自転車は、日常生活に欠かせない便利な移動手段です。通勤・通学、買い物など、幅広い用途で利用されています。しかし、その手軽さゆえに、交通ルール軽視の傾向も見られ、事故発生のリスクも伴います。
2024年11月、自転車運転に関する道路交通法が改正され、罰則が強化されます。2023年4月のヘルメット着用努力義務化とは異なり、今回の改正は違反すると罰則の対象となるため、自転車利用者は必ず内容を理解し、安全運転を心がける必要があります。本稿では、改正のポイント、傘さし運転の現状、そして企業の責任について詳しく解説します。
自転車は「軽車両」:クルマやバイクと同様の責任
自転車は、道路交通法上「軽車両」に分類されます。つまり、歩行者ではなく、自動車やバイクと同じ扱いです。5歳頃から乗り始め、小中学生・高校生の主要な移動手段であることから、歩行者と誤解されがちですが、軽車両としての責任を理解することが重要です。軽車両の運転は、自動車やバイクと同様に大きな責任と危険を伴います。交通ルールを遵守し、自身だけでなく、歩行者等の安全確保に努めなければなりません。
改正道路交通法の3つの重要ポイント
今回の改正で特に重要なのは以下の3点です。
「ながら運転」の罰則強化 (2024年11月1日施行)
運転中のスマートフォン等の使用に対する罰則が強化されました。
具体的には、通話(ハンズフリー装置使用時を除く)、操作、画面の注視が禁止されます。自転車に設置したスマートフォンの操作・注視もNGです。
違反した場合、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。交通の危険を生じさせた場合は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
14歳以上が検挙対象となるため、中学生・高校生も注意が必要です。
ハンズフリー装置を用いた通話は認められますが、イヤホン使用時の運転は、安全運転義務違反に該当する可能性があり、多くの自治体で条例により禁止されています。
「酒気帯び運転」の罰則化 (2024年11月1日施行)
これまで自転車の飲酒運転は「酒酔い運転」のみが処罰対象でしたが、改正により「酒気帯び運転」も処罰対象となります。
「酒酔い運転」とは、酩酊状態で運転することで、アルコール濃度とは直接関係ありません。「酒気帯び運転」とは、呼気1リットルあたり0.15mg以上、または血液1ミリリットルあたり0.3mg以上のアルコールを保有した状態で運転することです。
自転車でも「飲んだら乗るな」が徹底されます。
酒気帯び運転の場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。また、飲酒運転を助長する行為(酒類の提供、自転車の提供、飲酒運転を知りながら同乗依頼)も罰則の対象となります。
「青切符」による取締り導入 (2026年5月23日までに施行)
従来、自転車の違反取締りは「自転車指導警告カード(黄色カード)」または「赤切符」でしたが、改正により「青切符」(反則金制度)が導入されます。対象は16歳以上で、113の違反行為が規定されています。
施行までは猶予期間がありますが、2024年11月からは、信号無視、一時停止違反、逆走、徐行違反、斜め横断、通行禁止違反、傘さし運転、イヤホン装着運転、整備不良など、重大な事故につながる可能性のある違反行為に対し、重点的な取締りが行われる予定です。
「青切符」導入後も、危険な運転は「赤切符」の対象となり、刑事罰が科せられます。
傘さし運転は違反!自転車への固定も危険
傘をさしながらの自転車運転は、道路交通法違反です。視野の妨げ、バランスの喪失など、危険な運転につながるため禁止されています。多くの都道府県で条例により禁止されており、例えば東京都では5万円以下の罰金が科せられます。
自転車用傘ホルダーの使用も、傘さし運転と同様に危険であり、違反とみなされる可能性が高いです。雨天時はレインウェアの着用、または自転車での移動を諦め、徒歩や公共交通機関を利用するなど、安全な方法を選択しましょう.
事業者も従業員教育を徹底する責任あり
今回の改正を受け、警察による啓発活動と取締りが強化される見込みです。事業者は、従業員への交通ルール教育を徹底し、安全運転を促す必要があります。
業務中の自転車事故は、業務の停滞、従業員の反則金負担、企業イメージの低下など、事業活動に悪影響を及ぼします。特に、忘年会などで飲酒後、自転車で帰宅途中に事故が発生した場合、企業の責任も問われる可能性があります。
自転車のルール厳罰化は、交通事故防止のための重要な施策です。事業者を含め、すべての自転車利用者がルールを遵守し、安全な社会の実現に貢献していく必要があります。大人が模範となり、子供たちにも交通安全意識を根付かせていきましょう。
まとめ
自転車は手軽な移動手段ですが、交通ルールを守らなければ重大な事故につながります。2024年11月の法改正を機に、自転車利用者一人ひとりが交通ルールを遵守し、安全運転を心がけるようにしましょう。事業者は、従業員への教育を徹底し、安全な職場環境づくりに努める必要があります。 これらの取り組みが、悲惨な交通事故を減らすことに繋がります。