高齢者ドライバーの事故はなぜ増えている?運転マナー・対策について解説

高齢者ドライバーの事故はなぜ増えている?運転マナー・対策について解説

年号が令和に変わり、1年以上が過ぎた現在。未知の感染症の到来により報道は風化しつつありますが、忘れてはならない悲惨な事故があったことは皆さまの記憶にも新しいのでは無いでしょうか。

「東池袋自動車暴走死傷事故」では、加害者の男性の立場・事故後の対応など、加害者男性にクローズアップした報道が多かった当該事故ですが、2人の命が失われたという事実。そして、その原因はやはり「高齢者の運転」にあるということは忘れてはいけません。
今なお、問題となっている高齢者ドライバーの事故問題を掘り下げていきましょう。

高齢者の運転免許保有数

そもそも我が国は急速に高齢化が進み、総人口の21%以上が65歳以上という「超高齢社会」となっています。我が国の高齢化率は27.3%であり、約4人に1人が高齢者というのが現状です。
その中でも、75歳以上の後期高齢者は高齢者マークを乗用車へ貼付する義務・高齢者教習を受講する義務が課されているのはドライバーの皆さんはご存知のとおりでしょう。

その対象である「後期高齢者ドライバー」の数は年々増加しているのです。
内閣府のデータによると、平成28年末の運転免許保有者数は約8,221万人であり、このうち75歳以上の免許保有者数は約513万人です。
この513万人という数字は75歳以上の人口の約3人に1人であると言われています。

つまり、運転免許保有者総数の約6%は後期高齢者であり、後期高齢者総数の約30%は運転免許保有者であるのです。
また、この数値は増加していきます。令和3年には75歳以上の免許保有者数は613万人に達するといった推移も予想されております。※⑴

上記のデータから見るに、単純に高齢者人口が増加したから高齢ドライバーの事故件数は増えたのでしょうか?実は一概にそうと言うことはできません。

※出典:⑴高齢者を取り巻く現状1高齢化の進展交通安全白書内閣府
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h29kou_haku/zenbun/genkyo/feature/feature_01.html

高齢運転者による死亡事故

何故、一概にそう言えないのでしょうか。それは高齢者の年齢的な判断力等の欠如が挙げられます。
事実、75歳以上の運転者の死亡事故件数は75歳未満の運転者と比較して、免許人口10万人当たりの件数が2倍以上多くなっているのです。

その理由としては下記のものが主であると言われています。
・視力低下等により、周囲の状況を得にくく、適切な判断を欠く。
・反射神経が鈍くなり、とっさの対応が遅れる。
・体力の衰えにより、運転操作が不的確かつ長時間の運転継続が困難になる。
・運転が自分本位になり、交通環境を客観的に把握ができにくくなる。
など、以上の事が挙げられます。

さらに、上記の理由にも挙げた「不的確な運転操作」にも当たる、「ブレーキとアクセルの踏み間違い」は75歳以上の運転者と75歳未満の運転者とでは、約2倍以上75歳以上の運転者の方が多いという結果もあります。※⑵
高齢者人口の増加に加え、高齢者の身体的な衰えが高齢者ドライバーの事故件数を増加させてしまっていることが見て取れます。

※出典:⑵高齢者を取り巻く現状3高齢運転者による交通死亡事故の特徴交通安全白書内閣府
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h29kou_haku/zenbun/genkyo/feature/feature_01.html

東池袋自動車暴走死傷事故のケースに置き換えると

上記の一般的な高齢ドライバーの事故ケースを鑑みて、池袋暴走事故のケースを紐解きます。すると、この事故に置いても加害者の特殊な素性などを差し置いても一般的な高齢ドライバーの死傷事故と変わらないケースであるということがわかります。

まず、当該事件において引き起こされた原因というのが「運転操作」の誤りにあります。
前の項目でも示したとおり、不的確な運転操作が行われたということです。事実、加害者は「アクセルが戻らなくなった」と言っていたことがドライブレコーダーに記録されていますが、事故後の調査において乗っていた車には支障が無かったことがわかっています。

そのため、「アクセルが戻らなくなった」との加害者本人の発言は、「アクセルを戻す動作ができなかった」と読み変えることができます。また、自身の過失を自覚できないところも上記で示した自分本位な運転の結果であると言えるでしょう。

このように、大々的に取り上げられた当該事故でさえも、結論としては高齢ドライバーの事故のケースに他ならないのです。
しかし、大きく取り上げられた背景には、加害者の社会的立場が高いというワイドショー的な側面もありますが、何より、昼間の池袋という都会の中心で2名が無くなり、数名が怪我を負ったという大きな事故であったことが挙げられます。
東京の中心地であり、見通しが良い交差点。かつ、人通りが多い場所であっても高齢ドライバーが猛スピードで運転し、事故を引き起こすという危険を孕んでいるのです。

では、そうした諸問題に対して何か対応策は講じることが可能なのでしょうか。

高齢運転者への政府・行政の対策

高齢者ドライバーに対して、まず行いたいことが自身への自覚を促すということが大切です。家族・周りのサポートがあって、初めて運転をやめる決心がついたという高齢者の方は多いといいます。

しかしながら、免許を持っている以上「運転が可能である権利」を有している訳ですし、運転免許証はポピュラーな身分証明書としての有用性も備えています。
権利を自ら放棄したり、便利な身分証明書を自ら手放したり…ということはいざ決心がつきにくいものです。そうした高齢者の方へ免許返納を促す方策として、行政はさまざまな取り組みを行っています。

例えば、東京都では警視庁が主導となり、運転免許証を自主返納した高齢者には「運転経歴証明書」を発行する取り組みをおこなっています。※⑶

この「運転経歴証明書」には特典がついており、高齢者運転免許自主返納サポート協議会の加盟店などで特典を受けられるようになっています。また、免許証を返納しても運転経歴証明書を受け取れることにより、先ほど上記で述べたデメリットである「身分証明書としての有用性」を保持することができます。

こうした取組等により、認識機能が低下してしまった高齢者にそもそも車に乗せないようにする対策は取られています。では、逆に危険運転をする高齢者ドライバーにいつ遭遇するかわからない我々一般ドライバーはどう対処すれば良いのでしょうか?

※出典:⑶運転免許の自主返納をサポート警視庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotsu/jikoboshi/koreisha/shomeisho/henno.htm

危険運転の高齢運転者に遭遇した場合の対策

ここからが本題と言っても過言ではありません。
昨今を取り巻く状況として、高齢運転者もさることながら、あおり運転問題など多種多様な「危険運転」そのものが問題視されています。危険運転には出くわしたくないものですが…高速道路の運転中・車での旅行中など長旅をする際には付き物です。
まずは、危険運転の対処法として、以下が挙げられます。

危険運転の予兆を見つけること

危険運転の車には多くの予兆が見受けられます。どう見てもフラフラと蛇行運転を繰り返している車や、明らかな改造車など…一般的に考えてありえない運転行動をする車には相応の特徴があります。まずはそれを察知することが重要です。

車間距離を空ける

車間距離を空けるのは普段から心掛けたいことですが、一番の対処法です。これに関しては、危険運転の対応の時はより注意しないといけません。というのも、普段の運転では「車体の接触を避けるため」に車間距離を空けていると思います。

ですが、危険運転対策としては「自らの車体の存在を認知されないようにするため」に車間距離を空けることが必要になります。これは、危険運転の車は一般的なドライバーの想像を超える危険行動を取ることが十分に予期されるからです。特にあおり運転などの場合はターゲットを決めて煽ってくる訳ですから、ターゲット外に避難するということはとても有効なことだといえます。

ルール通りの適切な運転を心がける

上記、車間距離を空けるとも被ってしまうように思いますが、今一度自身の運転を顧みるということがとても重要ということです。
危険運転に巻き込まれる際の上記にも挙げた所謂「ターゲット」になる人の多くに適正なスピードで運転をしていなかったことが挙げられます。

一般道路にて過剰なスピードで追い越しをかける行為、高速道路の追い越し車線にて遅い速度で運転を継続したまま走行車線に戻らないなど…。本人は普通だと思っている行為が危険運転の呼び水になっているということが多くあります。

また、方向指示器にしても同じです。とある地域では、人気が少なかったら方向指示器を点滅させない風潮があるそうですが…急に指示器を出さずに方向転換することは自身が危険運転の対象そのものになってしまい突発的な事故を生みます。危険運転をさせないためには自らが危険運転をしないことが重要なのです。

高齢者ドライバーの危険運転に関しての対処法

以上の三点が主に危険運転全般の対処法として挙げられますが、これはすべて高齢者ドライバーの危険運転に関しても対応が可能です。
まず、「危険運転の予兆」に関して、こちらは高齢者ドライバーには基本的に高齢者マークのステッカーが貼られていることが前提としてありますのですぐに高齢者かどうかは察知することが可能です。

次に「車間距離を空ける」ということですが、当然のごとく高齢者の危険運転にも有効です。高齢者の運転の特徴として挙げられるのが、「急ブレーキ・急発進、過剰な安全運転(制限速度以下)、方向指示器を出さない」といったものです。いずれも身体能力・判断能力の低下によるものですが、「車体の存在を認知されない程度の距離」に退避していれば容易に対処することが可能です。

最後に「ルール通りの運転」ですが、こちらは単純です。速度超過の車に対して、高齢者は咄嗟に対応できる判断力を有していません。そのため、危険運転が危険運転を呼ぶという事態にすぐさま陥りやすいのです。

これらの対処法はどれも「ターゲット」にならないことを前提としたものです。高齢者の危険運転について、本人は故意では無くとも考えられない行動を伴い、他車をターゲットへと誘う行動性を有しています。注意深く用心した運転を心がける必要があるでしょう。しかしながら、気を付けていても危険は押し寄せてきます。そのような時には文明の利器に頼る外ないのです。

ドライブレコーダーの有効活用

そこで、ドライブレコーダーの有効活用こそが重要になってきます。
ドライブレコーダーを設置していない人の共通認識として多いのが、「交通事故前後の状況の映像・音声を記録するもの」としての装置であり、その機能のみであるといったものです。それは大きな誤解です。昨今のドライブレコーダーには記録する機能のみではなく、安全運転を支援する機能が備わっているのです。

具体的に言うと、ドライブレコーダーの映像録画機能から現在の状況を認識し、速度超過の場合や車線をはみ出している場合などに警告音を鳴らすなどの機能が備わっており、さらに録画のON/OFFはエンジン始動と連動して行うことができる仕様になっています。

認知・判断機能の衰えてきた高齢者をシステムにてサポートしてあげるのは一つの手段としてとても有効でしょう。また、録画機能で自身の運転を直に見せてあげるのも良いかもしれません。危険運転をしていても自覚が無い高齢者の方が大半なので、録画映像を見てもらうことで運転を辞める決心の一助にも役立つことができると思います。

その他、言わずもがなではありますが…危険運転への対策の側からしてもドライブレコーダーは有用です。危険運転の責任・瑕疵が相手側にあるというのを証拠づける意味合いでも必ず導入しておきたいところではあります。ドライブレコーダーの種類によっては、駐車中でも作動するものがあります。このように、当て逃げを防止するための録画機能もありますので高齢ドライバーだけでなく一般ドライバーの方もドライブレコーダーの導入は検討してみても良いかもしれません。

まとめ

令和の時代、新型コロナウイルスの到来によって公共交通機関の需要減に対して、ソーシャルディスタンスを確保できる自家用車の需要は増加しています。
また、一方で道路交通法改正により煽り運転が処罰化されるなど、昨今の危険運転は特に問題視されています。

高齢者に限ることでは無いですが、ドライバーの運転マナーがより重要視される世の中である以上、自分たちが常に当事者意識を持って運転に取り組んでいくことが重要になってきています。
各個人の準備と危機意識が危険運転の減少へと繋がっていくのです。あなたも明日から安全運転のために準備していきませんか?

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