはディーラーや修理工場でも時間がかかります。エンジンがまったくかからない場合はレッカーで移動しなければならないことも多いため、あまり手をこまねいているとさらに費用がかさむ可能性もあります。早めにプロへ相談することが大切です。
エンジンの振動が大きい
エンジンの振動は多少なりともあるものですが、明らかに「いつもと違う揺れ」を感じたら要注意です。考えられる原因としては、イグニッションコイルの劣化、スパークプラグの摩耗、エンジンマウント(振動吸収部品)の劣化などが代表的です。エンジンはシリンダーそれぞれで混合気が燃焼して回転していますが、どこか一つが正常に燃焼していないとバランスが崩れ、横揺れが強くなります。また、エンジンマウントのゴムが硬化して衝撃をうまく吸収できなくなった場合も振動は増幅されるでしょう。
もし振動がひどい状態を放置すると、エンジン周りの部品に過度の負荷がかかり故障範囲が拡大する恐れもあります。早めに整備工場などで点検を受け、安全面やコスト面でのリスクを減らすのが賢明です。
エンジンルームからの異音
エンジンルームから「ガラガラ」「キュルキュル」「ヒューン」など、普段聞き慣れない音がしたらすぐに確認が必要です。異音の種類によって、おおよそ原因を推測できる場合があります。
- ガラガラ:ウォーターポンプの故障やエンジン内部の部品が摩耗している
- キュルキュル:ファンベルトの緩みや劣化
- ヒューン:オルタネータ(発電機)の損傷
こうした異音を放置するとベルトが外れて走行不能になったり、エンジンを冷却できずにオーバーヒートを引き起こしたりするリスクも高まります。変わった音がするようなら早めに専門家の診断を受けましょう。
走行中にエンジンが止まる
走行中に突然エンジンが止まる、いわゆる「ストール」の症状は非常に危険です。たとえば高速道路走行中であれば、後続車との衝突リスクが高まります。考えられる原因は多岐にわたりますが、点火系統(コンピューター)や燃料ポンプなどの不具合、スパークプラグ・プラグコードの異常などが挙げられます。また大きな振動を伴いながらエンジンが停止するなら、イグニッションコイルや燃焼系に問題が潜んでいる可能性が高いです。どれも突然起こり得るトラブルなので、異常を感じたらすぐに安全な場所へ車を移動し、業者へ連絡しましょう。
アイドリングが不安定
信号待ちなどでエンジンをかけっぱなしにしているとき、回転数が不規則に上下して車が振動する、あるいは止まりそうになる症状があります。これはアイドリング時の空気の流れを調整するスロットルボディが汚れている可能性があり、カーボンや汚れが溜まると空気の流れが阻害され、エンストを引き起こしがちです。簡易清掃で解決するケースもあれば、部品交換が必要となる場合もあるため、一度プロの診断を受けると安心です。
アクセルを踏んでもパワーが出ない
思い切りアクセルを踏んでも加速が鈍い、またはまったく速度が上がらないという場合は、エンジン内部の点火装置や燃料供給システムなどに異常が生じているかもしれません。代表的にはイグニッションコイルやスパークプラグの故障が疑われますが、吸気系・排気系を含めて問題が起きているケースもあります。いずれにせよ自己判断で部品をいじるのは危険です。安全かつ確実に修理するには、専門業者に原因特定を任せたほうが早く、後々のトラブルも防ぎやすいでしょう。
ボディのきしみ音
古い車や、長期間乗っている車では「キシキシ」「ミシミシ」というボディのきしみ音が増えることがあります。車の構造上、ボディがねじれるときに溶接部分や足回りの劣化が原因となって音が出やすくなります。特にサスペンションのブッシュやショックアブソーバーにガタが出ている場合、横揺れや段差を乗り越えた際に大きな音がすることがあるので注意が必要です。ボディの劣化は放っておくと走行安定性にも影響しますので、気になる場合は修理工場で一度しっかり点検してもらうのが望ましいです。
金属音(カラカラ、コトコトなど)
エンジン内部や周辺部品で金属音がする場合も要注意です。代表的な症状としては「カンカン」「キンキン」という高い音や、「ゴロゴロ」「ガラガラ」という低い金属音などがあります。冷却水不足が進みオーバーヒート状態になると「カンカン」音が出ることが多く、エンジンオイル不足の場合は「ガラガラ」や「ゴロゴロ」といった重たい音が発生しがちです。どちらにしても放置するとエンジン内部の部品が焼き付いてしまい、修理費が高額になる恐れがあります。早めの冷却水・オイルのチェックと交換が必須です。
ブレーキ鳴き
ブレーキを踏んだときに「キーッ」という高い音が鳴る場合、「ブレーキ鳴き」と呼ばれます。これはブレーキパッドが減って金属部分が接触しているか、パッドとディスクの間に異物が挟まっているか、パッド自体が摩耗の限界に近づいている可能性があります。とくにブレーキパッドの摩耗が進むと制動距離が長くなり非常に危険です。警告音として受け止め、早めにブレーキの点検・整備を行うようにしましょう。
ベルト鳴き
エンジンにはファンベルトやパワステベルト、エアコンベルトなど複数のベルトが使われており、これらが緩んだり劣化したりすると「キュルキュル」という大きな音が発生します。これがいわゆる「ベルト鳴き」です。放置しているとベルト切れを起こし、走行不能に陥るケースもあります。定期的に点検工場でベルトの状態を確認してもらい、必要に応じて調整や交換を行いましょう。
排気ガスの異臭・色の異常
排気ガスの匂いや色が明らかにおかしいと感じたら、エンジン内部で燃料の不完全燃焼が起きている、もしくはエンジンオイルが過剰に燃えているなどのトラブルが疑われます。さらに、車内に排気ガスが入ってくるような場合は、マフラーやエキゾーストパイプからの排気漏れが考えられ、放置すると一酸化炭素中毒の危険もあります。また、白色や青白い煙が出続ける場合はオイルを燃焼している可能性、黒色の場合は燃料過多やオイル漏れが疑われることもあります。いずれにしても早めに修理工場へ持ち込み、原因を特定してもらうことが急務です。
ボンネットからの白煙
走行後にボンネットを開けた際などに白煙が上がっている場合、冷却水またはエンジンオイルが高温部分に漏れて蒸発していることが考えられます。冷却水が不足するとオーバーヒートを引き起こし、最悪の場合はエンジン内部にダメージを与える可能性が高いです。運が悪いと車両火災の原因にもなり得るため、漏れの有無や配管の亀裂などを慎重に点検してもらいましょう。
エアコンの異音・風が出ない
エアコンから「カラカラ」「ガラガラ」といった音が出る場合、コンプレッサーやブロアファンモーターの故障が疑われます。コンプレッサーが故障すると冷風が出なくなるだけでなく、ベルト鳴きや断裂を引き起こすこともあります。また、ガス漏れなどでエアコンガスが不足していると、冷たい風が出なくなり夏場はとくに不便です。エアコンは構造が複雑で誤った処置をすると逆に故障を悪化させるため、専門家の力を借りるのが安全かつ確実です。
タイヤのパンクや損傷
タイヤのパンクは最もよく起こるトラブルの1つです。主な原因は次のようなものが考えられます。
- 釘や金属片などが刺さっている
- タイヤの溝がすり減っている(スリップサインが出ている)
- サイドウォールにヒビが入り、裂けた
タイヤがパンクしていると、車高が一部だけ沈んでいるように見えることがあります。乗り込んだときに傾きが気になるようであれば、空気圧をチェックしてみるのも手です。摩耗したタイヤは雨天時のスリップリスクも非常に高くなるため、定期的な交換が重要です。
日常点検で早期発見・故障予防を
大半の故障は、いきなり深刻な状態になる前に小さなサインとして現れます。こうしたサインを見逃さず、手軽にできる範囲で点検をしておけば、突発的なトラブルを最小限に抑えやすくなるでしょう。月に一度、あるいは少なくとも数ヵ月に一度は日常点検を行い、愛車の健康状態を把握しておくことをおすすめします。
運転席でチェックできるポイント
運転席に座ってエンジンをかけたとき、すぐにいくつかの項目が確認可能です。
- ブレーキペダルの効き具合
普段より踏み込む量が大きい、あるいは踏みごたえがおかしいと感じたら、ブレーキフルードの液漏れやパッドの摩耗を疑う必要があります。 - サイドブレーキ(パーキングブレーキ)の状態
レバーやペダルを引いた(踏んだ)ときにしっかり固定されるかどうかを確認します。 - メーター警告灯
バッテリーやエンジンオイル、ABSなどの警告灯が点灯していないか要チェックです。 - ワイパーとウォッシャー液
ウォッシャー液がきちんと噴射されるか、ワイパーにビビりが出ていないかを確かめましょう。ビビりがひどいと視界不良になり、雨の日に危険が増します。
エンジンルーム内の点検
エンジンルームを開けると、意外にも素人でも確認しやすい項目が多数あります。
- エンジンオイルの量・汚れ
オイルレベルゲージで量をチェックし、色が黒く濁っていれば交換時期を考慮します。 - ブレーキフルード
規定量より下回っていないか、色が茶色く変色していないか確認しましょう。 - 冷却水(クーラント)
リザーブタンクで量をチェックします。量が減っている場合は漏れの可能性があります。 - バッテリー液
近年はメンテナンスフリーのバッテリーが増えましたが、ターミナルの腐食やゆるみは時々確認しましょう。 - ウォッシャー液
走行中視界を確保するためにも、余裕をもって補充を心がけましょう。
タイヤの点検
タイヤは唯一地面と接している重要なパーツです。空気圧や溝の深さを点検し、亀裂や異物の付着がないかチェックします。特にスリップサインが出ている場合、1.6mm以下まで摩耗していることを意味し、交換を急がなければ重大事故を招く可能性もあるため要注意です。
灯火類の確認
ヘッドライト、ウインカー、ブレーキランプ、テールランプ、バックランプなど、いずれも夜間走行や合図に欠かせない装備です。切れているかどうかは、一人で確認しにくい場合もありますが、壁にライトを照らしたり、誰かに手伝ってもらったりして点検すると効率的です。切れやヒビがあれば早急に交換し、汚れが目立つときは拭いてクリアな光を保ちましょう。
自分で対処可能な症状とプロに任せるべき症状
車の故障や不具合には、自分である程度対応できるものと、専門業者でないと難しいものがあります。たとえば、以下のような作業なら比較的やりやすいでしょう。
- ウォッシャー液の補充
ペットボトルなどに入った補充用液を注ぐだけで解決します。 - ワイパーゴムの交換
ワイパーブレードからゴムを外し、新しいものを差し込むだけの簡単作業です。
一方、エンジン周りの分解作業や、ブレーキの脱着、エアコンガスの補充などは専門知識が必要で、ミスすると取り返しのつかないトラブルに発展する恐れがあります。少しでも不安を感じるなら、無理せずプロに任せるのがベターです。
故障車はまず専門業者に連絡しよう
車が故障したとき、どこが悪いのかを素人が正確に把握するのは簡単ではありません。誤った修理を試みると余計にダメージを与えることもあるため、基本的にはプロへの依頼が最善策です。平日は忙しくて修理工場へ行けない場合でも、電話やネットで予約を取っておけば週末にスムーズに対応してもらえるケースもあります。また、「動かない車をどうやって運べばいいのかわからない」というときも、業者がレッカー手配やロードサービスを案内してくれます。トラブルが起きたら落ち着いて連絡し、指示を仰ぎましょう。
まとめ
車の故障は突然起こるように見えても、実は少し前から症状や予兆が出ている場合がほとんどです。エンジンがかからなくなる、振動や異音が増える、ブレーキ時や排気ガスに違和感があるなど、小さな変化を早めに察知できれば深刻化を防ぎやすくなります。また、消耗品の交換や簡単な点検は日常的に行い、疑わしい症状があれば迷わずプロに相談するのが得策です。愛車を長持ちさせ、安全なドライブを続けるためにも、日頃からしっかりと異常のサインに敏感になり、メンテナンスを怠らないよう心がけましょう。