運転免許更新の基本的な考え方
日本では、運転免許証を定期的に更新することが義務付けられています。とりわけ75歳以上の方については、加齢に伴う身体機能や認知機能の変化を見据えたうえで、特別な手続きや検査を受ける必要があります。免許更新の際に事故や違反を未然に防止するための取り組みとして、認知機能検査や高齢者講習、さらには運転技能検査が実施されています。更新手続きの流れや受検・受講内容を知っておくことは、スムーズに免許を更新するために非常に重要です。本記事では、75歳以上の方が免許更新に際して押さえておきたいポイントを、詳細かつ分かりやすく解説していきます。受検・受講時期や手数料、合格基準なども含め、ぜひご一読ください。
75歳以上の方に求められる手続き
運転免許証(またはマイナンバーと一体化したマイナ免許証)の更新期限が満了する日の時点で75歳以上となる方には、以下の手続きが原則として必要になります。
- 認知機能検査
- 高齢者講習
これらは、更新期間満了日の6か月前から受けることが可能です。余裕をもって手続きを進めないと、予約が取りづらくなるケースや、結果によって追加の手続きが必要になる場合もあるため、早めの行動が望まれます。
なお、過去3年間に信号無視などの一定の違反歴がある方は、加えて運転技能検査に合格する必要があります。運転技能検査に合格しなければ免許を更新することができませんので、違反歴がある方は特に注意してください。
特定の違反歴がある方に必要な運転技能検査
運転技能検査の受検対象者
75歳以上の方で、過去3年間に「信号無視」「通行区分違反」「通行帯違反等」「速度超過」「横断等禁止違反」「踏切不停止等・遮断踏切立入り」「交差点右左折方法等違反」「交差点安全進行義務違反」「横断歩行者等妨害等」「安全運転義務違反」「携帯電話使用等」という11類型のいずれかの違反がある方は、運転技能検査を受検し合格しなければなりません。ただし、二輪や原付、大型特殊、小型特殊のみの免許しか保有していない場合は、運転技能検査の対象外です。
対象者には、有効期限満了日の約190日前に公安委員会から「運転技能検査、認知機能検査及び高齢者講習のお知らせ」が郵送されます。案内が届いたら速やかに検査の予約をすることが推奨されます。
運転技能検査の予約方法と実施場所
運転技能検査は、大阪府であれば門真運転免許試験場や光明池運転免許試験場、あるいは運転免許取得者等検査を行う自動車教習所などで受検できます。受検したい場所が決まったら、直接電話や窓口などで予約を行いましょう。ただし、教習所によっては予約が非常に埋まりやすい場合があります。更新期限が迫ってからでは希望日を取れない恐れがあるため、通知を受領したらできるだけ早く行動してください。
運転技能検査の内容と合格基準
運転技能検査は、指定されたコースを実際に自動車で走行し、指示速度での走行、一時停止、交差点での右左折、信号通過、段差乗り上げといった課題を順次こなす形で進められます。採点は以下の基準で行われます。
- 大型第二種・中型第二種・普通第二種免許保有者:合格点80点以上
- 上記以外の免許保有者:合格点70点以上
ただし、70~79点の場合でも、第二種免許を返納するという条件を受け入れれば、免許の更新自体は可能となっています。つまり、第二種免許の保持を諦めることで、第一種免許としての更新が認められる場合があるということです。
検査時間と手数料
運転技能検査は通常、約1時間程度で終了します。検査手数料の標準額は3,550円(令和7年3月24日以降は3,650円)ですが、自動車教習所等で行われる「運転免許取得者等検査(運転技能検査同等方法)」を受検する場合は、施設ごとに手数料が異なることもあります。事前に予約の際に料金を確認すると安心です。
運転技能検査の合否と免許更新への影響
運転技能検査で不合格となった場合は、免許の更新手続きを進めることができません。再度受検して合格すれば更新可能ですが、試験場や教習所の混雑状況によっては間に合わないケースもあります。ただし、二輪・原付・大型特殊・小型特殊の免許しか保有していない場合は、希望すれば運転技能検査を受検せずとも免許の更新が可能です。
認知機能検査の詳細
認知機能検査を受検する理由
75歳以上の方が免許を更新する場合には、認知機能検査を受検することが義務付けられています。これは、記憶力や判断力の低下により事故のリスクが高まる可能性があるため、あらかじめ検査を実施して自分自身の状態を把握してもらうことを目的としています。もし検査結果で認知症のおそれがあると判定された場合、公安委員会の指定する医師による診断や、主治医の診断書の提出が必要です。診断結果に基づいては免許が停止・取消の措置を取られる可能性があるため、慎重な対応が求められます。
検査の流れ
認知機能検査は、大阪府では門真・光明池の運転免許試験場や、多くの自動車教習所などで受検できます。受検対象者には運転技能検査の案内と同じく、有効期限満了の約190日前に公安委員会から通知が届きますので、受領後できるだけ早めに予約しましょう。混雑している施設の場合は、予約取得に時間がかかることがあります。
検査の内容
認知機能検査では、主に「記憶力」「判断力」の2つを確認します。具体的には、以下の2種類の検査が行われます。
- 手がかり再生
いくつかのイラストを記憶し、一旦別の課題に取り組んだ後、思い出せるだけ答えます。さらにヒントをもとに再度回答する段階もあり、記憶を呼び起こす力を測定します。 - 時間の見当識
検査時点での「年月日」「曜日」「現在の時刻」をどれくらい正確に把握しているかを確認します。加齢に伴って見当識が損なわれるケースもあるため、これらを質問形式で答えていきます。
この検査によって得られる結果はあくまで簡易的に認知症リスクを把握するものであり、認知症そのものを確定診断するわけではありません。ただし、結果によっては医師の診断が必須となる場合があるので、受検した時点で異常があれば早期発見と対処につながる可能性もあります。
検査時間と手数料
認知機能検査は約30分程度で実施され、標準的な検査手数料は1,050円です。こちらも「運転免許取得者等検査(認知機能検査同等方法)」を行う認定自動車教習所などでは手数料が異なることがあるため、予約時に確認しておきましょう。
検査結果の取り扱い
検査終了後、実施施設で「認知機能検査結果通知書」が渡されます。総合点の評価によって「認知症のおそれあり」と判定された場合は、公安委員会指定の医療機関を受診するか、主治医の診断書を提出しなければなりません。その結果、認知症と診断されると、免許の停止または取消しの手続きに進む可能性があります。
認知機能検査の免除
医療機関で作成された診断書を提出し、認知機能に問題がないという医師の意見とその検査結果が明記されていれば、認知機能検査自体を免除できる場合があります。具体的には「更新期間満了日の6か月以内」に作成された診断書であることなどが条件とされています。免除を希望する方は、該当診断書を提出する前に管轄の運転免許センターや試験場へ確認するとよいでしょう。
高齢者講習の詳細
高齢者講習の目的
高齢者講習は、加齢によって低下しうる身体機能や認知機能が、運転にどのような影響を与えるかを学ぶ場です。実際に車を運転しながら指導を受けることで、注意力や動体視力などの衰えを客観的に認識し、自分の運転に活かすことが目的となっています。
高齢者講習の予約方法と実施場所
高齢者講習も、運転技能検査や認知機能検査と同様に試験場や自動車教習所で実施されています。大阪府の場合は門真・光明池の運転免許試験場で受講するほか、多くの教習所でも受けることが可能です。こちらも早めの予約が必須であり、更新期限が近づくと希望日が取りづらくなる恐れがあります。
高齢者講習の内容と所要時間
講習の内容は、受講者が保有している免許の種類によって2つに分かれます。
- 実車ありの講習(普通自動車対応免許を保有している方)
- 時間:2時間
- 標準額:6,450円(令和7年3月24日以降は6,600円)
- 内容:講義、運転適性検査器材を用いた指導、実車による運転指導
- 実車なしの講習(二輪・大型特殊などのみを保有している方)
- 時間:1時間
- 標準額:2,900円(令和7年3月24日以降は2,950円)
- 内容:講義、運転適性検査器材を用いた指導
実車ありの講習では、実際に車を運転しながら、ブレーキの踏み込み具合や反応速度などを専門の指導員がチェックします。これにより、自身の運転技能を客観的に把握し、今後の安全運転に役立てることが期待できます。
高齢者講習の免除
75歳未満の高齢者講習を受ける方には、更新時講習の免除規定などがありますが、75歳以上の方は認知機能検査とセットで高齢者講習が義務化されています。なお、一部の特定任意高齢者講習を受けた場合や「運転免許取得者教育(高齢者講習同等課程)」を受講済みの場合は、手続きが簡略化されるケースがあります。
運転免許更新手続きの予約について
大阪府では、運転免許更新手続きを行う際、オンライン予約システムを利用した完全予約制となっています。高齢者講習や認知機能検査、運転技能検査を終えたあとでも、改めて免許更新手続きの予約が必要になる点に注意しましょう。混雑時期には予約が取りづらいことがあるため、十分に余裕を持って予約することが大切です。
手続きの際には以下の書類を忘れずに持参してください。
- 高齢者講習終了証明書(または特定任意高齢者講習終了証明書、運転免許取得者教育(高齢者講習同等課程)終了証明書)
- 認知機能検査結果通知書
- 運転技能検査受検結果証明書(対象者のみ)
- 現在の運転免許証(またはマイナ免許証)
- 更新に必要な手数料や写真(写真が必要な場合)
これらをそろえ、指定の予約日時と場所にて更新手続きを行います。手続きの詳細や予約方法は、各都道府県警察の免許センター・試験場の案内ページや窓口などで確認してください。
自主返納という選択肢
もし、普段から車を運転しない、あるいは運転する必要がないという場合は、更新手続きではなく「運転免許証の自主返納」を考えてみるのも一つの方法です。自主返納をすれば、高齢運転者としての交通事故リスクから解放されるだけでなく、運転免許証の管理コストや更新にかかる時間的負担、金銭的負担も軽減できます。後々になって運転免許が必要になった場合、改めて免許を取り直す手間はありますが、近年は公共交通機関やタクシーの割引サービス、コミュニティバスなど、移動手段の選択肢は多様になっています。高齢者を対象とした運転経歴証明書を取得することで、公的な身分証明として代用する道もありますから、免許証が必須かどうかを再検討してみるのも良いでしょう。
まとめ
本記事では、75歳以上の方が運転免許を更新するために必要な手続きや検査について解説しました。認知機能検査や高齢者講習は、高齢者ドライバーの安全を守るために不可欠なプロセスです。過去3年間に特定の違反歴がある場合は、運転技能検査の受検も必須となるため、早めに予定を立てることが重要です。更新時にはオンライン予約が必要で、免許証の自主返納という選択肢もあることを覚えておきましょう。高齢ドライバーにとって、安心かつ安全な運転を継続するために、こうした制度や検査の趣旨をよく理解し、日頃からご自身の身体機能や認知機能を客観視する姿勢が大切です。