70歳以上のドライバーが運転免許証を更新する際には、道路交通法に基づく「高齢者講習」の受講が義務付けられています。この講習は、加齢に伴う身体機能や認知機能の変化が運転に及ぼす影響を理解し、安全運転を継続するための知識と技能を習得することを目的としています。しかし、「高齢者講習って具体的に何をするの?」「どんな流れで進むの?」「費用はいくらかかるの?」など、疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、高齢者講習について徹底解説します。講習の種類、内容、予約方法から、認知機能検査や運転技能検査の詳細、さらには高齢ドライバー向けの安全運転支援情報まで、あらゆる疑問にお答えします。この記事を読めば、高齢者講習の全体像を把握し、安心して免許更新に臨むことができるでしょう。
高齢者講習の対象者
高齢者講習は、運転免許証の有効期間が満了する日の年齢が70歳以上の方が対象となります。
具体的には、免許証の有効期間が満了する日の直前の誕生日が70歳の誕生日以降の方が対象となります。
高齢者講習の種類
高齢者講習には、70歳から74歳までの方が受講する「一般高齢者講習」と、75歳以上の方が受講する「75歳以上高齢者講習」の2種類があります。それぞれの講習内容は異なりますので、自分がどちらの対象か確認しておきましょう。
70歳から74歳までの方の講習内容
70歳から74歳までの方は、一般高齢者講習を受講します。
講習の内容は、座学、運転適性検査、実車指導の3つで構成され、所要時間は2時間です。
座学
座学では、道路交通法改正の内容、高齢運転者の交通事故の特徴、安全運転のポイントなどについて学びます。
また、加齢に伴う身体機能の変化や、運転に与える影響についても理解を深めます。
運転適性検査
運転適性検査では、静止視力や動体視力、夜間視力、視野などの測定を行い、運転に必要な視機能を確認します。
また、機械を使った検査では、複数の課題に同時に注意を配分する能力や、ハンドル・ブレーキの操作能力などを測定し、客観的に自分の運転能力を把握します。
実車指導
実車指導では、教習所のコース内を実際に運転し、指導員から助言や指導を受けます。
自分の運転を客観的に見てもらうことで、癖や弱点に気づき、安全運転のポイントを再確認することができます。
75歳以上の方の講習内容
75歳以上の方は、75歳以上高齢者講習を受講します。
この講習は、認知機能検査の結果によって内容が異なります。
認知機能検査
75歳以上の方は、高齢者講習の前に認知機能検査を受ける必要があります。
この検査は、記憶力や判断力を測定する検査で、30分程度で終わります。
検査結果は、「認知症のおそれがない(第1分類)」「認知機能が低下しているおそれがある(第2分類)」「認知症のおそれがある(第3分類)」の3つに分類されます。
認知機能検査の結果別講習内容
認知機能検査の結果に応じて、以下のいずれかの講習を受講します。
- 第1分類(認知症のおそれがない)と判定された方:
実車指導を含む2時間の講習を受講します。内容は70歳から74歳までの方と同様です。 - 第2分類(認知機能が低下しているおそれがある)と判定された方:
実車指導を含む3時間の講習を受講します。 - 第3分類(認知症のおそれがある)と判定された方:
臨時適性検査(専門医による診断)を受けるか、免許の取り消し等の対象となります。
第2分類の方は、第1分類の方と比べて、より個別的かつ重点的に指導を受けることができます。
運転技能検査
75歳以上の方で、一定の違反歴がある場合は、高齢者講習に加えて「運転技能検査」の受検が必要となります。
この検査は、実際の道路で運転を行い、合格基準に達しない場合は免許の更新ができません。
運転技能検査の対象となる行為は、信号無視や速度超過など18種類です。
運転技能検査の合否
運転技能検査では、第一種免許、第二種免許それぞれに応じて定められた基準以上の点数を取得した場合に合格となります。
第一種免許では70点以上、第二種免許では80点以上で合格です。
不合格だった場合でも、再受検は可能であり、期間内であれば何度でも挑戦することができます。
高齢者講習の予約方法
高齢者講習は、各都道府県の指定自動車教習所などで実施されています。
受講を希望する教習所に直接電話で予約するか、インターネットで予約できる場合もあります。
予約のタイミング
運転免許証の更新期間満了日の6か月前から受講可能です。
ハガキ(高齢者講習等の通知書)が届いたら、早めに予約しましょう。
特に、誕生日が近づいてから予約しようとすると、希望する日時が取れない可能性が高くなります。
高齢者講習に必要な持ち物
高齢者講習を受講する際には、以下の持ち物が必要です。
- 運転免許証
- 高齢者講習等の通知書(ハガキ)
- 講習手数料
- 筆記用具
- 眼鏡、補聴器など(必要な方)
認知機能検査で不合格となった場合
認知機能検査で「認知症のおそれがある(第3分類)」と判定された場合は、臨時適性検査(専門医による診断)を受けるか、運転免許の取り消し等の対象となります。
臨時適性検査を受け、認知症ではないと診断されれば、運転免許の更新が可能です。
高齢ドライバー向けの安全運転支援情報
近年、高齢ドライバーによる交通事故が社会問題となっています。
安全運転を続けるためには、高齢者講習を受講するだけでなく、日頃から自身の体調や運転能力を把握し、安全運転を心がけることが重要です。
安全運転を支援する機能
近年、安全運転を支援する機能(安全運転サポート車、通称:サポカー)を搭載した車が増えています。
これらの機能を活用することで、交通事故のリスクを低減することができます。
例えば、衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)や、ペダル踏み間違い時加速抑制装置などの機能があります。
家族や周囲のサポート
高齢ドライバーの安全運転には、家族や周囲のサポートも重要です。
体調が悪いときは運転を控えるよう促したり、運転に不安がある場合は同乗してアドバイスしたりするなど、周囲が協力して安全運転を支援しましょう。
運転免許証の自主返納
運転に不安を感じたり、体力の衰えを感じたりした場合は、運転免許証の自主返納も選択肢の一つです。
運転免許証を自主返納すると、各自治体で様々な特典を受けられる場合があります。
例えば、公共交通機関の割引や、タクシーの利用券の交付などがあります。
まとめ
高齢者講習は、70歳以上のドライバーが安全運転を続けるために必要な講習です。講習では、加齢に伴う身体機能や認知機能の変化が運転に及ぼす影響を理解し、安全運転のための知識と技能を習得します。75歳以上の方は、認知機能検査の結果によって講習内容が異なります。また、一定の違反歴がある場合は、運転技能検査の受検も必要です。
高齢者講習を機に、自身の運転能力を客観的に見つめ直し、安全運転について改めて考えてみましょう。また、安全運転を支援する機能の活用や、家族や周囲のサポートも重要です。運転に不安を感じたら、運転免許証の自主返納も選択肢の一つです。
高齢者講習は、単なる免許更新の手続きではなく、安全運転を続けるための重要なステップです。この記事が、高齢者講習の理解を深め、安全運転に役立つことを願っています。