道路交通法の知識として、路側帯は意外と誤解されがちなエリアです。車道外側線との違いや路肩との区別があいまいなまま運転していると、思わぬ交通違反や事故につながることもあります。そこで本記事では、路側帯の定義や法的な位置づけ、普通の路側帯・歩行者用路側帯・駐停車禁止路側帯といった種類に加え、駐車・停車のルールなどを詳しく解説していきます。特に、歩道がない道路では歩行者の安全を確保する要ともなる重要な部分ですので、改めて正しい知識を身につけてみましょう。
路側帯とは何か
路側帯とは、車道の端に設けられた「歩行者などが安全に通行するためのスペース」のことです。歩道が設けられていない道路や、片側だけ歩道がある道路の反対側など、歩行者がそのままでは車道を歩かなければならないような箇所に設置されます。道路交通法においては次のように定義されています。
道路交通法 第2条
三の四 路側帯 歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つため、歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で、道路標示によって区画されたものをいう。
ここで重要なのは「歩道が設けられていない道路か、その道路の歩道がない側」に設置されるという点です。歩道と違って段差がなく、車道との間に白線などの道路標示が引かれて区切られています。一般的に、歩道ほどの広さが確保されていない場合が多いのが特徴です。
また、「車道の効用を保つために設けられる」という点も押さえておきたい部分です。これは、車道が本来の機能を損なわないように交通を整理する目的を持つことを意味しています。しかし最も大きな目的は、あくまでも歩行者を車両の通行から保護するためのスペースを確保することにあります。
路側帯の区画線と車道外側線
路側帯を区切っている白線は「車道外側線」と呼ばれますが、道路の状況によって呼び方や役割が少し変わることがあります。歩道がある場合、その白線は「車道外側線」として車道の左端を示すだけであり、その内側が車道、外側が歩道という形になります。一方で歩道がない場合に設置された白線は、路側帯と車道を区分する線となり、その内側が車道、外側が路側帯です。いずれにしても、白線の外側が「歩行者のための空間」となる場合もあれば、「ただの車道端(路肩等)」にとどまる場合もあるため、実際に走行する際には注意深く区別する必要があります。
路肩との違い
「路側帯」と混同されがちなものに「路肩」があります。どちらも車道の外側にあり、歩行者がいるイメージは似ていますが、法的な定義や設置目的は大きく異なります。道路構造令では、路肩について以下のように定義しています。
道路構造令 第2条
十二 路肩 道路の主要構造部を保護し、又は車道の効用を保つために、車道、歩道、自転車道又は自転車歩行者道に接続して設けられる帯状の道路の部分をいう。
このように、路肩は「道路の構造や車道を保護する目的」で設けられるものであり、あくまで「走行車両から道路を守る」機能が重視されています。一方、路側帯は「歩行者が安全に通行できるように設けられた空間」であることが第一の役割です。
路肩はどのような場所にあるのか
路肩は道路の縁部分に設置されることが多く、特に高速道路などで目にする機会が多いでしょう。高速道路における「非常駐車帯」や「退避スペース」なども、広義には路肩の機能を持った場所です。緊急時にのみ停車が認められていることが多く、普段は一般車両が通行することはありません。反対に、路側帯は日常的に歩行者が通行することを想定して設定されているため、あくまで「歩行者用の空間」として道路交通法上のルールが整備されているわけです。
路側帯の種類
路側帯には大きく分けて3種類があります。それぞれ白線の引き方や規制内容が異なるため、運転者であれば見分けがつくようにしておきたいところです。
1本の白線で区画された「普通の路側帯」
一般的な路側帯は、車道との境界に白線が1本引かれています。このタイプの路側帯は「普通の路側帯」と呼ばれ、歩行者だけでなく自転車などの軽車両も通行できます。自転車が法的に「軽車両」に分類されることはよく知られていますが、この普通の路側帯上であれば、自転車が走っても違法ではありません。ただし、あくまでも歩行者の安全確保が最優先されるエリアですので、歩行者を妨げないように配慮が求められます。
白線2本で区画された「歩行者用路側帯」
2本の平行な白線によって区画された路側帯は「歩行者用路側帯」と呼ばれます。普通の路側帯との最大の違いは「歩行者しか通行できない」という点です。ここでは自転車を含む軽車両ですら立ち入ることが禁止されています。歩行者の通行を徹底的に優先する区間であり、特に歩行者が多い地域や狭い道路などでは、この「歩行者用路側帯」が引かれていることがあります。
破線と実線で区画された「駐停車禁止路側帯」
白い破線(左側)と白い実線(右側)の2本によって区切られたエリアは、「駐停車禁止路側帯」です。名前のとおり、ここでは原付やバイク、自動車などあらゆる車両の駐停車が禁止されています。通常の路側帯であれば条件によって駐車が許可される場合もありますが、駐停車禁止路側帯に限っては、その名のとおり一切の駐停車が許されないため、違反になると取り締まりの対象となるので注意が必要です。
路側帯を通行できる車両・できない車両
路側帯は原則として「歩行者のための通行スペース」です。そのため、自動車や原付、バイクが通行することは法律で禁止されています。これは「普通の路側帯」「歩行者用路側帯」「駐停車禁止路側帯」のいずれの場合でも同じです。そもそも、車道である左車線を離れ、路側帯上を走行すること自体が交通違反となる可能性が高いのです。
ただし、自転車(軽車両)は「普通の路側帯」に限り、歩行者の通行を著しく妨げない範囲であれば通行できます。一方で「歩行者用路側帯」や「駐停車禁止路側帯」では自転車の通行すらできません。とりわけ「歩行者用路側帯」は歩行者専用エリアですので、自転車が走行するのは明確な違反になります。
進行方向左側の路側帯のみ通行可能(自転車の場合)
自転車の場合、法律上は「進行方向の左側にある普通の路側帯」だけ通行が認められています。右側にある路側帯を逆走する形で走行することは違反です。歩道がない道路であっても、ルールを守らずに走っていると自動車との接触や事故につながりやすいので、注意が必要です。
路側帯への駐車ルール
運転者として気になるのが「路側帯への駐車がどのように扱われるか」という点でしょう。駐車ルールは路側帯の種類ごとに異なります。また、道路幅や路側帯の幅によっても規定が変わりますので、正確に把握しておかないと違反に問われる可能性があります。
普通の路側帯の場合
白線1本で区画された普通の路側帯では、車を停める際に次の基準に注意が必要です。
- 路側帯の横幅が0.75m以下の場合
この場合、車両を無理に路側帯に入れてしまうと、歩行者が通行するスペースが著しく狭くなってしまいます。したがって、路側帯には入れずに白線の外側(車道側ギリギリ)に沿う形で停車・駐車します。
ただし、たとえ横幅が狭くても、駐停車禁止標識や駐車禁止標識が設置されている場所は停車・駐車自体が認められないので要注意です。 - 路側帯の横幅が0.75mを超える場合
路側帯内に入れて駐車しても問題ありませんが、車の左側面が路端から0.75m以上離れていることが条件です。要するに、人が通れるスペースをしっかりと確保したうえでの停車・駐車であれば許可されるという考え方です。
駐停車禁止路側帯の場合
白線と破線で区切られている駐停車禁止路側帯は、その名のとおり駐車・停車ともに禁止されています。たとえ路側帯の幅が広く0.75mを超えていても、車両を路側帯内に停めることはできません。どうしても停車が必要な場合は、路側帯に入れず、かつ駐停車禁止標識の範囲外で、道路上に3.5m以上の余地を確保できる場所を探すしかありません。違反で取り締まられるリスクも高いため、駐停車禁止路側帯は基本的に「車を止めてはいけないエリア」と認識しておくのが賢明です。
歩行者用路側帯の場合
歩行者用路側帯(白線2本で区画されているタイプ)も、歩行者専用のエリアですので、そこに車を乗り入れ駐車する行為は基本的に禁止されています。0.75mを超えるかどうかにかかわらず、車が侵入してはいけない場所だと理解しておきましょう。万が一にも歩行者と接触すれば重大な事故につながる可能性がありますから、十分な配慮が必要です。
駐車・停車が禁止される場所の再確認
路側帯以外にも、道路上には「駐車禁止」「駐停車禁止」が設定されるエリアがあります。標識や標示によって明示される場合が多いですが、法律で一律に駐車・停車を禁止している場所もあるため、主な例を再確認しておきましょう。
駐車禁止の場所(一例)
- 駐車禁止標識や標示がある場所
- 火災報知器の周囲1m以内
- 自動車専用出入り口の3m以内
- 道路工事区域の端から5m以内
- 消防用機械器具置場、防火水槽の5m以内
- 消火栓や指定消防水利の標識の5m以内
これらに加えて、自治体や管轄警察が独自で指定している「駐車禁止区域」もあります。とりわけ大都市部では、駐車違反取り締まりが厳しく行われることも多いため、道路標識を注意深く確認する必要があります。
駐停車禁止の場所(一例)
- 駐停車禁止標識や標示がある場所
- 路面電車の軌道敷内
- 坂道の頂上付近
- トンネル内
- 交差点とその端から5m以内
- 横断歩道や自転車横断帯の手前5m以内
- 踏切の前後10m以内
- 安全地帯の左側とその前後10m以内
- バスや路面電車の停留所(標識板から半径10m以内・運行中に限る)
これらの場所は、停止・停車するだけでも道路交通の安全を害しやすい地点と考えられています。また、特に混雑が激しい幹線道路や生活道路の一部にも、警察や自治体の独自ルールで駐停車禁止が追加指定されていることがあるため、標識・標示の見落としに注意しましょう。
無余地駐車禁止について
道路上で駐車や停車をした際、車両の右側に3.5m以上の余地が確保できない場合は「無余地駐車禁止」に該当し、駐停車が禁止されます。具体的には、車両を左端に寄せてもなお対向車線側まで3.5mのスペースがなければ、その場所での駐車や停車は認められないということです。とりわけ片側一車線の狭い道路や歩行者・自転車の往来が激しい通学路などでは、この無余地規制が適用されるケースが少なくありません。
路側帯での原付や自動車走行はNG
前述のとおり、路側帯は歩行者や自転車(軽車両)のために確保された空間です。運転者としては「渋滞がひどいから路側帯を走って追い越そう」と考える人もいるかもしれませんが、これは明確な違反行為です。警察の取り締まり対象にもなりやすく、周囲の車や歩行者にとっても危険極まりない行動ですので絶対にやめましょう。
また、原付バイクの運転者も、車道を安全に走るように指導されています。路側帯や歩道上を「ちょっとだけだから」と走行するのは違反行為であり、歩行者との接触事故リスクも高まります。
路側帯を横断するときの注意点
歩行者が多い道路では、ドライバーとして路側帯を横切らなければならない場面があるかもしれません(たとえば狭い駐車場の出入り口など)。その際には一時停止し、歩行者がいないか十分に確認してから徐行、または停止して譲るなど安全確保を最優先に行動する必要があります。路側帯は歩行者が「安心して歩行できる」ことを目的とするスペースなので、車の出入りが混在してしまうと大変危険です。
路側帯を巡るトラブルと注意点
地方や住宅街など、歩道の整備が行き届いていない場所では、路側帯に駐車したり半ば常習的に停車している車を見かけることがあるかもしれません。しかし、狭い路側帯に車を置くことは、歩行者や自転車の通行を妨げるばかりでなく、万が一の衝突・接触事故を引き起こすリスクが高まります。特に夜間や見通しの悪い時間帯に路側帯に停められた車は、歩行者が車の脇を通行しにくくなるだけでなく、後続車両との事故を誘発する要因ともなり得ます。
路側帯と違法駐車の取り締まり
近年では、駐車監視員の活動により、都市部を中心に路上駐車の取り締まりが強化されています。路側帯であっても、定められたルールを守っていなければ即座に違反として処理されるケースが増えています。特に駐停車禁止路側帯や歩行者用路側帯に車が乗り上げていると、ほぼ確実に取り締まりの対象となるため、「たった数分だから」と甘く考えるのは非常に危険です。
路側帯に関わる事故防止のポイント
- 歩行者や自転車への配慮を徹底
路側帯は歩行者を守るためのエリアです。車両が侵入しないのはもちろん、ドアを開ける際などにも周囲をよく確認しましょう。 - 正しい駐車位置を確保
路側帯の幅や道路の余地を確認し、3.5m以上の余裕がなければ停車しないことが原則です。狭い道路ではそもそも駐停車が難しい可能性があります。 - 標識・標示を見落とさない
普通の路側帯や歩行者用路側帯かどうか、駐停車禁止路側帯なのかといった見分けがつくようにしておきましょう。破線の有無、線の本数などをしっかり確認するクセをつけると、違反リスクを下げられます。
まとめ
路側帯は歩行者を守るために設けられた大切なエリアです。歩道がない道路の端に白線で区画されたスペースがあれば、そこは基本的に歩行者の通行領域であり、自転車以外の車両は乗り入れ禁止と覚えておきましょう。特に駐停車禁止路側帯と歩行者用路側帯では、一切の駐車や自転車走行すら許されません。違反をすれば取り締まりの対象となり、事故のリスクも高まります。正しいルールを把握し、安全・安心な道路交通を実現していきましょう。